市庁舎の業者決定
2021/12/19記
 12月定例会の最終日となった15日。全員協議会も終了した後の午後から開催された市庁舎整備特別委員会において、13日に開催された庁舎整備事業者選定審査委員会(北野幸樹委員長他委員6人)で事業者の提案の審査が行われ基準点を上回ったことが報告された。委員一人の持ち点が200点で7人の合計1,400点中60%の840点以上の評価がされれば良いという基準である。
 当初は朝日庁舎の周辺ではイオンタウン株式会社しか手が上がらなかったが、駅前庁舎の周辺は3業者が案を出し競争になる気配が見えていた。しかしながら賃料の上限や立体駐車場の代替機能の確保などで辞退が続き、最終的には株式会新昭和だけが残る状況になってしまった。従って双方とも1事業者の提案を評価するという形式になっていた。
 
 今後は協定締結に向けた協議が進められ、スケジュール上は来年3月に協定締結、同年12月に事業化が決定し債務負担行為を設定するという流れであるが、実質的には業者が決定されたと判断して良いだろう。平成7年4月の完成に向けて怒濤の展開が迫っているように私は感じているのである。
 それでは双方の提案の概要で私の思う事を記載したい。
 
1.朝日庁舎
 整備事業者 イオンタウン株式会社
 評価点 1,400点中1,064点
 賃借面積 約8,000u(約2,400坪)
 提案賃料 7,150円/月坪 (税込み:約2億592万円/年)
 
 庁舎棟は鉄骨造2階で様な状況の中で、現在は商業施設と同じ建築の中に有るものを独立棟として現在駐車場として使用している場所に整備し、駐車場が不足する分を鉄骨造2階の立体駐車場で補おうとしている。現在の商業ビルは市役所移転後に解体し、一部は駐車場に転用するものの、新たに鉄骨造2階の商業棟を建築するという計画である。総事業費を抑制するので有れば庁舎棟と商業棟を分けずに3〜4階の建築物を建て、立体駐車場を整備しない方が効率的に思われるが、木更津市としては庁舎の部分を借りるだけなので突っ込んだ話は聞くことは難しい。市役所移転後も現在の建築物を老朽化が深刻になるまでの間は使用するという考えで有れば理解できる計画である。
 建築する場所は調整池の機能を持たせている場所でもあるため地下部分に貯水ピットを設ける計画のようだ。どうせなら樹木への散水や水洗便所の水に雨水を利用して水道代を抑制するとともに環境への負荷を少なくすればよいのにと思う。

 
2.駅前庁舎
 整備事業者 株式会社新昭和
 評価点 1,400点中996点
 賃借面積 約4,000u(約1,200坪)
 提案賃料 7,700円/月坪 (税込み:約1億1088万円/年)
 
 木更津テラスと命名しようとしている庁舎棟は木更津駅の自由通路に直結しており、敷地の北側にはRC造15階の住宅棟、さらにその北側に鉄骨造4階の駐車場棟を予定している。庁舎棟は鉄骨造6階で4階から6階の部分に市役所を計画しており、それ以外に2階と3階には市民交流スペースを設定し、1階は商業店舗の入居を計画している。現在両総通運ビルで展開している市民交流センターは市民交流スペースに移転する計画で、庁舎の借り上げ以外にも別の費目で賃料が生じる見込みである。
 事業化にあたり駐車場棟と庁舎棟に「暮らし・賑わい再生事業」を適用して最大5億円(国2億5千万円・市2億5千万円)の補助金が入ることを想定しており、住宅棟では「優良建築物等整備事業」を適用して同様に最大5億円(国2億5千万円・市2億5千万円)の補助を得ようとしている。満額の助成には成らない見込みであるが両方の事業化が認められると市は最大5億円の補助を出すことになる。また、事業化の手順としては最初に駐車場棟を建築してから現在の駅前立体駐車場を解体し、その後に庁舎棟と住宅棟の建築に着手することになるので行程はタイトである。
 立体駐車場の敷地は木更津市が国庫補助を受けて購入した土地であるため、売却すると国庫に返還する必要が生じる。今回は権利の相殺が可能で有れば賃料が安価に成るかと思ったが、国庫補助を得ている土地ではそれも難しく、新昭和に貸与することになるが、それは評価額の0.3%(月額)という縛りを受けるだけでなく、国庫負担割合に乗じて賃料の一部を国に返還することになるようだ。時前の土地を持ちながら権利行使が出来にくい状況は厳しいと感じてしまう。
 開発区域に隣接してJRの所有する信号所がある。この移転補償が高額になると判断して残す計画としているがJR関係者によれば今はそれほど重要なものではなく、協力することもやぶさかではないようだ。他にも自衛隊引き込み線の廃止部分も有り、もっと線路側に拡幅できそうである。
 
3.今後の課題
 特別委員会で質問したが、前記の賃料には庁舎機能として使用するための間仕切りやOA床は含まれておらず、太陽光発電や非常電源の整備なども加えると最初に9億5千万円程度の初期投資が必要になるようだ。旧潮見庁舎から移転する際に必要となった商業ビルの改修費は駅前が1億3千万円、朝日が1億9千万円なので、それより遙かに高額となっている。建築費も上昇しているとはいえ増えすぎの感じがするので、今後は圧縮できるよう事業者との責任範囲の按分も含めた協議が必要だろう。
 また、自前の庁舎を建築した場合との損益分岐点が何年後に成ったのかという政策判断資料、今後の資金需要がどうなるのかを把握するための財政計画書、駅前と朝日の建築条件の差による工事期間の設定や連休を利用した庁舎移転計画を含んだ実施行程表等を整理しないと事業概要を掴みきれない。また現在23億円程度は溜まっている庁舎整備基金をどの様に活用し取り崩すかも検討する必要がある。まだまだ課題は多いが、取り敢えず現在までの状況を整理するため、業者決定の段階での記載とさせていただいた次第である。