人口分布図を作る@
2013/07/11記
 3月議会が終わる頃、『限界集落の真実』(山下祐介著:ちくま新書)という本を読んでいた。著者が弘前大学の教授をしていたときに青森県の人口減少が著しい集落のフィールド調査を通じて、集落は簡単には無くならない事を示した読み応えのある本であるが、その中に示された自治体別の人口分布図(いわゆる人口ピラミッド)を見て、とても説得力があると感心した。
 そこで早速、市役所の統計部局に木更津市における人口分布図を問い合わせてみたが、そのような物は無いけど、地区別・年代別のリストはあるという事であった。数値の整理はあまり苦手と思わないので、平成25年2月末日現在における値をデータとして提供していただけるよう、お願いした。
 ところが届いたデータは11列17,741行になる膨大な物で、しかも地域に対象年齢が無い世代を「0人」とせず、列を詰めて整理されていた。全ての地区の列数が一緒で有れば集計は楽だが、空白の補完作業をした上で整理するという作業に嫌気がさし、作業に着手する事無く3ヶ月が過ぎた。
 
 6月末に、長期計画の策定を目指して行われているタウンミーティングに参加する中で、地域によって高齢者人口や若年人口に差が多い事の報告が行われていたが、生産年齢人口である15歳〜65歳と、その上下という3区分では実態が見えにくいような気がして、重い腰を上げて作業に取りかかってみた。
 想像通りデータの整理が軌道に乗るまでの試行錯誤はあったが、6月議会終了後の時間を使って、多くの人口分布図を作成した。色々と考えさせられる情報なので、3回に分けて報告する。
 最初は高齢化が進み、人口減少が大きいと言われる郊外部から中郷・金田・富来田の3地区と、人口増加の象徴である請西地区の人口分布図を比較したものを報告する。
 
 これは中郷地区(上望陀・下望陀・有吉・大寺・十日市場・井尻・曽根・牛袋野・牛袋)の男1,566人、女1,577人、合計3,143人を5歳づつの年齢階層に分け、それが全体に占める割合を図化したものである。グラフの左が女性で、右が男性を示している。縦軸は年齢階層で単位は%である。ちなみに上図で解説すると、中郷地区の60〜64歳の男性は、地区全体の男性の9.90%を占めるという意味である。女性がマイナスの値になっているのは作図のためで、正負を逆にして読んでいただきたい。以下、全ての図が同じである。
 中郷地区では、70代後半以降の女性が比較的多い事と、男性の20代後半と女性の20代前半に小さな山が有るがその世代の子供の山はまだ生じていない事と、男性の40代前半と女性の30代後半という働き盛りの世代が比較的少ない事が目立つ。全体的には若年が少なくなる逆ピラミッド型であり、人口減少傾向に有ることが一目瞭然である。
  
 同様に金田地区(中島・瓜倉・畔戸・牛込・中野・北浜町)の男2,049人、女2,202人、合計4,251人の図である。
 開発が進む金田地区であるが若年層の増加は、まだ見られていない。特徴的なのは20代の女性が比較的多いことで、これは大型商業施設の従業員が地域内に居住しはじめたと想像されるのであるが、確認作業はしていない。何れにしろ今後の期待が有るとはいえ、現況のままで推移すれば人口減少は避けられない。
 
 3番目は富来田地区(大稲・真里・下内橋・戸国・茅野・茅野七曲・山本七曲・真里谷・田川・佐野・下郡・根岸・上根岸・下宮田)の男3,465人、女3,406人、合計6,871人の図である。
 中郷と金田に比べれば30代後半周辺の人口が薄くなっていないので、その世代の子供が期待されそうであるが、残念ながらその様な状況には成らず、10歳以下の若年層が極めて少なくなっくている事が特徴である。
 このように人口減少といわれる3地区の図を作った後で請西地区を作成すると、同じ市内なのかと思われるほど形態の違う図面が出来上がり驚かされた。
 
 これは請西東1〜8丁目と請西南1〜5丁目の男4,355人、女4,169人、合計8,524人を図化したもので、高齢者が極端に少ない正ピラミッドに近い形状であるが、20歳周辺がその前後の世代に比べると極端に少ないという特徴的な形を示している。家を買うには若いし、親が家を買って移り住む世代でもない、という事だろうと想像できる。また、この図から、請西東・南地区では高齢者が目立ち始めるのは20年程度後の事になる事や、当分は子供の増加が進むことも予想される。
 
 請西東・南地区が将来的に増加傾向を示しているので、先行した開発型の団地は現在でも良い人口分布を示しているのか検討したところ、開発が終了して時間が経った団地では、中郷などの郊外部より目を覆うような状況になっている事が明らかになるのであるが、それは次回に記載する。