久留里線を考える
2022/07/28記
 本日14:32に木更津市議会事務局から届いた情報はJR東日本が2019年度の平均通過人員(1日1kmあたりの利用者数)が2千人未満の35路線、66区間について経営情報を14時に開示したものを企画部より情報提供されたものであった。
 まずは提供された資料のうち2020年収支の抜粋を記載する。
No 線名 区間 距離 収支 営業係数 通過人員
1 吾妻線 長野原草津口〜大前 13.3 -460 3,861 236
2 左沢線 寒河江〜左沢 9.0 -327 1,999 742
3 飯山線 豊野〜飯山 19.2 -758 1,037 1,444
4 飯山〜戸狩野沢温泉 8.3 -334 3,423 416
5 戸狩野沢温泉〜津南 30.4 -936 13,945 77
6 津南〜越後川口 38.8 -879 2,380 359
7 石巻線 小牛田〜女川 44.7 -1,263 1,108 953
8 羽越本線 新津〜新発田 26.0 -849 1,236 1,148
9 村上〜鶴岡 80.0 -5,255 2,466 697
10 酒田〜羽後本荘 62.0 -2,720 2,193 645
11 内房線 館山〜安房鴨川 33.5 -1,435 1,400 1,245
12 越後線 柏崎〜吉田 498.0 -1,219 1,735 618
13 奥羽本線 新庄〜湯沢 61.8 -1,699 4,192 212
14 湯沢〜大曲 36.6 -1,891 1,510 1,171
15 東能代〜大館 47.5 -3,290 2,250 1,012
16 大館〜弘前 44.2 -2,448 2,479 701
17 大糸線 信濃大町〜白馬 24.6 -945 2,057 511
18 白馬〜南小谷 10.4 -415 8,358 126
19 大船渡線 一ノ関〜気仙沼 62.0 -1,705 1,908 514
20 大湊線 野辺地〜大湊 58.4 -1,428 1,983 288
21 男鹿線 追分〜男鹿 26.4 -1,090 1,144 1,543
22 鹿島線 香取〜鹿島サッカースタジアム 17.4 -743 1,281 952
23 釜石線 花巻〜遠野 46.0 -1,334 1,566 575
24 遠野〜釜石 44.2 -1,364 2,836 328
25 烏山線 宝積寺〜烏山 20.4 -570 1,111 1,148
26 北上線 北上〜ほっとゆだ 35.2 -1,110 3,805 327
27 ほっとゆだ〜横手 25.9 -602 7,016 72
28 久留里線 木更津〜久留里 22.6 -802 1,367 1,023
29 久留里〜上総亀山 9.6 -274 17,074 62
30 気仙沼線 前谷地〜柳津 17.5 -241 3,625 189
31 小海線 小渕沢〜小海 48.3 -1,378 2,389 283
32 小海〜中込 17.2 -706 1,256 978
33 五能線 東能代〜能代 3.9 -173 1,900 761
34 能代〜深浦 63.0 -1,529 4,440 177
35 深浦〜五所川原 58.8 -1,311 2,001 383
36 五所川原〜川部 21.5 -707 1,011 1,202
37 上越線 水上〜越後湯沢 35.1 -1,812 2,579 687
38 水郡線 常陸大宮〜常陸大子 32.2 -1,141 2,349 608
39 常陸大子〜磐城塙 25.7 -482 8,043 109
40 磐城塙〜安積永盛 56.2 -1,002 1,137 796
41 外房線 勝浦〜安房鴨川 22.4 -1,283 1,368 1,017
42 只見線 会津若松〜会津坂下 21.6 -408 688 1,009
43 会津坂下〜会津川口 39.2 -721 4,199 141
44 只見〜小出 46.8 -867 7,845 82
45 中央本線 辰野〜塩尻 18.2 -574 3,457 362
46 津軽線 青森〜中小国 31.4 -2,140 3,249 604
47 中小国〜三厩 24.4 -577 7,694 107
48 八戸線 鮫〜久慈 53.1 -1,382 2,445 333
49 花輪線 好摩〜荒屋新町 37.6 -786 2,230 334
50 荒屋新町〜鹿角花輪 32.1 -711 14,499 60
51 鹿角花輪〜大館 37.2 -837 2,037 524
52 磐越西線 会津若松〜喜多方 16.6 -716 905 1,509
53 喜多方〜野沢 25.0 -808 2,671 429
54 野沢〜津川 30.8 -1,040 17,706 69
55 津川〜五泉 28.7 -1,265 4,200 408
56 磐越東線 いわき〜小野新町 40.1 -726 3,693 196
57 弥彦線 弥彦〜吉田 4.9 -129 2,107 395
58 山田線 盛岡〜上米内 9.9 -193 1,745 236
59 上米内〜宮古 92.2 -1,880 5,168 80
60 米坂線 米沢〜今泉 23.0 -613 1,910 641
61 今泉〜小国 35.5 -937 4,598 248
62 小国〜坂町 32.4 -535 5,076 121
63 陸羽西線 新庄〜余目 43.0 -703 2,344 163
64 陸羽東線 古川〜鳴子温泉 35.5 -1,145 1,620 666
65 鳴子温泉〜最上 20.7 -489 22,149 41
66 最上〜新庄 28.5 -622 3,231 289
 上表で距離の単位は[km]、収支の単位は[百万円]である。営業係数とは100円稼ぐために必要とした費用で、65番目の陸羽東線の鳴子温泉〜最上の区間では100円を稼ぐために2万2149円を必要としていることになる。
 
