高校授業料を思う
2025/02/22記
 少数与党として政権を運営している自由民主党と公明党は翌年度予算の年度内成立に向け野党各党と協議を続け、日本維新の会との間で基本的な合意が成立したという報道があった。自公は国民民主党との間でも基礎控除額の変更などを協議しているが、仮に国民民主党との協議が不調になっても維新の協力で来年度予算は年度内に成立することが確実になり、地方自治体の議員としては予算の大幅な修正などが生じないことに安堵している。
 
 今回の維新との合意文書案では、25年度から高校生の就学支援金の所得制限を撤廃し、公立、私立を問わず年11万88百円を助成するうえで、26年度から私立高生への支給も所得制限を外し、現行の年最大39万6千円から45万7千円に引き上げることになった。他にも26年度から小学校の給食費無償化を実現し、中学校でも速やかに実現するとしている。
 また医療費を4兆円削減するという数値目標が議論されていたので個人的には財源不足を補うための社会保障改革なのかと思ったが、日本維新の会としては現役世代の社会保険料の負担を一人当たり6万円削減するための目的の様である。
 
 国民が健康になって医療費が単純に減少するか、意思に反した延命治療を減らすことで医療費を削減するのは賛成であるが、数値目標を掲げても具体的な医療改革が為されないと後者は難しい目標かと思う。しかし一方では多くの日本人が病院好きで、軽微な症状でも病院の世話に成って薬を貰うという状況も理解できる。総合病院が無くなった夕張市では市民が健康管理に気を付けざるを得なくなったために医療費が減少しても健康状況は改善されたとも聞く。病院にいつでもアクセスできる環境は国民の個人には素晴らしいことであるが、それが社会全体にとって本当に望ましいことなのか考えるべきなのかもしれない。
 
 さて、今回記載したのは高校の授業料の無償化である。義務教育ではないとはいえ大多数が高校に進学する状況を考えると、貧しさで進学をあきらめる一部のものの対策だけでなく子育て支援の施策としても無償化に進むことは評価したい。
 しかし私立高校と公立高校の格差を広げるような高校授業料の無償化は個人的には反対である。授業料以外にも諸経費が多くかかることが一般的な私立高校は総体的に所得の多い世帯の子が進学する傾向にあるだろう。今回の45万7千円は全国平均という説明であったが、平均以下の授業料で経営努力をしていた私立高校が質の向上を求めて値上げに進めば全国的に格差が広がる事態が想定される。結果として多くの公立校の質が相対的に下がると所得の少ない世帯の選べる学校に優秀な学校が少なくなる可能性が高いのである。
 確かに都市部を中心に特徴ある授業で国力を維持するような学生を育ててきてくれた私立高校の貢献を否定するつもりはない。公立高校だけを優遇して私立高校の経営を圧迫することも不本意であるが、やはり効率に比べ授業料に大きな格差がある特別な私立に進む世帯には一定の負担を求めても良いと思うのだ。
 
 それより個人的なには高校を優秀な成績で卒業した学生が大学の入学金や授業料の負担が出来ずに進学をあきらめるという事態を危惧しているのである。もちろん優秀で才覚もあり高卒でも事業が成功し世の中のために貢献している友人も沢山いるし、その様な生き方を否定するつもりはない。学業が優秀でも人づきあいが苦手で研究者等では能力を発揮できるようなものが進学できずに知識さえ得れば進めたステージに行けないことは国家としても損失であると思うのである。
 その様に貧しくとも向学心がある優秀な学生のために国家は日本の各地に国立大学を設けているのだと思っていたし、個人的にも今から43年前の昭和57年に群馬大学に10万円の入学金を払って入学した時には同級生の中に親からの仕送りが無くてもアルバイトで授業料(年額21万6千円)を払っているものもいた。
 文部科学省のHPによると入学料は平成14年に28万2千円、授業料は平成17年に年額53万58百円に値上げされ現在に至っている。因みに私より7年前の昭和50年(1975年)に国立大学に入ったものは入学料5万円、授業料は年額3万6千円、月額にすると僅か3千円だった。これは流石に安いと思うが入学料10万円、授業料年額24万円ぐらいに出来るように公費で負担して容易に入学できるようにするべきであるし、その一方で国立と公立の大学再編を行い、現在全学生に占める国立大学性が約16%、公立大が約6%と言われている状況を合計で10%程度まで減らして狭き門にして歳出を抑制しても良いと考えている。
 
 私が県立高校と国立大学を出ている視点での意見であり、都内の私立大学でも懸命に働いて卒業したものもいると思う。そこへの支援はと問われると都心に学生を集めることが国土の均衡に問題があると考え否定しても良いかと考える。要は何が言いたいかといえば今回の日本維新の会との合意である私立高校の授業料を実質無償化する資金の一部を国立大学に回すべきだと考えているということを書きたかったのである。自公維の合意のニュースを聞きながらそんなことを考えていた。