予定価格を考える
2012/03/09記
 昨日の議会で南清小学校校舎増築の契約の承認が追加上程された。契約金額が1億5千万円を超えるので「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」の規定に従って議案として提出されたものである。
 議案は予定価格7億9160万円(税抜)の工事を地元企業も参加した競争による入札で、落札率83.4%となる6億6千万円で千葉市の池田工建鰍ェ落札したものの承認である。この契約による落札差金は1億3160万円(税込1億3818万円)である。
 
 なお、1年前なら建築工事については予定価格の85%以下で有れば失格であったものを、入札制度の変更によりこの金額で契約が成立したものである。制度改革による効果額は
 791,600,000×0.85−660,000,000=12,860,000
 となるので、制度改革により1286万円(税抜)ほど財政に余裕が出来たことになる。
 この入札にあたっては参加条件を『県内』と広げたため、17社が競争した結果、地元以外の業者が落札することになった。第3中学校のように、地元業者を除外した入札でなかった事は評価するが、せめて災害時に地域のために真っ先に活動する事を宣言している、災害協定を結んでいる地元業者(市内及び準市内)だけで競争できなかったものか、と思う点はある。
 
 地元を排除して、大手設計会社だけで競い合ったものが2月2日に入札が行われた「(仮称)真舟小学校建設工事設計業務委託」である。工事については材料や労務への適切な支払いが行われない問題を解決するため本市では失格制度を設けているのであるが、設計業務委託では失格制度がないため、極端なことを言えば1円でも入札が成立するのである。
 先月末の補正予算の審議で大きな落札差金が出ていることは報告されていた。建築物の設計を請け負った会社が、工事完成までの施工管理を請け負う事が多いため、魅力がある物件であることは理解していたが、そんなに安い額なのかと思い、調べてみると、東京都渋谷区にある渇ェ設計が予定価格の22.6%という、驚異的な低価格で落札していた。
 ちなみに、先の南清小学校増築工事では、事前公表をしている予定価格の83.4%〜100%に収まっている。この2件の予定価格に対する落札差金だけで1億9697万6850円と、約2億円が削減されるという劇的な効果が生まれている。
 
 22.6%という落札率が突出した値なのかと思い、入札経過書を資料請求により入手したところ、驚くべき結果だった事が解った。
入札額 落札差金 消費税込み 比率
(予定価格) 72,350,000 100.0%
入札者(1) 68,000,000 4,350,000 4,567,500 94.0%
入札者(2) 52,000,000 20,350,000 21,367,500 71.9%
入札者(3) 48,000,000 24,350,000 25,567,500 66.3%
入札者(4) 46,000,000 26,350,000 27,667,500 63.6%
入札者(5) 43,000,000 29,350,000 30,817,500 59.4%
入札者(6) 29,500,000 42,850,000 44,992,500 40.8%
入札者(7) 29,000,000 43,350,000 45,517,500 40.1%
入札者(8) 24,700,000 47,650,000 50,032,500 34.1%
入札者(9) 21,600,000 50,750,000 53,287,500 29.9%
入札者(10) 21,380,000 50,970,000 53,518,500 29.6%
渇ェ設計  16,353,000  55,997,000  58,796,850 22.6%
 入札には12社が訪れ、1社は条件を確認の上、辞退したらしいが、残る11社が応札した結果が上の表である。
 
 これをグラフで描くと下図のようになり、今回の落札者だけが突出して安い金額を提示したわけではないことが解る。逆に言えば、安いとはいえ、同業者も似たような金額で出来る事を裏付けたような結果になっているのだ。
 
 行政にとっては約6千万円の削減効果が生じて喜ばしいことではあるが、この価格で満足な成果品が作成できるか、と担当課も危惧して念押しをしたようだが結果的には問題ないと認め、契約が成立している。ちなみに金額が1億5千万円以下なので議会承認案件ではない。
 
 考えてみると、学校という設計が比較的画一的で、過去の設計事例が流用できるという効果はあるのだろう。しかし、どうしてもオリジナルになる外構の設計や申請書類の作成などを行うだけでもそれなりの人件費が必要というものが私にとっては常識である。多くの会社が安くても出来ると表明したことは、年度始めに技術者を遊ばせているよりは良いと考えたからだろうが、私の今までの常識が過去の遺物化している、とう事もあるようだ。
 
 なお、落札した渇ェ設計をWikipediaで調べてみると、
1995年(平成7年) - 県立会津大学
1996年(平成8年) - さわやかちば県民プラザ
1998年(平成10年) - 江戸川区総合区民ホール
2003年(平成15年) - 茅ヶ崎市立病院
等のように、しっかりした成果を残している建設設計会社のようなので、安くても満足できる設計を行っていただく事を期待したい。
 
 それにしても『予定価格』とは何だろう、と思わされてしまう。
 もちろん職員は千葉県が国土交通省に準じて作成した積算要領に基づいて適正な予定価格を算出し、それを公表した上で入札行為を行っているから、それ自体には問題ない。要は、現在の適正な価格というものが積算要領で求めた値と大きく乖離している事に有るのだ。
 
 今回の南清小学校の建築工事では価格が低すぎて失格した業者は居なかったようだが、第3中学校の外構工事では最低制限価格より低すぎて失格になった会社も出たようだ。その失格に成った会社が本当に提示した金額では出来なかったのか、今回の真舟小学校の設計業務の入札結果を見て、ふとそんな疑問を抱く事もあり、23日に議員会主催で行われる入札制度の勉強会を楽しみにしているのである。