 上表は発表の通りのNoであるが、内房線が11番目であることに対して外房線が41番目に成るなど、何の順序で並べたのか私には理解できない。また、35路線のうち18路線は区間の区分をしていないが17路線は分割している。そのため発表された延長も五能線の東能代から能代までの1駅区間3.9kmから山田線の上米内から宮古までの92.2kmまで大きなばらつきがある。
 左の写真はこの日の午前中に上総亀山で写した終点側の風景であるが、久留里線も分割しなければ延長32.2km、通過人員736人で10億76百万円の赤字となっている路線として発表することも可能であったと思う。久留里で分割した意図を深読みさせる。
 
 JR東日本の意図のように66の区間に分けたまま通過人員の少ない10路線を整理すると下表の通りである。
No 線名 区間 距離 収支 営業係数 通過人員
1 陸羽東線 鳴子温泉〜最上 20.7 -489 22,149 41
2 花輪線 荒屋新町〜鹿角花輪 32.1 -711 14,499 60
3 久留里線 久留里〜上総亀山 9.6 -274 17,074 62
4 磐越西線 野沢〜津川 30.8 -1,040 17,706 69
5 北上線 ほっとゆだ〜横手 25.9 -602 7,016 72
6 飯山線 戸狩野沢温泉〜津南 30.4 -936 13,945 77
7 山田線 上米内〜宮古 92.2 -1,880 5,168 80
8 只見線 只見〜小出 46.8 -867 7,845 82
9 津軽線 中小国〜三厩 24.4 -577 7,694 107
10 水郡線 常陸大子〜磐城塙 25.7 -482 8,043 109
 
 同様に営業係数の悪い10路線を整理すると下表の通りである。
No 線名 区間 距離 収支 営業係数 通過人員
1 陸羽東線 鳴子温泉〜最上 20.7 -489 22,149 41
2 磐越西線 野沢〜津川 30.8 -1,040 17,706 69
3 久留里線 久留里〜上総亀山 9.6 -274 17,074 62
4 花輪線 荒屋新町〜鹿角花輪 32.1 -711 14,499 60
5 飯山線 戸狩野沢温泉〜津南 30.4 -936 13,945 77
6 大糸線 白馬〜南小谷 10.4 -415 8,358 126
7 水郡線 常陸大子〜磐城塙 25.7 -482 8,043 109
8 只見線 只見〜小出 46.8 -867 7,845 82
9 津軽線 中小国〜三厩 24.4 -577 7,694 107
10 北上線 ほっとゆだ〜横手 25.9 -602 7,016 72
 
 山田線の上米内から宮古は輸送人員が少ないが、それより多い大糸線の白馬から南小谷の区間の方が営業係数が高いのは北アルプスの山間で保線費用が高くなるためなのかと想像されるが、基本的には通過人員の少ない10路線中9路線の営業係数は低く、特に我が久留里線の久留里以南は双方とも3位に入っている。同様に双方とも9位である津軽線の中小国以北と同様に盲腸線の末端で切り捨てやすいと考えられているので有れば心外である。
 
