東京五輪が終わる
2021/08/08記
 危惧されていた感染拡大は前例のない規模で進むなか、選手の活躍で祝賀モードが高まり、都心から人流が減ることのない緊急事態宣言が続いている状況下で本日東京オリンピックの閉会式が行われる。
 木更津市で事前キャンプを張ったナイジェリア連邦共和国は銀メダルと銅メダルをそれぞれ1個づつ獲得したが、残念ながら金メダルには届かなかった。陸上競技で金メダルに成った場合は木更津市が祝電を打つべきだと言っていたが、その機会が無いままに東京オリンピックは終了する。
 
 ナイジェリアの人口は2億人を越え世界で7番目に多い国である。国内には人材が豊富にいると思うのだがスポーツを行う環境に恵まれず、成績は振るわない。江川の陸上競技場も彼らから見ると素晴らしく近代的な場所に写ったようである。
 これはナイジェリアだけでなく、下表に示すように人口の多い方から15位までの国のうち、インド・インドネシア・ナイジェリア・メキシコ・エチオピア・フィリピン・エジプトの7国はメダル総数が一桁に留まり、パキスタン・バングラデシュ・ベトナムの3国にはメダリストは誕生しなかった。
5年毎の人口(百万人) オリンピック成績
国名と順位 2010 2015 2020 2020-2010
1 中国 1,369 1,407 1,439 70 38 32 18 88
2 インド 1,234 1,310 1,380 146 1 2 4 7
3 アメリカ 309 321 331 22 39 41 33 113
4 インドネシア 242 258 274 32 1 1 3 5
5 パキスタン 179 199 221 42 0 0 0 0
6 ブラジル 196 204 213 17 7 6 8 21
7 ナイジェリア 159 181 206 47 0 1 1 2
8 バングラデシュ 148 156 165 17 0 0 0 0
9 ロシア 143 145 146 3 20 28 23 71
10 メキシコ 114 122 129 15 0 0 4 4
11 日本 128 127 126 -2 27 14 17 58
12 エチオピア 88 101 115 27 1 1 2 4
13 フィリピン 94 102 110 16 1 2 1 4
14 エジプト 83 90 102 19 1 1 4 6
15 ベトナム 88 93 97 9 0 0 0 0
 
 日本は自国開催という地の利を活かし、金メダルの獲得数27はアメリカと中国に次ぐ世界で3番目の多さで、過去最多の記録である。ではそもそも幾つの競技が有ったのかということが忘れそうなので調べてみると下表の通り33の競技で339種目の闘いが行われていたのである。
競技区分 種目 日本の金メダル 割合
アーチェリー 5 0.0%
陸上競技 48 0.0%
バトミントン 5 0.0%
野球・ソフトボール 2 2 100.0%
バスケット 4 0.0%
ボクシング 13 1 7.7%
カヌー 16 0.0%
自転車 22 0.0%
馬術 6 0.0%
フェンシング 12 1 8.3%
ホッケー 2 0.0%
サッカー 2 0.0%
ゴルフ 2 0.0%
体操 18 2 11.1%
ハンドボール 2 0.0%
柔道 15 9 60.0%
空手 8 1 12.5%
近代五種 2 0.0%
ボート 14 0.0%
スケボ 4 3 75.0%
ラグビー 2 0.0%
セーリング 10 0.0%
射撃 15 0.0%
クライミング 2 0.0%
サーフィン 2 0.0%
水泳 49 2 4.1%
卓球 5 1 20.0%
テコンドー 8 0.0%
テニス 5 0.0%
トライアスロン 3 0.0%
バレーボール 4 0.0%
ウエイトリティング 14 0.0%
レスリング 18 5 27.8%
合計 339 27 8.0%
 
 33の競技の中で日本が金を獲ったのは10競技であった。柔道やレスリングという「お家芸」でまとめて獲った結果が27という数に繋がっている。それでも全種目のうち8.0%で世界一が居るというのは素晴らしい結果である。
 
