航空祭後に本を読む
2018/09/11記
 一昨日、陸上自衛隊対で開催された第46回航空祭は、駐屯地開設50周年となる式典を兼ねていたが、7日の未明に発生した北海道胆振東部地震に伴う災害派遣が重なったため、一般開放が中止され式典のみの開催になった。
 現在木更津に駐屯する第一ヘリコプター団は、土浦市の霞ヶ浦駐屯地において1968年3月1日に編成されたのち、速やかに移設され、同年3月25日に締結された「木更津地区施設の管理棟に関する協定」によって木更津駐屯地が開設されている。現在の主力機はCH-47であるが、最近は佐賀県知事が空港の使用を認めた陸上自衛隊のオスプレイ部隊を暫定配備させる基地にも使用するような報道が続いている。しかし防衛省からは何の情報もなく、市民だけでなく議会や市役所も蚊帳の外である。
 
 木更津駐屯地で定期機体整備を進めてきた米海軍のMV-22については1機目の塗装も完了し、今月の5日からK格納庫を出て基地の中で点検を始めている。その確認等のためにパイロットを乗せたオスプレイが5日の16:44に厚木基地を飛び立ち16:59に木更津に到着し、木更津で2泊した後の7日の10:36に木更津から飛び立ち12:39に岩国に着いたと報告があった。2機目も点検整備中なので6日には日本に24機配備されている海兵隊のオスプレイの内、3機が木更津に居たことになるのだ。なお、1機目は今月末頃には点検も終わり、相模湾上空での飛行訓練も開始される見込みであり、特に問題なければ来月中に沖縄に帰ることであろう。
 
 オスプレイについては安全性に疑問があると、多くの反対運動が発生しており、木更津市でも7月1日に2200人(主催者発表)が集まった反対集会が行われた。その状況については前にも書いたが多くの兵器の中でオスプレイだけを目の敵のようにする姿勢は、単なるシンボルへの攻撃と思いつつ、実はオスプレイについて詳しく知っていない事にも気が着いていた。
 
 そんな中で、先月末に鳥影社(長野県諏訪市四賀229-1)から販売された、次の本を戴く機会を得た。
 
 
 これは旭川市に在住する影本賢治氏が翻訳した本で、私に送っていただいたのも影本さんである。サブタイトルの「悪名高き」で、単に批判的な本かと思ったが、訳者は陸上自衛隊補給統制本部の一員としてオスプレイ導入業務に係わると供に、米軍の航空雑誌の翻訳などをしてきた方であり、現在ではAvistion Assetsというサイトを運営している。
 訳者のあとがきには、この本の翻訳を始めた頃、米軍の関係者から「オスプレイに係わる仕事をする者が必ず読むべき本」だと云われて、書籍として発表すべきと思い著者と連絡を取り、出版社を捜し、自主出版の形で作成したことが書いてあった。因みに価格は税抜き3200円である。
 著者のRichard Whittle氏は新聞社の記者として22年に渡りオスプレイに関する記事を書き続けた方である。オスプレイの歴史書を造ろうと考え、200人以上の関係者へのインタビューや政府機関への情報公開請求による資料入手を行い、ヘリコプターの開発から始まり、1983年のオスプレイ計画の始動と数多くの事故、イラクにおける実戦配備を経た2005年までの光と影を公平な視点で記載している。
 私もこの本を読んで、1980年にイランの米国大使館からの人質救出作戦がヘリコプターの航続距離の関係で途中給油基地が必要になるなど複雑になり、テヘラン到着前に失敗する結果を招いたことが遠く早く飛べるチルトローター機を必要とした契機になった事を認識した次第である。
 
 多くの人がチルトローター機に掛けた情熱は、今年の夏に読んだ宇宙探査に人類が注ぎ続けてきた情熱を書いたSB新書の「宇宙に命はあるのか」に匹敵するような感動も呼び起こした。今年読んだ良書の双璧だと、個人的には感じている。
 しかし、原書で400頁を超える本を翻訳した結果、20行×43文字という密度でも748頁(インタビュー者リスト、注釈、文献目録、訳者あとがき、索引を除いても643頁)に達する分量となっている。先に挙げたSB新書は16×40なので新書サイズにすると千頁を超え、250頁程度の比較的厚い新書にしても4部作にもなる長編なので9月議会の一般質問の準備を進める中では読破に難航し、それゆえに読書後の達成感も凄く、この記事を書くモチベーションに成っているのである。
 
 この本は市長や他の市議に送られていないようで、基地対策特別委員会委員長である私に理解することを期待していただいたのだとすれば、その一端には達することが出来たと思う。日本語での出版まで進めて戴き、それを送っていただいた影本氏に深く感謝すると供に、オスプレイに賛成の人も反対の人も、歴史書として知識を得ることを薦める本なので、是非とも取り寄せて読んで欲しいと願いながら、今回の記載を終えたい。
 
 ※9月14日に訳者のHPへのリンク等を含め微修正を行った。