アジアの台頭を考える
2008/11/17記
 洞爺湖サミットが終了してわずか4ヶ月が経過したばかりだというのに遙か昔のことに思われるほど世界金融が揺れている。日本もサブプライムの影響が少ないと言われているため通貨が強くなり、円高で輸出企業が苦労している。韓国のようにウォン安で不況の中で物価上昇に苦しむよりは楽だが、深刻な状況である。
 多くの企業が先行きに不安を感じ、新卒の内定を取り消したり、設備投資を控えたりしている。新工場の建設などは後回しにされがちで、一時は好調だった土地の引き合いも停滞しはじめた。現在交渉中の金田東地区への企業募集がどうなるか心配である。
 思えば、アクアラインの開通時には日本のバブルがはじけた不況の始まりであったし、金田の区画整理の動きが見えてきたときには世界のバブルがはじけるとは、時の運が無さ過ぎる。しかし、悲観していても始まらないので知恵を絞らねばならない。
 
 さて、この世界不況を乗り越えるためにG8に11の国を加え、欧州連合(EU)にも正式枠を与えたG20がアメリカで開催された。洞爺湖でも8国を増やして主要経済国会合(MEM)が開かれたが今回はさらにトルコ、サウジアラビア、アルゼンチンを加えた形で開催される運びになったのである。第9位のスペインなどの非参加国でもEU加盟国があるので、それを考慮すると下表のように世界の経済規模上位国の大多数の意見集約が行われたことになる。 
国(地域) 人口
(千人)
面積
(km2)
国内総生産
(100万米ドル)
備考
アメリカ合衆国 293,623 9,629,091 13,192,290 1 G20
日本 127,787 377,907 4,375,546 2 G20
ドイツ 82,501 357,022 2,888,699 3 G20:EU
中国 1,296,075 9,596,961 2,666,772 4 G20
イギリス 59,835 242,900 2,372,504 5 G20:EU
フランス 60,381 551,500 2,234,388 6 G20:EU
イタリア 58,175 301,318 1,848,001 7 G20:EU
カナダ 31,974 9,970,610 1,270,625 8 G20
スペイン 42,692 505,992 1,225,007 9 EU
ブラジル 181,586 8,514,877 1,067,803 10 G20
ロシア 143,821 17,098,242 984,927 11 G20
インド 1,085,600 3,287,263 903,226 12 G20
韓国 48,082 99,538 872,789 13 G20
メキシコ 105,350 1,958,201 829,618 14 G20
オーストラリア 20,111 7,741,220 778,601 15 G20
オランダ 16,282 41,528 663,929 16 EU
ベルギー 10,421 30,528 392,706 17 EU
トルコ 71,152 783,562 392,336 18 G20
スウェーデン 8,994 449,964 382,825 19 EU
スイス 7,390 41,284 374,583 20
インドネシア 217,077 1,904,569 364,459 21 G20
台湾 22,615 36,006 364,422 22
サウジアラビア 22,529 2,149,690 363,707 23 G20
ポーランド 38,180 312,685 335,675 24 EU
ノルウェー 4,592 385,155 333,924 25
オーストリア 8,175 83,858 321,730 26 EU
ギリシャ 11,062 131,957 307,856 27 EU
デンマーク 5,401 43,094 277,334 28 EU
南アフリカ 46,587 1,221,037 247,814 29 G20
イラン 67,477 1,648,195 242,146 30
アイルランド 4,044 70,273 218,090 31 EU
アルゼンチン 38,226 2,780,400 216,324 32 G20
フィンランド 5,228 338,145 209,678 33 EU
タイ 64,177 513,115 206,247 34
ポルトガル 10,502 91,982 191,777 35 EU
香港 6,883 1,099 189,537 36
ベネズエラ 26,127 912,050 180,358 37
マレーシア 25,581 329,847 148,941 38
パキスタン 150,468 796,095 146,888 39
チリ 16,093 756,096 145,841 40
チェコ 10,207 78,866 141,249 41 EU
イスラエル 6,809 22,145 140,294 42
ナイジェリア 88,992 923,768 132,737 43
シンガポール 4,240 683 132,155 44
コロンビア 45,295 1,138,914 130,928 45
ルーマニア 21,684 238,391 121,581 46 EU
フィリピン 82,664 300,000 116,931 47
アルジェリア 32,364 2,381,741 115,945 48
ハンガリー 10,107 93,032 111,990 49 EU
エジプト 71,223 1,001,449 110,075 50
全世界合計 6,389,000 136,127,000 49,427,521
 出展は前回と同様に総務省統計局の2006年の国内総生産(GDP)データを引用して作成した。
 これを見ながら、どうせならASEAN枠も加えれば34位のタイ、38位のマレーシア、44位のシンガポール、47位のフィリピンもカバーできるのに等と余分なことを思う。なお、EU加盟国は50位以下にルクセンブルグ、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア、キプロス、マルタ、ブルガリアの9国があり、ASEAN加盟国は50位以下にブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアの5国がある。
 
 G20がG8から大きく変わることは東アジアの影響力が大きくなることである。日本、中国、インド、韓国、オーストラリア(大洋州だが経済圏はアジア)、インドネシアの5国で世界人口の43.7%、経済規模の20.2%をカバーしている。台湾、香港、ASEAN諸国、バングラデシュ、パキスタン辺りまで拡大してみれば世界人口の約半分、経済規模の1/4を占める地域であることが解る。
 これらの国々の多くは構成人口も若く、教育投資も盛んで経済成長の途上に有る所である。政治的な安定度に不安はあるものの確実に次の時代には台頭してくる国家である。
 およそ百年前の日露戦争を持って日本が主要国となったように、今回の経済危機の対応がアジアと欧州の対等化に向かう分岐点であったかもしれない。
 
 そう考えると、本市への企業誘致はアジアの国々に目を向けるべきであるし、そのためには韓国語、中国語やヒンディー語はもちろん、タイ語、インドネシア語、マレー語などの対応も出来るような人材の登用も必要になってくるだろう。それらの国々が真に国力を付けてきた段階で、木更津は昔からお世話になっていた街だから、と言われることは悪くないだろう。
 少なくとも木更津紹介のHPで英語、中国語、韓国語ぐらい有っても良いだろう。G20の会議情報を聞きながらその様なことを考えていた。