国際秩序の崩壊か | |
2025/03/06記 | |
米国大統領選挙でトランプ氏が施出されたときに危惧していた以上に一人の大統領によって国際秩序が大きく揺らいでいる。国境の壁を減らして自由貿易により世界に均等な富の配分を進めることや、主権国家は外国から力によって領土や国民を奪われないといった第二次大戦の反省から守り続けてきた秩序は既に存在しない世の中に成ってしまったかのようだ。 韓国が日本海を東海と呼ぶように世界に働きかける姿を滑稽だと思っていたがメキシコ湾をアメリカ湾と呼ばせたり、デンマークが主権を持つグリーンランドやパナマに移管した運河を米国管理にするよう圧力をかけたり、パレスチナの人々が平和に生きたいなら故郷を捨てなさいとかロシアによるウクライナ侵攻を停めたければ大統領に敬意を払い国内の地下資源を渡しなさいとか、言っている内容が過去の独裁者より悪質だと感じているのは私だけではないだろうと思っている。 過去の韓国大統領が行ったように日本に反省を求める程度であれば国際秩序には問題は生じないが、トランプ大統領は大統領の態度が気に入らないといわんばかりにウクライナへの武器供与を停止した。ロシアに対して反撃しないから好き勝手に国土を奪いなさいというメッセージを発したかのような行動には戦慄を覚える。 第二次世界大戦を主要国として戦い抜いた核保有国でもあるイギリスやフランスは欧州大陸国家による秩序を検討し始めたようだが、米国の軍需企業からの離別となれば米国にも大きなダメージになるはずだ。日本でもこの様な不安定な大統領を生む国家を信じ続けることのリスクを考えると欧州の国々と兵器の共同開発を進めることが得策に成ってくるだろう。 仮に日本に例えると、ロシアが北海道を急襲し道東や道北がロシアの占領下に成って戦線が硬直する中、日本製鉄をUSスチールの子会社に、トヨタをGMの子会社にしなければ日米安保を破棄してロシアと自力で対峙しなさいと言っているかのようで吐き気すら覚えてくる。確かに大量殺戮兵器が無かったイラクを敗戦に追い込み国有企業だった石油生産会社を米国系の会社にするなどハゲタカのような行動は今までも行っていたが、建前は自由と民主主義や公平と正義を前面に立てていた。ここまで品位が無い米国の姿を見ると憐れみすら覚えるし、有権者の劣化も感じる。 トランプ氏の文脈の先には世界中の武装化が待ち受けるしかなく、第二次大戦前の様相に向かうとすると絶望的な不毛な世の中である。軍需産業に人材も資金も集約すると民業が圧迫されて生活の質が低下し、弱者への保護は減り、国内外で意識の差が生じることで外国にルーツのある日本居住者は居づらい思いをすることになるだろう。多分、米国でのヒスパニックはそうなっているだろうし、米国経済を牽引しているアジア系住民だって選挙の時に想定していなかった不安を覚えているだろうと想像している。 1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)の信頼を大統領令で打ち消し25%の関税をかけられたカナダやメキシコの産品を買い支えることを中国に任せていたら問題になるので日本も前線に立つべきであるし、台湾との連携も強く打ち出すことが必要だと感じている。極端なことを言えばアメリカが存在しないことを前提で世界を回す戦略が必要になったと感じているのである。 コロナが去ってトランプが来た 世界に与える災害として並べることは失礼なことは承知であるが未知の世界に叩き込まれているという状況には大きな違いはない。阪神大震災や東日本大震災も経験してきたが自然災害や感染症といった人知の及ばない話でなく、民主主義で解決できる災害が進行していることに悲しみながら今回のボヤキを終えたい。 |