闇バイトを考える
2024/10/13記
 8月頃から連続して「匿名・流動型犯罪グループ」、いわゆる闇バイトによる犯罪集団が埼玉や神奈川で犯行を繰り返していたが、今月になって千葉県内での犯罪が多発し、横浜の事件では被害者が死亡するなど殺人事件にも発展している。これを受け18日には1都3県による合同捜査本部が設置された。報道が伝えている関連事件は下表の通りである。
 
No 発生日 都県 市区
1 8月27日 埼玉県 1 さいたま市
2 8月29日 千葉県 1 八千代市
4 8月31日 神奈川県 1 厚木市
3 8月31日 埼玉県 2 さいたま市
5 9月03日 神奈川県 2 鎌倉市
6 9月18日 埼玉県 3 さいたま市
7 9月26日 千葉県 2 船橋市
8 9月28日 東京都 1 練馬区
9 9月30日 東京都 2 国分寺市
10 10月01日 埼玉県 4 所沢市
11 10月09日 千葉県 3 船橋市
12 10月15日 神奈川県 3 横浜市
13 10月16日 千葉県 4 白井市
14  10月17日 千葉県 5 市川市
 
 最多の発生は千葉県で、現在は北総に集中しているがアクアラインを使って房総半島に及んでくる可能性も否定できず、警察には一刻も早い解決を望むばかりである。
 既に30人以上が逮捕されて、この様な「仕事」に応募すれば望まない犯罪者になり簡単に捨て駒にされることも知れ渡っていると思うのだ。それだけでなく、知らない人に苦痛を与え人生を破壊し、恨まれながら刑務所で刑期を過ごす惨めな日々になると報道を通じて広まっていると思うが、それでも次々と参加してくるものが絶えない現状が恐ろしくすらある。
 
 新聞も取らず、テレビも見ず、携帯やネットでは知りたい情報だけ得ていて闇バイトの恐怖を知らないという状況も考えられるが、多くの者は危険性を知りつつも自分は最後には上手く逃げられると過信して応募して、追い詰められて犯行に及んでしまうのだろうと私は推察する。
 闇ではない通常の世界でも多くの仕事で人手不足であり、バスの運転手や建設現場の職人、介護士など多くの業界が人材を求めている。その様な職種で汗を流してコツコツと働くことより危険でも一獲千金を狙ってしまう背景を考えないと、形を変えて同じような事件は続き、根本的な解決にならないのかもしれない。
 
 労働を尊び、拝金主義を卑しむという美徳が日本には有ったと思うが、バブルやIT長者の誕生で過去の価値観に成ってしまったように感じる。定年間際まで務めた企業が倒産して退職金も出なかったという事例やブラック企業で精神を病むまで追いつめられる事例が多く知れ回るようになると、働くことに対する疑問も生じるだろう。それでも働くことの美意識を育まねばと考えているのである。
 日本の先進国からの後退は高齢化の進展や経済政策の誤り、成功体験を捨てられず判断を誤る経営者など多くの問題が複合的に発生している。その一つの要因として工業化を支えた名もなき凄腕の職人たちの後継が育たずに引退して品質が保てない事もある様に感じている。
 
 まとまったお金が必要な事態に迫られたものには闇バイトに走る前に担保が無くても通常の金利でお金を借りれる制度を整えたり、闇の組織を炙り出すために警察組織には囮捜査を許可したり、秘匿性の高い通信方法を違法とするなど、様々な対策はあるだろうし、進めてほしいと思うが、違法性のあるものには目を向けない国民性を育てることも考えるべきだと思いながら、昨今のニュースを聞いているのである。