防災の日に考える
2022/09/01記
 1923年9月1日は神奈川県西部の相模トラフを震源とするマグニチュード7.9の関東大震災が発生した日である。それから99年が経過して、当時を鮮明に記憶している方はごく少数に成っている事だろう。それでもその大災害を忘れず、後年に経験を伝えようと考え、9月1日は防災の日に指定された。千葉市では大規模な防災訓練が行われているようだ。
 
 アクアラインの橋梁舗装工事現場の車で第一報を聞いた阪神・淡路大震災からは既に27年半が経ち、30歳未満の世代には教科書で学ぶ出来事に成っているようだ。予算審査の最中に遭遇した東日本大震災からも11年が経過し、中学生以下の世代には何が起きていたか実感を伴うものは殆ど居ないだろう。
 一昨年の房総台風災害はまだ人々の記憶に残っているだろうが、63年前に死者・行方不明者5,098名という台風としては記録的な被害となった伊勢湾台風は私の生まれる5年前なので、映像と資料で知る「歴史」になっている。
 多くの災害は歴史になって行くが、何が原因で災害が起き、英知を集結して何処まで防げるかを考え続けることが犠牲になった多くの人々に報いることにつながるだろう。
 
 世界に目を広げるとパキスタンでは豪雨による洪水で33百万人以上が被災し、パキスタン政府は国土の3分の1が水没したと発表している。日本の2倍の面積を要する国土に2億人以上の国民が居住する状況で国土の3分の1とは大げさだと思ったが、衛星写真からは幅百kmに及ぶ湖が誕生しているという情報もあり、甚大な被害が生じていることは間違えない。
 カイバル峠を越えた隣国アフガニスタンでも広い範囲で洪水が発生し多くの被害が生じて食料不足の危機が発生しているようだ。ただでさえタリバン政権の樹立によって国際社会からの援助が止まり深刻な経済危機にある状況なので、災害による治安の悪化が戦乱に繋がらないように国際社会は支えなければならないだろう。
 中国では揚子江(長江)で深刻な旱魃が生じ水力発電が止まることによる電力不足などの問題が生じていたようだが、一転して豪雨被害が発生し、11万9千人が避難しているようだ。長江流域には4億5千万人の人口があり、農業生産も中国の3分の1を占めるようだが、猛暑による高温と雨不足でダメージを受け、その次は洪水被害である。パキスタンでも農作物の被害は深刻であるから今年の秋は世界的な食糧不足に襲われる危険性が高いだろう。
 異常気象に起因する災害で生じる食糧危機の前にロシアのウクライナ侵攻に伴う人為的な食糧危機が重なり、アフリカやアジアの国々では生産されても高額で輸出されることによる食料が手に入らない貧しい人々が餓えて自暴自棄になり、政情不安を生じさせるという不安定の連鎖が心配である。
 
 東日本大震災でプレート境界が大きくずれた範囲の両側になる北の十勝沖と南の房総沖は歪みが溜まった状況のままである。東海・東南海・南海と続くプレート境界に与えた影響も大きいので応力の開放が遠くない将来には来るだろう。3枚のプレート結合部に聳える富士山が噴火しても不思議ではないが、今の所平穏を保っている。この大地の平穏は何時まで続くことだろう。
 火山の大噴火は大気を塵が覆うことによって日照不足や寒冷化を招くことになる。1783年に生じた浅間山の大噴火は現在の北軽井沢といわれる地域にあった鎌原村等を壊滅させただけでなく、火山性の塵による天候不順が生じて国内では天明の大飢饉を生じさせ、欧州でも食糧不足に不満を抱いた国民が大地主である国王を廃しようと1789年にフランス革命を始めてしまった。
 現在は地球温暖化の被害が顕著であるが大規模噴火は数年間に渡って寒冷期を招き食糧不足を発生させるだろう。
 
 世界の人類は自らの生産活動に伴う化石燃料の消費で地球温暖化という災害の元を造ってしまった。しかしそれ以上に劇的に動く大地や火山といった自然現象に対して人類は無力なのである。
 現在、沖縄近海に猛烈な台風11号が居座り、台風から届けられる湿った風で遠く離れた北海道でも大雨の危険が生じている。99年前に災害が起きた日に、日本の何処かで災害は迫っているのである。防災の日にそのような事を考えていた。