公共工事の入札不成立を聞き
2008/05/03記
 昨日配信された読売新聞のインターネットニュースによると、国土交通省が2007年度上半期に発注した公共工事の入札で、参加者がゼロだったり、予定価格を上回ったりして入札が不成立となったケースは800件を超え、14%に上ったとあった。
 
 記事を見ると、公共工事での談合からの決別宣言をした大手業者は、儲かるような大規模工事については容赦なく競争し合うものの、利幅が少ない中規模工事では予定価格を上回るような額で応札して不調に成ってるという事である。
 安値入札が続く現状では、過年度実勢価格を参考に出される基本単価が下落の一方となり、既に役所の積算では単価が低すぎる上に、最近の燃料や材料の高騰で利益が出ないような構造になっているのである。
 
 工事の発注は、工事完成の時期をイメージして、そこから工期を逆算して算出されるのが一般的である。従ってその入札が不調となって再入札になる場合は、@工事の完成が遅れるか、A工事費が上がっても工期を短くできるような設計に変更するか、B業者が短くなった工期で無理矢理仕事を終えるか、のいずれかの事態になる。見聞きする範囲ではBのパターンが多いようだ。それで現場にしわ寄せが行って労働環境が悪くなり、優秀な若者が業界を去っていくという悪循環に陥っているのである。
 
 私は前にも書いたように、積算は一つの目安に過ぎないから失格という最低価格を設けるべきではない、と主張している。しかし必要な費用すら払わないような低額発注には別の意味で危惧を抱くのである。予定価格を公表して一般競争入札を行った場合、割には合わないと思いながら受注する経営者がいて、それに合う単価で仕事をする利益の出ない下請け業者が存在し、その業者は何時までも自転車操業状態から抜け出せない、というので良いのだろうか。
 
 発注団体により設計変更の扱いが大きく異なる事は良く言われている事である。3月議会で学校耐震工事の設計変更事案が議会上程されたが、何名かの議員は変更増額に成ることを理解でき無かったようである。一つ一つがオーダーメイドな建設業で、基礎や補修はやってみなければ解らないというのが業界の一般的常識である。
 ただ、この議員と同様、自治体によっては、当所変更になる想定していなかった請負者が悪いと、追加変更を認め無いところも多いようだ。多くは変更手続きが面倒なだけだと思う。
 
 また、変更までの指示に要する時間が長く、その間の機械損料や待機させている労務の人件費が掛かることについては、これを変更で見る事は殆ど無い。何故なら変更指示を迅速に出せないのは多くは担当者の能力不足による物であり、変更とする根拠にはなり得ないからである。
 ちなみに、北海道庁ではこの様な待機ロスを無くすため、相談に対しては24時間以内に回答するか、時間が何時まで必要とされるかを示すことにした。時のアセスメントと言い、北海道庁は国に先駆けたアイディアが時々見え、感心する。
 
 公の発注機関に居るものは時間の金額的価値や、仕事に対する利益の概念が薄い。私自身も公団職員だったときには強く意識していなかったと思う。単独の事業の費用便益比について意識するのと同時に、請負という外注形態はどの様に有るべきかという意識も持ち合わせねば、と読売新聞の記事を見て思った。