資源高騰で考える
2022/04/14記
 ロシアのウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁や日本の金利政策による記録的な円安の進行で資源が高騰している。
 
 ウクライナ侵攻前に上程された木更津市の令和4年度予算でも石炭の高騰によりかずさクリーンシステムによるゴミ焼却処分費が前年度に比べ2億円増加する予定となっていたが、今回の事態を受けて更なる不足が予想され、補正予算が必要になりそうな状況であるようだ。
 国内でも北海道や九州で石炭が採掘されていたが、海外の露天掘りによる大規模な採掘とは単価競争に成らず、主用燃料が石油に変わったことで国内の炭坑は北海道釧路市の釧路コールマイン(元太平洋炭坑)だけになってしまっており、2020年における海外依存度は99.6%となっている(財務省貿易統計より)。
 同じく鉄鉱石の還元のために膨大な石炭由来のコークスを使用する鉄鋼業も大変だと思うが、ゴミの溶融処理のためにもコークスを使用している状況である。大きな違いは単位重量あたりの鉄鉱石から鉄を作る過程で必要なコークスは理論的に求められ、既に限界近くまで合理化できていることに対し、単位重量のゴミというものは捕らえ所がなく、本来で有れば多くのゴミは自ら燃焼できる程度のカロリーを内在していると考えられることである。
 高温で燃焼しないとダイオキシンが発生するので、そのためにコークスを投入することはやむを得ないと思うが、生ゴミの水分を蒸発させるために燃料を使い市税を投入するのは考え直すべきだろう。燃料高騰を市民に訴え、生ゴミの脱水・乾燥に協力してもらうことと、それ以上にコンポストや堆肥化によって発生を抑制する施策を講じるべきだと考える。
 更には、ゴミの燃焼エネルギーを高めるため、プラスチックゴミは売却単価が再分別コストより高くなると期待できるものを除き、一般ゴミと一緒に燃焼することでコークス使用量を抑えることが市の歳出削減につながるとともに石炭の掘削運搬及び加工処理の段階で発生するCO2抑制にも成り、地球環境に寄与するように感じるのだが、リサイクルの推進に逆行することなので抵抗は多いだろう。
 
 特にエネルギーについては値段が上がるだけでなく調達が困難に成っている。特に天然ガスや石炭の確保難は原子力発電がほぼ停止中の国内電力需要を賄えるかという停電危機により節電が推奨され、大震災後に夜のネオンが消されたような対応が再度行われるのではないかと心配である。
 エネルギー自給率が低い我が国では過去にも中東有事の際に激しいオイルショックに襲われ、省エネ技術が世界最高水準に成っているが、その事が逆に自主エネルギーの確保を送らせ、特に再生可能エネルギーについての研究は早かったものの、現在では欧州や中国に大きく遅れている状況である。
 国際的な収支だけでなく、木更津市という自治体を考えてもガソリンや灯油といった燃料の購入や電気代の支払いを通じて市民の富が市外に流出している。地域で再生可能エネルギーを通じた発電事業を行うことで富が地域内で循環するようになるし、地球温暖化ガスの排出抑制にも成る。多くの小規模な再生可能エネルギーは大規模発電によるものより効率が低く単価が高くなる傾向にあるが、先に述べた富の地域循環という考えとともにエネルギーの自給自足による危機管理という点でも多様な展開を進めるべきだと考えている。
 
 エネルギー以外でも穀倉地帯で発生している侵略戦争により小麦不足が心配され、パンやパスタの値段は上昇傾向にある。その一方でコロナによる外食需要の減少で生産者米価は極めて低い水準にある。お米は自給できる数少ない農作物であるが、過剰供給を抑制するため家畜に食べさせる飼料用米を生産するよう誘導している状況でもある。
 様々な機関が研究してることは知っているが、それでも米から米粉を作りパンや麺を作る技術を確立するとともに、ベトナムのフォーのように米で作った麺等を日常的に食べる文化の普及も進めるべきではないかと考えている。木更津市でも中郷の上望陀地区で米粉パンの製作が行われていたが、先の予算委員会では粉の生産は続いているがパンについては中止しているという答弁があったように記憶している。単に補助金を出して事業化を促すだけでなく、それを育てる取組も必要だったように考えたことを思い出す。
 
 資源高騰が続き大きな影響を受けることは、それが自分ではどうにも成らないからである。その影響を少なくするため、再生可能エネルギーや米粉といった代替品を手厚く用意しておくことと、ゴミのコンポスト化のように資源使用を減らす取組の両方が必要である。今回は3点を具体的に記載したが、他にも様々なことで智恵を使い、影響を低減することは可能だと思う。
 今回の危機は半世紀前のオイルショック後に省エネと生産性を高めたように、日本の社会構造を強靱化するきっかけに成って欲しい。その様なことを願いながら今回の記事を取りまとめた。