県道事業を考える
2024/07/24記
 先の定例会で桜井工区の設計を見直すことで事業費を低減できることを提案し、特に耕作されていない水田を畑地に変えることについては農地所有者から多くの反応があった。私も推進するべきだと考えているが公平性や公共性、及び施策誘導の観点から制度設計が必要であると考えている。
 それは、土を処分することだけを目的とすれば何処でも埋め立ててしまえばよいのだが、その埋め立てされた土地が宅地として販売された場合、その土地所有者が本来は個人で行わねばならない盛り土工事を行政が実施したことになり利益を誘導したことと判断される可能性が高いことである。
 工事箇所に隣接し明らかに事業費及び温暖化ガスの排出量の削減効果が高い場合や安全性の確保が予見される場合は造成協力という選択肢は妥当だと思うが、ダンプで運搬する土を受け入れたい場所は多く、その選考過程の透明性を確保することも重要だと思う。何より埋め戻して畑地に変更して農業振興を進めるという大義名分を担保するため、造成工事完了後の10年以上は確実に営農することが可能な農業法人や営農団体が申請する地区とするべきだと考えている。
 そのため経済部で制度設計を進めて欲しいと依頼したのであるが、その後はどの様になったのか今の所報告はない。
 
 定例会では千束台と請西東を接続する県道木更津末吉線BPについても言及し、本題で有れば無駄な擁壁などの構造物が多すぎる設計を見直し総事業費を抑えることで工事に要する期間を短縮し、一刻も早い開通に繋げたいと提案したかったのであるが、県道として施工を県に依頼した結果、市からの意見は通りにくくなっている。更に木更津市でバブル期に行った設計を正しいものと固定し見直すことが誤った行為であるかのように考えているようだ。
 個人的には実際に施工した後で会計検査院から指摘される程度の無駄使いだと感じているのだが、森県議を通じて君津土木事務所に話しを持ち込んだところ、現時点では見直しは考えていないようである。
 周辺の都市化が進み土地買収面積を削減するために擁壁の設置が最適になる場合は都市部において存在するが、今回の施工区間では農地や山林で単価が安く工事費削減効果が明確なのであるが、県でも設計はコンサルに外注する状態が続いているため図面を見て問題に気付かない、技術力の低下した技師が多くなっているのだろう。
 擁壁とした場合の問題点は道路に面した土地の利用を拒絶することである。確実に交通量が見込める道路に面していながら利用が出来ないばかりでなく、夜間に道路から不法投棄されるような事態が続くと予見され、将来に禍根を残すことも見えないようだ。
 
 現地を遠望すると道路擁壁が計画されている場所の少し上流側は僅かな距離で道路より高くなっており、工事費を掛けて窪地を造るような事態になりそうである。下流側にしても調整池まで僅かな範囲で対策を講じれば擁壁は要らなくなる。
 具体的な金額を検討するための概算費は別シートに数値を記入すれば見えてくる。この場合の重要なことは10万m3も搬出する土を1万円/m3程度の費用を掛けて処分することから、隣接地にその1/10程度の費用での盛り土に変更出来ることである。上信越道の設計では土の処理が事業費削減の肝だと先輩に教わり続けた経験が私にはあるのだが、大型工事が減っている県や市では技術の伝承が難しくなっているのだろう。
 
 擁壁を削減して造成協力を得られたとしても工事に伴い搬出される土がゼロに成ることまで見込めない。その場合は当初に記載したように水田の畑地転換事業を進めれば良い。多くの公共工事で発生する、石や廃棄物が混じっていない「土砂」を通じて持続可能な農業政策を展開することは後継者不足に悩む農村の救世主になるはずだと考えているのである。
 
 市議会の分際で県にお願いしてやってもらう道路まで口を出すことは遠慮すべきなのだろうが、数千万円(数億円になるかも)の税金が無駄に使われることが勿体ないと思いながら今回の小言を記載させていただいた。