 視点を変えて収支を距離で除して、1km当たりの収支(赤字額)を66の区間で計算した【収支/km】のワースト10と久留里線の両区間の順位は次のようになった。
No 線名 区間 距離 収支 営業係数 収支/km
1 奥羽本線 東能代〜大館 47.5 -3,290 2,250 -69.3
2 津軽線 青森〜中小国 31.4 -2,140 3,249 -68.2
3 羽越本線 村上〜鶴岡 80.0 -5,255 2,466 -65.7
4 外房線 勝浦〜安房鴨川 22.4 -1,283 1,368 -57.3
5 奥羽本線 大館〜弘前 44.2 -2,448 2,479 -55.4
6 奥羽本線 湯沢〜大曲 36.6 -1,891 1,510 -51.7
7 上越線 水上〜越後湯沢 35.1 -1,812 2,579 -51.6
8 五能線 東能代〜能代 3.9 -173 1,900 -44.4
9 磐越西線 津川〜五泉 28.7 -1,265 4,200 -44.1
10 羽越本線 酒田〜羽後本荘 62.0 -2,720 2,193 -43.9
21 久留里線 木更津〜久留里 22.6 -802 1,367 -35.5
34 久留里線 久留里〜上総亀山 9.6 -274 17,074 -28.5
 除雪経費の掛かる東北日本海岸が多いのは理解できるが外房線が4位に入ることは想定外であった。それ以上に久留里以南の単位距離当たり収支は久留里以北より少なく、久留里以南の収入は少ないもののコストを掛けていないことが解る。
 
 同様に収支を通過人員で除して、1人当たりの収支(赤字額)を66の区間で計算した【収支/人】のワースト10と久留里線の両区間の順位は次のようになった。
No 線名 区間 収支 営業係数 通過人員 収支/人
1 山田線 上米内〜宮古 -1,880 5,168 80 -23.5
2 磐越西線 野沢〜津川 -1,040 17,706 69 -15.1
3 飯山線 戸狩野沢温泉〜津南 -936 13,945 77 -12.2
4 陸羽東線 鳴子温泉〜最上 -489 22,149 41 -11.9
5 花輪線 荒屋新町〜鹿角花輪 -711 14,499 60 -11.9
6 只見線 只見〜小出 -867 7,845 82 -10.6
7 五能線 能代〜深浦 -1,529 4,440 177 -8.6
8 北上線 ほっとゆだ〜横手 -602 7,016 72 -8.4
9 奥羽本線 新庄〜湯沢 -1,699 4,192 212 -8.0
10 羽越本線 村上〜鶴岡 -5,255 2,466 697 -7.5
17 久留里線 久留里〜上総亀山 -274 17,074 62 -4.4
54 久留里線 木更津〜久留里 -802 1,367 1,023 -0.8
 山田線の上米内から宮古では通過人員1人あたり23.5百万円の赤字を出しているが久留里線の久留里以南ではその1/5以下で収まっていることも解る。
 
 しかしながら軌道交通は定期的な大量輸送に優れたシステムである代わりに少数の輸送では保線費用の負担がないバス路線の方が優位であることは間違えない。道路改良が進んだ結果、バスの方が速達性が向上することも考えられる。久留里以南の人口が減少しており訪問者も自家用車を利用する傾向が続く中での維持が難しいことも理解している。
 
 三市を通過する久留里線は沿線自治体で活性化協議会を設けて利用促進を促している。久留里以南は全て君津市であるが亀山までの路線を本気で維持したいので有れば、亀山地区の人口維持のために小中学校を復活させ、都心からの移住を前提に住宅を準備して保育環境を整えるなど、過疎地の自治体が身を切る思いで進めている対策を全力で行うことが必要ではないだろうか。
 
 亀山駅の「きっぷ運賃表」には総武線の新小岩や京葉線の葛西臨海公園が記載されていた。100km以内の自動販売機で買える範囲に東京都が含まれている駅が廃止されるようになったら残念なだけでなく他の手も有っただろうと後悔しそうである。
 具体的に久留里線をどうするかという話は聞こえてこないが、今回のJR東日本の発表を受けて様々なことを考えている。