日本人の劣化を考える
2014/07/04記
 昨日は梅雨の谷間の晴れ間が出たら山に登ろうと友人と示し合わせていたが、残念ながら天気は雨模様であった。その代わりに私のリクエストで、先月28日に開催された環境セミナーで、武蔵野美術大学の吉田教授が環境色彩計画を実践した例として紹介された藤沢市の辻堂地区を見に行くことにした。
 
 その途上の車の中で昔の旅の話になり、伊香保の露天や渋温泉の外湯巡り等について、昔は夜間なら自由に入浴できたものが最近はマナーの悪い利用者が居て、施錠して管理されている状況が悲しいという事で盛り上がった。
 昔は誰が見ていなくても、『おかげさまで』という気持ちで後片づけをしっかり行い、住民と利用者の間に信頼関係があったのだが、最近では自分の職場にある食品が入っている冷蔵庫に悪戯で入ったうえに、その写真をSNSでアップするほどだから、見知らぬ住民との信頼関係など無理だろうという結論に成った。
 
 もちろん、ごく一部の不心得者の仕業であり、ワールドカップの会場では敗戦後にもゴミ片付けをして帰る日本人サポーターが驚きを持って見られるなど、世界的には高い民度を保っている事も解っている。人通りのない山奥の自動販売機が盗難に遭わないことは世界から見れば信じられない現象のようだ。
 
 しかし、住民から選出された政治家に連続して問題が生じている事が目立ち始めている。前にも書いた東京都議会で塩村文夏議員に対する鈴木章浩議員のセクハラヤジを引き金にしたかのように、千葉県では村上純丈千葉県議が酒酔い運転で逮捕されて辞職し、兵庫県議会では野々村竜太郎議員が政務活動費を不正流用していたのではという疑惑に対する説明会見で理解不能な対応をするなど、やはり日本人は劣化しているのかなと思わせるに充分な現象であり、困ったことに彼らとほぼ同世代の私は劣化の側に立っている事を認識して気を付けなければと考えさせられる日々なのである。
 
 ついでで蛇足のように辻堂を記載する。これはJR辻堂駅北口に有った関東特殊製鋼の本社工場跡地の約25haをUR都市機構が再開発するもので、住友商事を中心とする資本で整備された『テラスモール湘南』を中心とした新市街である。
 ここの計画は目立つ色彩や看板を抑制したもので、色調は白から茶色にかけての彩度の低い落ち着いた外観であり、木製ルーバーや植生を上手く配置してヒューマンスケールの落ち着いた空間を演出し、看板についても極めて控えめに配置され、例えばテナントであるセブンイレブンの看板にしても一段奥にするなど感心させられるデザインであった。
 
 この彩度を抑えて質感の高い街並みを付くるという考えは近隣のマンションや病院まで統一され、高級感を演出しているようにさえ感じられた。
 2週間後に増設されるMOP木更津や足場が外されつつある木更津築地のイオンは、多分多くの看板が前面に出てくるデザインに成るだろうと思う。それは駅前の住宅近接地と、郊外の準商業・準工業地域といった用途の差もあり、一概に問題があると思うつもりはない。しかし、抑えたデザインの魅力というものは、体感することによって理解できるのだと改めて思った。
 
 日本人の劣化は進んだかもしれないが、デザインの進化は止まることがないと、まとめにもならない一言で文章を終える。