地域の就業者減少を考える
2011/06/09記
 今回の議会質問で取り上げるテーマの一つが行政の広域化である。近隣市の防災協定締結先を議場配布しようと準備していたので、そのついでに現状の四市住民の日常的な広域状況を整理したものを作成して加えようと考えた。
 日常的な広域化を捉えやすい指標の一つが通勤通学の状況である。これは10年前に『かずさ四市合併を考える署名活動の会』の政策資料の一部として作成した記録が有るので、それを更新する作業でもある。
 
 昨年秋に実施した国勢調査の結果を使用するつもりであったが、まだ統計データがまとまっていないため、残念ながら平成17年の調査結果を使うことになった。考えてみると10年前も資料作成の時に平成12年のデータが間に合わず平成7年の結果を整理していたことを思い出した。
 
 まず、各市の人口と、その市民のうちで自宅就業を含めた就業・通学している人口を比較した表を作成した。
H17 単位 木更津市 君津市 富津市 袖ケ浦市 四市合計
全人口 122,234 90,977 50,162 59,108 322,481
就業・通学者 65,120 49,207 27,570 28,458 170,355
割合 53.27% 54.09% 54.96% 48.15% 52.83%
 最近、人口13万人に迫ろうとしている木更津市も平成17年では12万人を若干上回っているだけである。
 ふと、袖ケ浦市のデータに目を留めると、割合が50%以下になっている事に気が付いた。就業・通勤をしていない人口、つまり未就学の児童や専業主婦、定年退職等により現在無職の人が人口の過半数になっているという事は衝撃的であった。
 
 そこで、平成7年のデータを引用してみると下表の通りであった。
H07 単位 木更津市 君津市 富津市 袖ケ浦市 四市合計
全人口 123,499 93,216 54,273 57,575 328,563
就業・通学者 72,171 53,562 31,517 33,105 190,355
割合 58.40% 57.50% 58.10% 57.50% 57.90%
 袖ケ浦市が顕著であるが、全ての都市で就業・通学者の割合も総数も著しく減少している事が解った。
 10年間の増減をまとめると下表の通りである。
H17-H07 単位 木更津市 君津市 富津市 袖ケ浦市 四市合計
全人口 -1,265 -2,239 -4,111 1,533 -6,082
就業・通学者 -7,051 -4,355 -3,947 -4,647 -20,000
割合 -5.13% -3.41% -3.14% -9.35% -5.07%
 
 四市合計の就業・通学者の減少数が2万人もあるということは驚くべき数字である。その多くが子供の減少による通学者の減少であると思うが、就業者の減少は、減少率を上回る賃金の上昇がない限り、地域での総収入の減少に繋がり、それが地域の経済の低迷に繋がってくると考えられるのである。
 賃金の上昇に関して民間の給与を調べると、国税庁の資料から近年は右肩下がりに減少しており、前にも書いたように平成21年は平成11年の12.0%減になっている事が解る。
 つまり、就業者の減少と賃金の低下の相乗効果によって、この地域の経済が疲弊してきたことが解るのである。
 
 これを打破して地域の総所得を増加することで経済を活性化させる方法を主な要素に着目して考えてみた。

@割合の減少を上回るほど人口増加させるため住宅供給する。
A個人の所得を増やすため高所得の事業所を誘致する。
B就業割合を上昇させるため女性や高齢者の職場を増やす。
 
 他にも色々手段は有るだろうが、効果の大きそうなことは上記の3点である。このうち、@は区画整理事業による宅地の大量供給という状況で達成されており、Aは不十分ながらもアカデミアパークへの企業誘致により自治体として出きることは達成しつつあるが雇用の自由度を増やした結果としての派遣労働者等の低賃金労務の問題は解決が難しい。
 Bを具体的に考えると、例えば女性の進出を促す手法としての保育施設の充実や、『男女共同参画社会』を推進することが重要であるが、高齢者の職場を増やすためには国家単位での制度変更が無ければ、これも難しいと思う。
 
 多分、この現象はかずさ四市に独特のことではなく、日本全国で同様の事が起きていると想像される。であれば、被災地で不足する行政職員に各自治体のOBを採用するなど、積極的な雇用喚起政策を実施して、多くの方々に現金が行き届くような手法を考えて国家そのものを元気にせねばならないだろう。
 国勢調査のちょっとした数字から、その様な事を考えていた。