津波被害を想定する
2011/05/28記
 気仙沼で聞いた話のなかで、津波が来てから長い間水位が下がらなかったということが妙に記憶に残っていた。陸地側に海水が留まることなんて有るのだろうかと考えていたが、膨大な水量が陸地側に偏在した場合を想定してみると海面の勾配があまりに緩やかになり流れる力が弱すぎ時間が掛かるという現象が生じたのだろうと想像するに至った。それを前提に、例えば東海連動地震が発生して津波が生じた場合を考えてみた。
 東京湾は富津岬と観音崎を結ぶ湾口部が狭いうえに中ノ瀬という浅瀬があるため時間あたりの流入量が限られ、湾内に入ると面積が急に広くなる形状もあって波が分散して弱くなり三陸沿岸のような破壊的な力を持った津波を迎えることは無いだろうと想定していたが、長時間に渡って浦賀水道の水面が高いままに成るので有れば東京湾全体の水面も静かに上がってくることも考えねばならないのだろうか。
 
 どの程度水位が上がるかは想定が難しいが、地形図に等高線を描き混んである5mと想定して、それより低いところに着色したら下のような図面が出来た。
 旧国道16号線より海側は殆ど5m以下で有ることは感覚として解っていたが、改めて絵にしてみると、岩根の海側の多くと金田の全てが浸水範囲になってしまい、浸水していない陸地が遠くなることを改めて思い知らされた。
 
 ちなみに今回の被災地でも津波の警戒標識が多く設置されていた。防災意識の高い地域であっても大きな被害が出たのである。まして浸水情報を提示しない本市では、警報が出ても避難行動に繋がらない事は容易に想像できる。
▼千葉県旭市の飯岡漁港
▲宮城県南三陸町の国道45号線
 
 では、本市では過去に津波は来ていないのかというと、関東大震災で発生した津波は房総西線(現内房線)の線路まで来たと中里地区では伝えられている。今回、私が設定した5mの高さではそれすら越えて内陸に水が入る事になる。過大な設定であるとは思うが、今回の地震で想定外を推測する事の重要さを学んだので5mの波を止める防波堤は出来なくとも、この範囲程度は避難場所を確保して訓練を行うようなリスクコミュニケーションを検討する必要が有ると思う。
 
 ところが、肝心の避難場所が浸水範囲の人口に比べ小さく収容可能量が少なすぎるのではと思うし、久津間や牛込の海岸周辺からでは避難場所になる学校校舎まで2km以上有り、高齢者が歩いて避難しているうちに波が来てしまうように思われる。
 木更津駅周辺なら民間のビルも多く公的な場所でなくとも一時的に身を寄せることが出きるだろうが、それすら無い「避難所難民」対策を講じる事が必要だろう。
 
 これらのことには前にも記載したが、今回津波スクリーンの提案も含めて議会質問で取り上げようと思っていたところ、同じ会派の議員から類似の質問が行われることが解り、重複を避けることにした。それでも絵を作ってしまったので資料価値を高めるため、取り敢えずHPにアップする次第である。
 なお、この絵に有るように5mも水位が上がった場合は、江東区や江戸川区の海抜0m地帯を筆頭に甚大な被害が発生している事だろうから政府や県による迅速な支援が期待できない。
 自治体の能力を超えた大被害に対し、初動の良い迅速な対応策を考え、防災に関する議会質問はそちらを行うことにする。
 
 ※ 5/30に写真を加え加筆した。