法改正を考える
2009/05/03記
 今日は憲法記念日である。今から120年前の1889年2月11日(建国記念日:当時は紀元節)に発布され、翌1890年11月29日の第1回帝国議会の開会で施行開始となったのが大日本帝国憲法である。形式上はその帝国憲法に基づく改正手続きを経て、1946年11月3日(文化の日:元は明治天皇誕生日)に発布され半年後となる1947年5月3日から施行されたのが現在の日本国憲法である。
 憲法学者の間では主権天皇制から主権在民に変わったことで、帝国憲法と連続する憲法では無く、全く別の憲法であるという説が有力なようだが、私にはその判断をするほどの理論体系を持ち合わせていない。仮に連続する物だとしても帝国憲法は施行後約56年間は一度も改正されることが無く、現憲法も今日まで62年間は改正されていないと言う、世界的にも息の長い憲法である。
 
 憲法改正というと第9条の戦力の保持が争点となり、それを避けるために他の改正の議論を進めるべき問題(環境権や情報公開と個人情報保護に関する問題、地方自治制度や教育制度等)まで封印されて、軽く還暦を超えてしまった訳である。さらに現在の世界的同時不況の状況では景気回復が優先され憲法議論が高まる気配はない。当面はこのまま続くと思われる。
 
 根幹の憲法が変わらなくとも運用上の法律は頻繁に制定や変更がなされ、憲法違反ではないかと言われながらも運用されている事は承知のことであろう。ちなみにネットで日本の法令数を調べてみると『総務省行政管理局が整備している平成20年12月5日現在の法令データ(平成20年12月5日までの官報掲載法令)によれば、憲法・法律の総数は1,788、政令・勅令は1,928、府令・省令は3,593なので、それらの合計では7,309になる』という記載を見つけた。社会の変化の速度を考えると5年に1度ぐらい見直さなければならないと考えると、毎年千件を越える法令を検討する事になり、仮に1割には改定の必要が認められた場合は年間百件以上が変更となるのである。これではどんな法律家でも全体を見通せる人は居ないだろう。
 
 では木更津市の場合はどうなのかと考え、インターネット上の例規集を見ると2009年5月3日現在では題名件数で765件の項目が示されている。黄金週間中の余裕時間が有るところで個人的に整理してみると次のようになった。
No 区分 題名件数 備考
1 国・県の告示 110
2 市の条例 207
3 市の規則 283 内、市長部局は224件
4 市の規程・訓令・告示 137 内、市長部局は45件
5 議決・宣言・制定等 23
6 その他 5 事務組合規約・公社定款等
合計 765
 議会としては主に207件の条例と23件の議決等について専決権を持つことになる。逆に規則や規程は議会の承認を得ずに変更とすることが出来るのである。事務の効率的な遂行のためには良いとは思うが中には『これは議会が決めるべきではないか』と思うような事項がないわけではない。
 ちなみに条例207件中90件が平成になってから制定された条例で、さらにその内の11件が私が議員になってから制定された条例である。
 
 ともあれ、平成20年度関連案件を審議した議会における条例の制定や一部改正に関する議案は私が数えたところ、追加案件や議員発議案件も含め、下表に示す通りであった。
条例制定 条例廃止 一部改正  合計 
3月議会 21 27
6月議会
9月議会
12月議会
合計 36 46
 全体で保有する条例が207に対して1年間に46件の制定や改正が有ったと言うことは5年に1度ぐらいの見直しがなされている様にも見えるが、多くは関連する法令が変更になった場合に条例で関連する文言(主として第何条第何項という数字)の変更が行われているだけであり、その条例が細部まで現状に即しているかという見直しを伴うことは少ない。かく言う私自身が見直しを図ったことがないのも事実である。
 
 議会人としては条例の制定や見直しも大きな仕事である。前にも書いたように新たに制定していくも重要だが時代遅れになり機能を失っているような条例については廃止や統合整理を行い、市を運営するルールをスマートにして行くべきだろうと思う。
 ただ、世の中のルールは可能で有ればシンプルにするべきだという考え方は理系的だと良く言われ、賛同されない事例が多い。そんなことを憲法記念日の夜遅くに考えていた。