総合評価方式を考える
2008/12/28記
 12月12日に舗装改修工事の制限付き一般競争入札(総合評価落札方式)の実施が公告された
 これは延長246m、予定価格 487万2千円(税込)の工事で、金額的に軽微な仕事であるが、入札参加資格確認申請書の提出時に、価格以外の評価を行うために必要な技術資料を受け付け、価格以外の条件と価格を総合的に評価して落札者を決定する総合評価落札方式を適用したものである。
 
 現在、国も「公共工事の品質確保の促進に関する法律」に基づき、ダンピング受注による手抜き工事の防止等を目的として、価格による競争だけではなく、業者の能力や実績などを加味して総合的に判断する事を押し進めている。
 その基本的な考え方には異存はないのであるが、運用に当たっては様々な障害が発生しているのも事実であり、私も過去の議会質問で「総合評価方式」を導入しないように主張してきた。
 今回の木更津市の取り組みは本格導入ではなく、あくまで制度の調査と言う説明であるが、他市町村の実績がある中でわざわざ調査でも無かろうと思う所でもある。
 
 さて、制度の上で何が問題と考えているか以下に整理する。
 
 まず、事務量の増大になる事が上げられる。今回は簡易型で行うそうだがそれでも入札参加には次の書類が必要となる。
 ア 入札参加資格確認申請書(総合評価落札方式)
 イ 施工実績調査票
 ウ 技術者経歴調査票
 エ 経営事項審査結果通知書の写
 オ 年間委任状の写(年間代理人を置いている場合)
 カ 価格以外の評価を行うために必要な資料(技術資料)
  @同種・類似工事の施工実績
  A配置予定技術者の施工経験
  B配置予定技術者の保有資格
  C主たる営業所の所在地
  D災害・除雪作業の実績
  E県産品の使用状況
 これらの書類を提出する業者も、それを審査する行政も事務量が増える事は明かであり、さらに業者にとっては入札出来なかった場合はこれらの作業が無駄になるという可能性もある。
 国交省発注の工事では入札参加者が1社だけになる事例が多く発生している。談合以前に入札前の調整が行われてしまい適正な競争が行われず、高額になる可能性があるのだ。
 特に今回のように5百万程度の安価な工事では手間が掛かるだけで設けも僅かだと敬遠されるだろう。市川市では250万円から行っているようだが県では5千万円以上の工事に限っている。
 また書類が多いことは入札までの時間が必要になるという事でもある。今回も1ヶ月を準備期間としておいてある。工事を年度内に行うと工事期間は2ヶ月だ。本来なら現場に掛ける時間にゆとりをあげたいところである。
 
 次に心配なのが、配点に人的関与の余地があることである。これは北海道開発局で行われた官製談合で指摘されたことでも有る。また、公務員に余分な圧力を掛けられる可能性も忘れては行けない。単純な金額入札に比べ透明性を確保することが難しくなることは否定できない。
 まして簡易型でない、技術提案型等を採用した場合は、例えば安全・環境・工期のどれを優先させるのか、等の担当者の主観が入る事は当然であり、絶対に正しい回答がない中では、かなりの説明責任を要求されることになるだろう。
 
 また、メリットとして実績の有る会社を評価する制度であるため、新規参入者に厳しい制度となり、競争が阻害されることも上げられる。地元の実績のある業者を大切にするので有れば、昔ながらの役所がメンバーを指定して入札する指名競争入札制度を取れば用が足りるので、そのあたりの兼ね合いが難しい。
 
 運用の中では計算方式が解り難いと、評価点が金額に見合うだけの問題か判断し難くなる事もある。例えば今回の運用では算定方法は除算方式としており、評価値は標準点に加算点を加えて技術評価点を求め、当該入札者の入札価格で除した値としている。
 得点としての評価でなく、金額としての評価にして、入札額に加減して価格を修正する方が解りやすいと思うところである。
 評価点は標準点を100点とし、加算点の最高点を20点としているため、今回の5百万円程度の工事では1点が5万円程度に評価される。例えば類似工事の実績が有ると4点が加算されるので実績のない会社に対し20万円程度の得となる。他にも工事成績、技術者の経験、災害・除雪作業の実績、県産品の使用実績なども加点されるので新参者と最大15点の差が付く事になる。実績のある優秀な業者のための差額が75万円程度であるから今回は気にならないが、1億円程度の工事で有れば相当する金額は20倍の3千万円である。この金額差が逆転された場合に、私は納税者に説明できるだろうか。
 
 なお、この工事は低入札価格調査対象工事として、約405万円以下で応札した場合は調査の対象となり、当該入札後における職員の事情聴取を受けることになる。これも手間が掛かる話であるが、前に書いたように今後も制度として運用してもらいたい。
 
 ともあれ、1月22日に行われる入札を楽しみに見守ろうと思う。