三度の台風を記録する | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2019/10/29記 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
先月上旬に甚大な被害を発生させた台風15号だけでも数十年に一度という規模に感じていたが、その後に台風19号及び21号に関する被害が続けて訪れ、千葉県では前の災害対策が終わらない内に次の被害が生じるという状況に置かれている(写真は小櫃川からの流竹木で覆われてしまった久津間海岸)。 最初の15号は内房を中心とした被害であったことに対して、今回の台風21号に起因する豪雨では茂原や千葉というエリアに甚大な被害を発生させている。15号では幸いなことに直接の死者は出なかったが、その後の停電による熱中症での死亡やシート張り作業中の転落死などが相次いだ。今回の21号では現在の所、県内で9名の死者が確認されている。全国的な被害となった19号では今日現在の情報で13の都県で91名が亡くなり10名が行方不明になっている。 時代が令和に変わり、立て続けに訪れた台風による甚大な被害は後世でも語り継がれることになろう。その時に振り返られるように木更津市でのデータを収集しておこうと考えて今回の記載を開始する。出展はいつものように気象庁のアメダスデータである。 整理の方法として、降雨の連続性を重視した。つまり時間降水雨量[単位:mm]が0から0に戻るまでのデータを抽出し、その間の気温[単位:℃]と風速[単位:m/sec]と風向をまとめる事にした。 まず、最大瞬間風速49.0[m/sec]を記録し、長期間の停電を生じさせた台風15号のデータである。 |
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9月8日の21時から翌日9時までの13時間で145.5[mm]の降水量を記録しているが、降雨による被害は少なく、風で住宅の瓦が飛ばされビニールハウスが倒壊し電柱や電線に多大な被害を発生させた。午前3時と4時の間で台風の目が通過したことで風向が変わりながらも強風が吹き続けていたことが解る。 次に超巨大な台風19号である。 |
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台風が巨大だったこともあり、12日2時に降り始めた雨が止んだのは24時であった。23時間の累計雨量は166.5[mm]であり、木更津においては前回の台風15号と余り変わらない値であった。大雨の中心は関東では箱根から秩父にかけての山沿いで、秩父の西側になる千曲川上流に降った雨が長野で氾濫し、降水量の小さかった福島県本宮市でも氾濫被害が出るなど、河川被害が特徴的な台風となった。また、台風が通過した後に強い風が吹いていたことも解る。この風で台風15号の対策として施行したブルーシートの多くが飛ばされる事になった。 そして、今回の台風21号に起因する豪雨である。 |
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25日の5時から17時までの13時間雨量は156.5[mm]で、アメダスの設置されている請西では台風19号による降雨より少なかった。それでも3本の台風による雨量の合計は468.5[mm]で、木更津市の平均年間降水量の1622[mm]に対し28.9%が降った計算となるから、如何に凄かったのかが解る。 上記の3本の台風の降水量を降り始めからグラフに重ねた物が下図である。 |
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台風15号は風だけでなく、雨も瞬間的には強かったことが解るが、通過した後は急速に減少したので被害が少なくなった。逆に今回の21号では、連続して強い雨が降り続けているので、浸透や貯留による軽減が出来なくなった事が理解できる。それでも災害対応の目安といわれる時間降水量50[mm]まで達していないのに、各所で道路が冠水している状況を目撃した。台風21号の降雨が後2時間続いていたらと考えるとゾッとしてしまう。 台風21号に関与した豪雨では、市内でも富来田地区で膨大な降雨があった模様である。山を挟んで東側になる市原市牛久のアメダスデータは下表に示すように4時から16時までの13時間で285.0[mm]に達しているので同程度の雨が有った事だろう。昨日、君津市の鴇田議長が、被害の大きかった地区と被害の少ない地区で温度差が出来ていると言われていたが、木更津でも同じ状態であり、被災者に寄り添いが足りない面を反省したい。 |
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この様に山の方に豪雨が降った事で、亀山ダムの緊急放流も検討されたようだ。25日は午後3時に満潮となるので、その時点での小櫃川の状況を小櫃堰で撮影した物が下の写真である。 では、亀山ダムが放流を開始した場合、いつ頃流量に変化が出るのかは知られていない。そのため、学校現場からは授業中に緊急放流があった場合は児童生徒を帰宅させるべきか悩むという話しも聞こえてくるし、避難行動は二階に行くべきか避難所まで行くべきか判断できないという相談も受ける。 県に問い合わせたところ、亀山ダムから水位計のある袖ケ浦市阿部(久留里線横田駅南方)の富川橋まで約5時間を要し、そこから河口まではさらに2時間を必要とする。従って小櫃堰より下流に影響が出るのは緊急放流を開始してから6時間後となり、避難する時間は確保できるのであるが、ダムに起因しない洪水が発生している可能性もあるので、行動は慎重に行うべきである。 台風21号豪雨は日没前に上がってくれ、緊急放流も見送られたために堤防の決壊という事態を避けることが出来た。しかし近年の異常気象を考えると今年だけで終わるとは思えず、充分な対策が求められる。堤防が未整備の小櫃川で河川計画を立案して補強することは必要であるが、長い時間と膨大な予算が係るため千葉県の動きは遅い。ソフト対策の重要さを今回も感じながら、年内に四度目が来ないことを祈る日々である。 |