たくみの里に行く
2024/01/09記
 新年になり能登半島で災害が生じたが、年末に予定していた家族旅行については妻の里帰りの予定もあるので計画通りに実行することにした。行き先は昨年、娘が雪国体験をした群馬県の民宿である。妻は娘がどんなところに泊まったのか見たかったし、娘は楽しかった想い出の宿に行きたかった。私は今年で44年の営業を終える旧新治村営(現在はみなかみ町営)赤沢スキー場に行きたいと思っていた。
 ところが年末の雪不足で赤沢スキー場の営業は未だに始まっておらず、私の目的が達することが出来なかったばかりではなく去年と同じように雪遊びをしたかった娘も勝手が違うようであるし、妻も昨年の映像と違いすぎる風景に戸惑っていた。
 赤沢だけでなく大穴スキー場なども営業が出来ない状況で、私達の家族が行った藤原スキー場も一部のリフトは運行を止めており、使えるゲレンデでも所々に土や草が見えていた。被災地では雪が深刻なようであるが群馬県北部は雪不足でスキー場は苦戦している状況である。
 
 そんな訳で水上に泊まりながらスキーは1日だけとして、翌日は近くで観光をして帰ることにした。高山村のロックハート城や川場村の川場田園プラザ(「じゃらん」のアンケート結果で満足度の高い道の駅で2022,2023年と全国一を連覇:因みに鋸南町の保田小学校は2023年で10位である)が頭に浮かんだが、旧新治村にある「たくみの里」を調べてみると興味深い展開なので行くことを決めたのは民宿の朝食を食べた後のことであった。
 
 たくみの里は国道17号線から離れた場所に位置する三国街道の須川宿の街並みや周辺の農村部までを全て「道の駅」として設定しているため面積は330haとなり、その中の20軒は体験工房として木工や竹細工などの体験が出来る施設となっているし、点在するカフェや食堂など飲食も20軒を越え、宿泊についてもホテルを含む4施設があり、自分の好きなものを選べる設定である。
 SNSでの発信を念頭にしているかのような藁アートが点在しており、地域をレンタサイクルで回ることを推奨するといった、休憩のために立ち寄るというより目的地として利用するような設計思想に感心したのである。
 
 
 
 私達は藁アートを車で見て回り、蕎麦打ち体験をして3時間ほど現地で過ごしてきた。全ての体験工房や飲食店が採算にあっているのかという疑問はあるものの、年間50万人が訪れる観光地となっている。
 中心施設である豊楽館は駐車場やトイレを併設した「道の駅」的な場所ではあるが規模は小さく「総合案内所」としての機能を優先して地域に点在するそれぞれの施設へ誘導することを目指しているようであった。
 
 木更津市の「うまくたの里」の集客力はコロナの自粛が続いていたときでさえ年間百万人を越えるように「たくみの里」を上回っているものの、周辺への誘致という機能は弱い。レンタサイクルを扱っていたが利用者は極めて少なかったと記憶している。
 これは「うまくたの里」が悪いというより周辺の施設を育てて整備するという設計が成されていないためで、全国の大多数の道の駅が同様であると私は思う。高速道路のパーキングエリアのようにドライブの途中で立ち寄って食事や買い物を済ませるという目的で立ち寄ると簡単に物事を済ませることが出来るため「うまくたの里」の方が使い勝手は良いし、店舗内に多くの商品が並んでいる姿は利用者にはとても楽しいものと感じる。
 
 しかしながら多くの人の協力を得て訪れた人たちと同じ時間を過ごし想い出に残すという意味では「たくみの里」に分があると感じてきた。うまくたの里とエトワ木更津が必ずしも有機的に繋がっていないと感じるし、多くのブルーベリー園も個別に存在しているように感じられる。「たくみの里」でやっているような「藁アートスタンプラリー」という仕掛けも重要であるが、宿場町の一部として存在感を抑えているデザインも素晴らしいと思うのだ。
 
 今回は、この様な手法は素晴らしいと感じ、何か木更津に持って帰れることはないかなと感じてきたので備忘録的に記載している。もっと深い部分のアイデアが練られたらまた整理したい。