 日本が27の種目で金メダルを獲ったことは解るがメダリストは何人居るのかが解りにくい。特にソフトボールと野球という団体競技で多くのメダリストが出ていることもあり、整理してみたものが下表である。
No Day メダリスト 種目
1 7月24日 1 高藤直寿 柔道男子60kg級
2 7月25日 1 大橋悠依 競泳女子400m個人メドレー
3 7月25日 2 堀米雄斗 スケートボード男子ストリート
4 7月25日 2 阿部詩 柔道女子52kg級
5 7月25日 3 阿部一二三 柔道男子66kg級
6 7月26日 3 西矢椛 スケートボード女子ストリート
7 7月26日 4 大野将平 柔道男子73kg級
8 7月26日 4 伊藤美誠 卓球混合ダブルス
5 水谷隼
9 7月27日 6 永瀬貴規 柔道男子81kg級
10 7月27日 5 上野由岐子 ソフトボール
6 後藤希友
7 藤田倭
8 我妻悠香
9 清原奈侑
10 峰幸代
11 渥美万奈
12 市口侑果
13 川畑瞳
14 内藤実穂
15 山本優
16 原口のどか
17 森さやか
18 山崎早紀
19 山田恵里
11 7月28日 1 大橋悠依 競泳女子200m個人メドレー
12 7月28日 20 新井千鶴 柔道女子70kg級
13 7月28日 7 橋本大輝 体操男子個人総合
14 7月29日 21 浜田尚里 柔道女子78kg級
15 7月29日 8 ウルフアロン 柔道男子100kg級
16 7月30日 22 素根輝 柔道女子78kg超級
17 7月30日 9 加納虹輝 フェンシング男子団体エペ
10 山田優
11 宇山賢
12 見延和靖
18 8月3日 23 入江聖奈 ボクシング女子フェザー級
19 8月3日 7 橋本大輝 体操男子鉄棒
20 8月4日 24 四十住さくら スケートボード女子パーク
21 8月4日 25 川井友香子 レスリング女子62kg級
22 8月5日 26 川井梨紗子 レスリング女子57kg級
23 8月6日 13 喜友名諒 空手男子形
24 8月6日 27 向田真優 レスリング女子53kg級
25 8月7日 14 乙黒拓斗 レスリング男子65kg級
26 8月7日 29 須崎優衣 レスリング女子50kg級
27 8月7日 15 青柳晃洋 野球
16 岩崎優
17 森下暢仁
18 伊藤大海
19 山本由伸
20 田中将太
21 山崎康晃
22 栗林良吏
23 千賀滉大
24 大野雄大
25 平良海馬
26 梅野降太郎
27 甲斐拓也
28 山田哲人
29 源田壮亮
30 浅村栄斗
31 菊池涼介
32 坂本勇人
33 村上宗隆
34 近藤健介
35 柳田悠岐
36 栗原陵矢
37 吉田正尚
38 鈴木誠也
 
 野球が金メダルを獲る前までは女性が多かったが、最終的には男性38人(うち野球24人)、女性29人(うちソフト15人)の67人が金メダリストであった。競泳の大橋選手と体操の橋本選手は金メダル2個を獲得しているがメダリストとしてはそれぞれ1人である。
 27の種目のうち14種目が女子の競技で1種目は卓球の混合ダブルスである。女性蔑視の発言が出たりオリンピック委員会の理事に女性を増やしたりと対策しているが、成績を見る限り日本では女性の発言力が男性以上に大きくなっても良いのではと思う。
 
 もうすぐ閉会式が始まる。台風10号は午前中に通過したので最後まで雨が降らず有終の美を飾り、次のパラリンピックへ繋がるムードを残して欲しいと願っている。ただ雨が降らないと国立競技寿の近くの路上が大勢の人だかりとなり、また感染が広がってしまうかも知れないので、それもどうかと思う。
 個々のアスリートにそれぞれのドラマがあり、心躍らされる素晴らしい試合も多かった。その意味では素晴らしい大会であった。一方、無観客としたことや世界から閉ざされた中で開催したことで経済効果が極めて限定的になったばかりか、多分収支は目を覆いたくなる赤字になることが想定されている。このオリンピックについて後世の人はどのような評価を行うか今の段階では解らないが、少なくとも江川陸上競技場には小さなレガシーを残しておきたいと考えながら、近くて遠いオリンピックの終わりを感じていた。