公共事業の談合事件について
2008/03/06記
 3月定例議会における個人質問の準備をしている頃、友人から『今回の談合事件について、対応がむずかしいと思いますが、HPで何もふれないのも変だと思います』というメールが届いた。
 関係会社は良く知るところなので、何とも書きにくい所であるが書かないと云うのもらしくないと云う彼の意見ももっともだと思い、思うところを記載することにした。
 
 事件は2月24日の毎日新聞東京朝刊で次のように報じられた。
 『千葉県君津地域整備センター(同県木更津市)発注工事の入札で、談合した疑いが強まったとして、県警捜査2課と木更津署は24日に建設会社8社の幹部10人前後を競売入札妨害(談合)容疑で事情聴取する方針を固めた。
 8社には、現職県議が取締役を務める会社が含まれている。調べでは、センターなどが、06年12月から07年2月にかけて発注した4事業(予定価格計3億3973万円)の指名競争入札で談合した疑いが持たれている。』
 そして「新興土建」と「興和建設」の営業担当役員が逮捕され、両社が県から6ヶ月の指名停止を受け、木更津市も8月27日までの6カ月間の指名停止処分としたものである。
 
 この新聞記事では『現職県議が取締役』となっているが、実際には株式の約3割弱を持つ筆頭株主という立場で、正しくない報道であるが訂正記事は出なかった。
 さらに指名停止直前に入札の行われた市の工事を落札していたが、道義的な立場から辞退を行うなど、身を正しているのであるが、それが人々の耳に届くことは少なく、悪いイメージだけ先行することも不公平である。
 その『現職県議』は、これを変革のチャンスと考えれば良い、と前向きであったのが、らしいと思うところであり、安心するところでもある。
 
 私は災害時の対応などを考えると地元に施工能力を保持するべきであると考えるし、それゆえ地元業者の育成は必要であると考えると同時に、入札制度については一般競争入札の拡大と低落札調査制度の導入を行うべきだと主張している。さらに平成23年度から実施される予定の電子入札制度を、出来れば前倒しで導入すべきと思っている。
 一般競争入札で地域案件のハードルを下げると資金力のある大手企業がダンピング受注して地域業者を駆逐し、その後に高値で受注する恐れもある。しかし、不透明な部分を排除して健全な業界にしないと世間からの批判が続き、その事で優秀な若者が建設業界に進まなくなることの方が将来的には心配なのである。
 事実、自分が大学に進んだ頃と比べ、現在は学部内での偏差値が低い学科になっている。それは悲しいことであるし、建設業界は本来、高度な数学力と応用力を必要とする場だと世間に認知して貰いたいものなのである。
 
 工事は安ければ良いという考えではなく、受注者が適切な価格で落札するべきであるし、それが積算額にたいして近いか低いかはその度毎に変わって当然なのである。
 昨今、落札額が予定価格の95%以上だと談合の可能性が高い、という事を良く聞くが、自ら公共団体で積算を多くやってきた立場で考えると、そもそも積算要領は割り切りの中で作られており、さらに仮設費用などは率計上としているため、手間の掛かる現場と儲かる現場が存在することになる。
 
 明らかに儲からない現場では落札額が予定額を上回り、入札が成立しない『不調』という状況が出てもおかしくない。バブルの頃には公共事業が民間より安かったので、よく不調を目撃した。その場合は最低価格を入れた業者に対し、役所の予定価格でやって貰えないかとネゴ(交渉)するのである。つまり役所の積算価格は絶対なのである。当然入札額はほぼ100%となる。
 さらに、不調となると参加者全体が落札意欲がないと見なし次回以降の入札に呼ばれないという対応をする役人が居たとも聞く。そのような事態を避けるため、業者間で調整して貧乏籤を引く会社を決めていた事も耳にした。これも談合であることは間違いないが、責めるには忍びない気がする。
 
 一方、近年のように仕事が少なく、職人や機械を遊ばせて居るぐらいなら本社の儲けなど無くても構わない、という業者が多くなると叩き合いという、ダンピング合戦になる事が多い。
 安値受注すると、納入業者への無理な値切りや安全経費の削減に走りやすく、悪質な業者では粗悪材料の使用や手抜き工事を行いやすい。これが問題で最低価格以下での失格制度を設けている自治体が本市を含め、多く有るのである。
 ただ、施工の合理化や手持ち資材の流用などで、適切に安価な施工が出来る業者まで、価格が低いと失格にするのはおかしいので、低価格調査制度を導入するべきと主張しているのである。
 
 ともあれ話は談合事件に戻す。
 法律違反という問題は当然だが、やる気のある業者が優秀な監督と職人を用意し、合理的で安全で安価な施工能力を得た場合は、しっかり価格競争を行って受注を広げて事業を拡大していき、強い企業が業界を牽引するというのが正しい姿だと思う立場で、談合状況を解消すべきと思う。
 胸を張って、俺は建設業者だ、と言える日が来るように・・・。