食のまちづくりに思う
2014/07/08記
 日曜から月曜にかけて、江川東町第一町内会で三浦三崎に出かけてきた。毎年1回行う恒例の町内旅行で、昨年の道後温泉が遠くて遠くて移動が大変という声が出され、対岸の三浦半島で完結することにしたのである。お陰で月曜日は個人的に抜け出し午後から公務を果たすことが出来たのは幸いであった。
 さて、右の写真は宿泊した築80年になろうとする三崎館本店で、建物は古いが鮪の兜焼きを売り物にして、昼間は多くのお客さんで賑わっているようだ。この様に三浦市は鮪というブランド確立し、B-1グランプリにも鮪ラーメンを出品するなど、観光に役立てていた。
 
 6月議会で行われた施政方針演説の「第4 まちのにぎわい・活力づくり」の中に「駅周辺地区につきは、食によるまちづくりに向けたコミュニティ創出事業の検討・調査」という項目があり、それに沿って肉付け予算の中で150万円の事業費も承認した。しかし、木更津市の「食」として、特定のブランドが確立されていないように感じる事も多い。
 多くの観光客は「アサリ」と思っているのではと推察するが、それを満喫できる店は宝家さんなど数件しかなく市内全域で常時食べられている訳ではない上に、現在収穫量が落ちており、潮干狩り事業を維持するために国内の別の産地から稚貝を購入せざるを得ない状況にある。
 それを打開するため「バカの会」という取り組みも始められたが、同様に供給量が不安定な上に流通ルートが限られ、やはり全市的な展開になっていない。
 有名な海産物として「海苔」も有るが、全国の県庁所在と及び政令指定都市(従って木更津や富津は含まれない)の中で千葉市が消費支出額最高だった事もあり、宇都宮の餃子のように千葉は海苔を名物にしようと「焼きそば海苔ロール」なるものを開発した。生産地は置き去りの状況である。
 弘前のリンゴや山形のサクランボのような果樹にしても、中郷では梨、矢那や富来田ではブルーベリーと主力が有る中で、最近は岩根を中心にパッションフルーツが生産され始めた。色々あることは贅沢な悩みだと解っているが、絞りきれない事は残念である。
 その上、木更津市民にとって懐かしい味は「バーベキュー弁当」であったり、数年前に行われた木更津のB級グルメの検討では「みそ豚丼」が優勝するなど、地元産品を使っていたとしても何故木更津なのという物が解りにくいし、特定店以外に広がりがない。
 さらには、東日本大震災の千葉県産品の風評被害による売上減を挽回するため2013年3月には『木更津グルメマルシェwith週末木更津計画』の中で「アサリクリームチャウダー」と「ブルーベリーの贅沢タルト」を費用をかけて開発したはずだが、これも市内各所で楽しめるわけではない。
 
 そんなことを思い、テレビ東京の「カンブリア宮殿」の録画を旅行から帰宅後に見た。内容は19日に放送された函館の「ラッキーピエロ」というハンバーガーチェーンで、函館市内に16店舗を展開し、その人気が絶大なのでマクドナルドは5店舗、モスバーガーも僅か3店舗と、大手は進出出来ないようだ。函館は3年前の夏も含め、何回も行きながらイカばかり食べて知らなかったと悔やむ。
 この店の強さは、新鮮で良質な食材に拘り、約85%を北海道内から調達した結果、原価率は通常を大きく上回る50%を越えているようだ。その上、作り置きはしないなど回転率の低下を犠牲にして美味しさを目指している事も好感が持てる。これらは圧倒的な人気で毎日の売上高が確保されることによって採算が成り立つ話である。地域展開のため生産者との信頼関係も厚く、生産者にも地域で必要な店になっている。だから逆に札幌や東京といった巨大消費地に店舗を出そうという動きに成っていないようだ。
 また、大手チェーンが画一的なマニュアルに基づいた効率化を目指すことに対し、ハンバーガーショップなのにカツ丼やスパゲッティ等も販売して多くの年代層に愛される店を目指した事、全ての店のコンセプトが異なること等、感動を残す仕掛けもしている。
 お客様にも会員証を発行し、48,000円毎に会員資格が上がる制度を採用しており、4段階の最上位(従って144,000円以上使用した客)にはポイント還元率を高めるだけでなく、会社が業者会と行う新年会に招待したり、新商品の事前モニターになって貰うなど、超常連客と一緒に店を成長させるという戦略は地域と一体化しており、これは大手には真似が出来ない話だと納得した。
 さらにはSNSを利用したクチコミの拡散にも敏感で、特徴有る店舗造りに留まらず、例えば函館山バーガーのように視覚に強烈な印象を残すメニュー開発を行うことで、知名度を高めている。もちろん、そのためには前述のように美味しさの追求が前提である。
 
 この録画を見終えて、木更津の食に特定の一品が無ければならないという訳ではなく、木更津に来れば美味しい物が色々な場所で楽しく味わえ、それを回りに自慢したくなるというまちづくりが有っても良いんだと思えたし、木更津を始めとした房総の第一次生産者との信頼関係や、市民という常連の消費者と一緒になった食の開発が行えるような中で、多くの情報発信が木更津からされるまちづくりが地域の活性化に繋がるのだと改めて思った。もちろん、その前提は飲食店側の意識改革である事は言うまでもない。