感染症拡大に思う
2020/03/23記
 春分の日から3連休を過ごしたが、その初日に木更津市内でも新型コロナウィルスの感染者が出たことを知らせるメールが届けられ、連日天気は良かったものの、何とも重たい空気となった。
 
 今回のコロナウィルスに対する情報は都道府県が一括して情報を把握しており、市には公表された情報しか届いていない。すなわち、患者の概要については
 ・40代の男性会社員であり
 ・都内で確認された患者に3月13日〜14日に濃厚接触者し
 ・現在は県内の医療機関に入院中で
 ・この患者の濃厚接触者への対応は保健所で実施中
 という程度の情報しか得ていない。
 
 この事に対し、数名の市民から居住地や入院先の病院名等を教えて欲しい旨の連絡があった。当然持ち合わせていないのでその旨を答えたが、情報の提供については悩ましい問題である。
 今回の木更津市の患者は市原以南の房総半島で最初の感染者だと思う。既に全国的に患者が広がる中で風評被害に繋がることはないと思うが、感染者の詳細な住所が明らかになってしまった場合、その近所に居住する人達への偏見が出る可能性も否定できないし、近隣に店舗があった場合は営業面への影響も大きいであろう。その意味で「木更津市」以上の細部が無いことに納得しているが、感染を防ぐため情報が欲しい市民の気持ちも理解できる。
 
 近年でも2002年に重症急性呼吸器症候群、いわゆるSARSが今回と同じように中華人民共和国の南部から拡散し、WHOの発表では37国で774人が死亡する事態になった(wikipediaによる)。その時も危機感が蔓延したが何とか鎮圧できた。
 しかし今回のウィルスは世界161ヶ国に拡大し28万人以上の感染者と1万人を越える死者が確認されている。SARSとは比較にならない拡大規模である。特にイタリアでは連日5千人を超える患者が新たに確認され、スペイン、フランス、ドイツ、アメリカ等でも患者数が1万人を越える中、国境を越えた人の往来に制限が掛けられて、経済に大きなダメージとなっている。
 
 日本はと言うと、厚生労働省の発表によると22日の12時現在で国内の感染者は患者数922人、無症状病原体保有者121人、陽性確定3人で感染者の合計は1,046人という事である。これ以外にクルーズ船の患者数672人を加えると1,718人となった。
 感染防止が上手くいている様であるが、愛知県では感染が明らかになって自宅待機を求められた50代の男性が飲食店を訪れて感染を広げた後に感染で死亡し、埼玉県ではクラスターの発生が危惧される中で大規模な室内イベントも開催されている。
 通勤電車や駅の雑踏だけでなく、会社の執務室だって感染が危惧される場所は日常的にあり、完璧に防止する事は不可能な状況の中、新たな感染者を少しでも減らし、医療現場の負荷を減らすと云う戦略は理解できる。しかし政府が言うように数日が山場ではなく、特効薬が発見され量産されるまでは何時でも急激な拡大は想定され山場は続くことになる。新年度を迎えても学校の抑制や人の往来制限を続けて行くべきなのか悩ましい問題である。
 
 若年層の重症か率が低く、一度回復した者が再度発症する事例は確認されているものの、基本的には回復した者には抗体が出来ていると考えるべきであろう。すると対処療法が発見されるまでは少しづつ感染し、回復していくしか手がないのだろうか。
 高齢者には死亡率の高さが目立ち、高齢化する我が国において社会の担い手の多くが60歳以上の方に成っている中で、若年者を経由して罹患した場合の影響は少ないだろう。医療機関が発達している欧米でも拡大を防げなかった様に、日本でも患者の増大を覚悟した危機管理が必要になっているのだろう。
 
 国際的な緊張感は身の回りの危機感の数倍に高まっている状況を報道から感じている。今回のウイルスが突然蔓延したように、世界中で人の往来が増加する中で地域の風土病だった未知の病気が何時でも蔓延する危険性は拭えない。
 1918年に猛威をふるったスペイン風邪は、世界人口が19億人程度であった頃にその27%にあたる約5億人が感染し、推定死者数は17百万〜1億人と人類史上最悪のパンデミックとなったようである(wikipediaによる)。それから102年が経過し医療と衛生手段が発達したことで感染防御力は高くなったが、人類がウイルスを克服するような力は今後も持ち得ないであろう。
 パンデミックは異常気象と別の脅威であり、それに対する自分の無力も実感しながら今回の記載をしている。