休耕田対策を思う
2024/04/10記
 
 上の写真は木更津飛行場に近い江川農地の写真で、未舗装の農道の東側(写真では右側)は耕作されているが西側は休耕田が広がっていることが写真から理解することが出来るかと思う。
 実は私の所有する一反程度の水田も東側の一部に存在しているので心苦しいのである。西側の水田も所有者が直接耕作しているのではなく、岩根西地区で専業農家をしている方に委託して農地を守っている状況なのである。その方は私も良く知っている人なので東側もお願いしたいと言ったことがあるが「ぬかった」なのでと断られたことがある。多分、私の周辺の地権者も同様に耕作してくれる方を見つけられずに、なおかつ自身では耕作できない状況になって写真のように成ったものと想像できる。
 因みに「ぬかった」とは緩い(工学的に言えば含水比が高く支持力が弱い)粘土層の地盤の水田を示す言葉で漢字で書くと「泥田」である。乾燥させない限りトラクターなどの農機具が使えないため、人力でしか耕作できない作業効率の悪い水田である。もちろんその様な泥田を受託してくれる人は出てこない。では排水して乾燥させれば良いと思うだろうが、この海側には防衛省が進めた移転事業で国有地となった埋立地が立ちふさがり排水路が無くなっているのである。亡き父が市議をしている頃、浜田代議士の力をお借りして国有地を横断する排水路を通して状況は改善されたが、それでも乾燥させることが出来なかった場所である。
 
 2月25日に岩根西公民館で江川地区と久津間地区の地権者を対象にした「地域計画」の説明会では、土地所有が耕作者の効率的な作業を進めるよう地域としての農地管理計画の立案を目指すものである。前述のように耕作を受託して貰えない土地の存在が国や地方自治体には見えていない様である。その様な水田は木更津市内に多数存在しており、中には見知らぬ業者から畑に変えてあげようと言う誘いに乗ってしまい、耕作に適さない残土で高く盛られてしまって途方に暮れている所有者も少なくない。
 畑の需要は多いようだ。一反(1,000u)で10万円程度の売上にしか成らない水稲より、面積あたりで高い収益が望める換金性作物は野菜類に多いだけでなく、木更津市が都心に近いため観光農園の需要もある。しかし良好な山砂を購入してまで耕地を改良しようと考えるものは殆どいない。
 
 話は変わって中野畑沢線桜井工区である。今年度には工事区域から住宅地に土砂が流れでないための調整池の工事を行う予定であり、文化財調査も今年の秋から冬に掛けて終了する。そして令和7年度から本体の工事に取りかかるのであるが、桜井地区の山を切るため13万m3と言われる大量の残土が発生する。
 有効利用にも繋がるため久津間地区で江川運動場周辺整備として富士山の展望が楽しめる築山を設け、津波や高潮が発生したときには避難所としての機能を期待する計画がある。今年度は飛行場周辺まちづくり計画の中で詳細な計画を進めることになるが、それで全ての残土が処理できる訳ではないようだ。
 道路公団で上信越道の設計をしているときに学んだことは、土は出来る限り運ばない計画とすることの重要さである。ブルドーザーで削った隣を埋めるのであれは1m3の処理が百円程度であるが、ショベルカーで積んでダンプ運搬をすると数千円を超える。更にその土を有効活用せずに処分することになると1万円でも足りなくなるので土を無駄にしない計画が望まれるのだ。
 
 そこで考えたことは、地域計画をまとめる中で休耕田から畑に変更して集団で耕作者に委託する計画を立案した地区に対し、木更津市は工事で発生する土を使用して土地改良を行うという制度を設けることだ。土地所有者も耕作者も市役所も幸せになる良い制度であると思うのだ。
 市役所の建設部局は工事で発生する土の品質を確認することや完成した畑周辺の農道や水路を整備するコストが生じるものの、業者に処分を委託するより安くなるものと思う。
 農政部局はこの制度を利用して農地改良が出来ることを広報することで地域計画の立案を推進することが可能となり、耕地面積の増加は地域の産業力の向上につながると思う。
 環境部局は制度設計に当たってルールを作らねばならなくなるが枯れ草火災が心配される休耕田が良好な農地に変わることで地域の環境が良くなることを喜ぶべきだと思う。
 小櫃堰土地改良区などの水利組合は水田の減少による共益費の収入減が痛手になると思うが、一部の耕作不適地だけの対応に留めることで影響を抑えることが出来るだろう。
 
 中野畑沢線桜井工区が終わる頃には県が施行する千束台と請西東間の道路工事が始まることになり、そちらでも多くの土が出る予定である。上水道の浄水場でも沈砂池に毎年一定の砂が溜まるなど公共工事での発生土は今後も続くと思われる。普遍的な制度により三方良しが続けばと願いながら、思ったことを記載した。