早期退職問題を考える
2013/01/25記
 ナイジェリアのプラント建設がテロリストに襲われ、工事を行っていた日揮鰍ノ関連する日本人が10人犠牲になったという痛ましい報道が届く。学生時代の知人もこの会社に勤めていたので気にしていたが犠牲者の名簿には無く少し安心しする中で、相変わらず日本人の報道だけで、現地で一緒に仕事をしていたフィリピンやマレーシア等の人達も関係者には違いないのであるし、場合によると日本で働いて友人も居る可能性が有ることを考えると、同じプロジェクトにいた外国籍の人達にも少しは触れるべきではないかと聞きながら思っていた。
 また、桜宮高校の体罰に関し、問題となっているバスケ部顧問の世代が近い事や、自殺が起きるまで大勢の目前で行われている行為が問題とされなかったことなど、色々考えることは多いのであるが、今回は退職金の大幅引き下げに伴い公務員が早期退職を続けている問題について記載したい。
 
 埼玉県からは2月1日からの退職金切り下げの前に県立高校の先生方が大量に退職し、進級や就職などの難しい問題を抱えている時期に混乱が生じていることが報道されていたが、昨日は愛知県より同様の理由で県警の署長を含む職員が抜けることで年度末の警察体制が手薄に成っている事を伝えていた。
 教職員や警察は「聖職」と見なして、勝手に現場を離れる事に批判が集まっているが、原因を考えれば3月末まで働いて得た2ヶ月分の給与とその時点での退職金の合計が、給与を貰わずに受け取る退職金を下回ると成れば、ただ働きをしているような気になり、よほど責任感の高い者以外は残らない制度に有る。
 
 かつて似たようなを聞いたように思いながら、木更津市の状況を確認してみた。木更津市は千葉市や松戸市のように自治体規模が大きく単独で職員の退職金等を積立て支給する事が不利と考え、県内の多くの自治体とともに「千葉県総合事務組合」を設けて、その機関を通じて支給水準が決められているようだ。
 それによると、退職金の官民格差を平成22年に調査した結果、平均で402.6万円ほど公務員が高いことが明かになり、それを平成25年3月1日、平成25年12月1日、平成26年9月1日の3回に分けて引き下げることで民間との差を無くすという改革案が国会で議決されたので、地方自治体も同様の措置を執る事が命じられたようだ。
 なお、公務員は60歳になった年度の末まで勤務することが前提であるが、必要年数の勤務が行われ、退職時点で既に60歳に達していれば定年の基本額が準用され、勝手に早く辞めるからと言っても減額の措置は行えないようだ。
 構成自治体の代表による組合議会が来月25日に開催されるので、場合によってはこの案とは違う結論に成るかもしれないが、とりあえずこれを前提に考えてみたい。
 
 木更津で埼玉県のように問題が顕在化して来ない理由は、単純に引き下げが1ヶ月遅いためで、来月の今頃は1ヶ月前に退職を申し出る者が続出し、3月議会における予算審査の時に担当者が退職している、という自体も招きかねない。
 では、金額を検証してみる。引き下げを単純に3回に分けて計算すると1回あたり134.2万円であり、給与がこの額より低い人は一月を残して退職した方が所得が大きく成る。多分、この額なら全ての職員が対象になるだろう。
 引き下げ時期を4月1日すれば、今年の職員は満額を貰えるから問題ないし、翌年に定年を迎える職員もその時点で60歳に到達していないハズなので勧奨退職でなければ1年前に辞めるメリットもない。だから職場は混乱しないという結果になる。
 これをわざわざ3月1日とするのは調査から2年以上も是正を放置していたので、これを引き延ばすことは国民の理解が得られないと判断したためのようだ。
 来年度は12月1日なので年度末まで4ヶ月残すことになるが、その間に他の職場に移って収入を得ることまで考慮すると、早生まれでない職員については、11月末時点で退職しようとする者が現れても不思議ではない。
 
 個人的に思うのは、国に従って3回とするのではなく、例えば1年半程度で是正したいのなら、毎月1/20づつ、20ヶ月に分けて削減をしていくという選択は考えられなかったのか、という事である。これであれば月収が20万円以上の者は、長く務めた結果として収入が減少するといった逆転現象も生じないし、生まれた日が引き下げ日の前後で大きく変わるといった不公平感も無くなる。
 これを手作業で計算すると事務処理が煩雑になり、間違えが多発しそうだが、機械化の現在なら月に1回の改正程度は大した手間でないと思う。
 
 納税者より多くの収入を公務員が得ている状況を是正する事は適切な対応であると思うが、何故このように混乱をもたらす手法しか取れないのだろうと、今回の報道を見ながら考えていた。

※千葉県総合事務組合は各自治体からの要望を受け、最初の引き下げ時期を平成25年4月1日にするよう方針変更したようだ。取り敢えず本年度の混乱は避けられたが、国民の理解はどうなったのだろう?(1月26日追記)