南海地震の津波を考える
2012/04/07記
 2月29日に国土交通省交通政策審議会港湾分科会防災部会で、木更津市における大規模地震による最大級の津波が、2.6mになると想定されると発表されたばかりであるが、今回、3月31日付で内閣府の防災担当より『南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高について』という発表が行われた。
 
 これは昨年8月に設置した南海トラフの巨大地震モデル研究会が中間取りまとめとして行ったもので、今回の東日本大震災のように「発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波」を想定したものである。具体的にはマグニチュード9クラスの巨大地震を想定し、地震域や潮位の状況などを様々にシュミレーションして科学的に検証したものである。
 テレビ報道でも高知県黒潮町で最大34.4mが予想され、県庁所在地でもある高知市も14.7mの津波が襲うとされたことがショッキングに伝えられていたので気になってHPを調べてみた。
 
 当該地震において震度7が想定される範囲も一気に広がったという事なので分布図を見た。 
 上の図面に示すように、鹿児島県から神奈川県に至るまでの広大な範囲が震度6以上と想定されてる。これは震源域も広範囲な上に東日本大震災に比べて陸地に近い場所で発生すると想定しているからである。ちなみに木更津市の場合は震度5弱で、首都圏直下型の地震で想定される揺れに比べると若干少ない値で、今回の東日本大震災で記録された揺れと同程度である。
 
 本市にとって心配なことは津波による被害である。報告書の参考資料の中から木更津市の津波高さを調べると、11通りのシュミレーションが行われた中での最大値は2.5mであり、2月末に発表された国土交通省の値とほぼ同じものとなっていた。
 より厳しい値が出るのではと不安になっていたものが解消された気安さは有るが、それでも現在の防潮堤はこの基準を満たしていないので、前にも書いたように、まずは地域の弱点を把握し、段階的、かつ速やかに対応することが求められていると認識すべき問題を指摘されたと考えるべきであろう。
 
 因みに今回研究会が想定した地震規模は先に書いたようにマグニチュード9クラスの巨大地震を想定している。地震調査研究推進本部が、今後30年以内の地震発生確率を公表している南海トラフの地震想定(東海地震88%、東南海地震70%程度、南海地震60%程度)は、いずれもマグニチュード8クラスのものであり、今回検討のような巨大地震の発生確率は極めて低いものと予想される。しかし、想定外を想定する、というのが現在求められる事であり、そうでなければ被災した東北の地から何も学ばなかったことになる。
 東北地域の大きな地殻変動により、日本が地震の活動期に入った、いわゆる「大地動乱の時代」と認識して、行政も対応することが求められていると考えるのであった。