ボラセンが立ち上がる
2019/09/16記
 台風15号による人的被害は奇跡的に軽微であったものの、家屋の屋根を中心に物的被害が大きく、特に電気は沖縄電力を除いた日本中の電力会社から1万人規模の復旧応援斑が千葉県に入りながらも完了の目途が見えず、停電に伴う断水や通信障害は被災から1週間を経過する長期戦に成ってきた。16日17:44現在で約7万41百世帯に電気が届いていない状況で、冷房を動かすことが出来なかった結果としての熱中症による死亡者も出る事態となっている。この様な状況を受け千葉県は12日に25市15町1村に災害救助法を適用することを決定し、さらに政府も激甚災害指定に向けて動き始めていると報道があった。
 
 国による支援制度が整い始める中、木更津市も被災された個人に復旧の手が届くよう、14日の正午に災害ボランティアセンター(以下「ボラセン」)を立ち上げ、その日に登録を済ませた34人が活動を始めた。ボラセンのFacebookによると24日まで開設予定のようである。
 3連休の中日で、良く晴れた昨日(15日)は県外からの7人と木更津市民の76人を含む合計104人のボランティアが登録をしていただき、27件の依頼を処理し、5件の依頼が継続となっている。私は所用で昨日は参加しなかったが、ボランティアの活動場所への移送には永原議員がマイクロバスで協力したようだ。
 
 今日は朝から雨の予報であったので募集は中止したが、掲載が遅くて集まっていただいたボランティアも多くいた。そこで団体での参加者を含む25人で5件の依頼を対処し、10件の依頼を継続して処理する予定だと、千葉県社会福祉協議会のHPには記載してあった。
 なお、県内では他にも16の市町でボラセンが立ち上がっているようだ。鋸南町は特に酷い被害だという情報がネットで流れているためか、昨日の鋸南町には15箇所のボランティア数の合計である1,778人の34%に達する607人が集まったようである。鋸南町社会福祉協議会はニーズ調査やマッチング等で、さぞかし大変だったことだろうと推察する。
 県内では千葉市が今日からボランティアの活動が始まり、富津市では明日からボラセンが開設されると聞いている。しかし東京都や神奈川県といった巨大な人口に隣接しながら、殆どが原則として県内のボランティアを募集するというスタンスであったようだ。
 このためにボランティア車両の高速道路の無料化が千葉県内に限られており、災害ボランティア議員連盟の方々も疑義を持っていたのであるが、多くのチャンネルから意見が届いたらしく現在では県内限定は解除されたようだ。私も広く人材を集めるべきだと考えているが、比較的軽微な木更津より安房郡に多くの人材が回ってもらうべきだとも考えている。
 
 ボラセンが立ち上がる前、12日の午後から多くの自発的なボランティアが炊き出しや食料の配給を行っていただいた様である。気持ちは有りがたいが多くの商店や飲食店が営業を開始している状況なので、より被害の大きい鋸南町や南房総市にという誘導は出来なかったものかと思う。
 またブルーシートの配布もその頃に始まったが、馴れない屋根の上の作業で怪我をしたり、不適切な設置でシートが風で飛んで架線に架かって停電するなどの二次被害が出ないかとも気になっていた。実際に屋根から落ちて怪我した人だけでなく君津市では死者も出たと聞くが、屋根作業の注意事項もシート配布に併せて伝えるべきだったのだろう。
 ただし福祉会館での全市民向け配布とは別に、区長会を通じて自治会加入者に配布するルートを設けた事は高く評価したい。そのことで自治会の加入意義が高まり、ひいては今後の自主防災組織加入者を増やす結果に繋がる事が期待できるからである。
 
 屋根作業を危険と判断した人が多いのか、ボラセンに寄せられる依頼の多くは屋根にブルーシートを掛けて欲しいというものである。高齢者が屋根の上に登ることは危ないが、ボランティアも多くが経験していない危険作業なので、開設の日には、それを断るしかなかったのが心苦しく思っていた。
 しかしながら、陸上自衛隊高射学校を中心とする自衛隊員が応援に駆けつけていただき、木更津市の消防署とともに危険な屋根作業を手助けしてくれることになった。依頼の全てに対応することは難しいだろうが、大きな戦力と期待したい。
 
 さらには災害に対処する事を目的としたNPO法人等の協力も得られそうであるし、19日にはシート張りの講習会も企画しているようだ。災害発生から10日後に成るが、それでも瓦屋は3ヶ月待ちだと聞くと需要の有りそうな講習会である。
 
 屋根を治す職人が見つからず、ボランティアも手助けしてくれないという話が影響しているのか解らないが、屋根を治すという詐欺行為が多くで目撃されている。雨漏りの不安につけ込み適当な作業を行って高額の工事費を請求するという話だ。木更津市内では停電で閉店中のコンビニが狙われるなど、治安の悪さも耳にする事が多くなってきた。
 火事場泥棒という卑しむべき行為と考えてきた日本の文化が失われつつあるのかと悲しむ点では有るが、それでも隣近所が助け合い励まし合って災害を乗り越えている姿を多く目にすることの方が多かった。暴徒が略奪するといった外国で見るような事態は、当然のように房総半島では発生しなかった。
 
 明日から平日になり、社会福祉協議会の通常業務が始まる。木更津のボラセンは県下でも有数の人数を誇る防災コーディネータに加え、県や被災していない浦安市等から駆けつけていただいた外部の社会福祉協議会の職員も加わり、運営を開始しているが、通常業務とともに、どの様にボラセンを回していくのか、その力量が試されることになるだろう。なお、議会も明日から決算審査が始まるのでお手伝いは疎か、活動状況の確認もままならなくなるのか残念である。
 しかし、今回のボラセンを運営する中で、多くの反省点や改善点が出てくることだと思う。その様な経験を重ねておくことで、近い将来に発生が危惧される海溝型大規模地震に対する準備活動になる事を私は強く期待しているのである。
 東日本大震災で17回ほど参加したボランティアの経験をセンターに伝え、市民の依頼に的確に応えることと、駆けつけてくれたボランティアの方々が木更津に悪い印象を残さないことに、少しでも努力しようと思っている。木更津市にボラセンが立ち上がる中でその様なことを考えていた。