暫定配備が近づく
2020/07/06記
 先週末に防衛省が7月6日に陸上自衛隊のオスプレイの暫定配備を始める最初の1機目を米軍岩国基地から木更津飛行場に移設すると発表した。
 本日は実際に最初の機体が飛来する状況を確認するつもりで日程を空けて待っていたが、木更津周辺では強風が止まず、岩国市には大雨警報と強風・雷雨注意報が発令されていたこともあって飛来は8日に変更となった。2機目は10日の予定なので、中一日で2機が揃うことになりそうである(※8日も中止となり最初の機体は10日に到着したが2機目の飛来も後送りされている)
 
 初号機が木更津に飛来した時点を持って暫定配備が開始され、防衛省は木更津市に対して5年以内の配備とすることを約束している。明後日に飛来がされたら2025年7月7日までに次の配備先への移駐が行われるという意味なので、仮に佐賀空港に隣接した駐屯地の用地確保が難しい場合は、防衛省の責任において他の基地への移駐を進めなければならなくなる。
 佐賀空港以外の場所が高遊原分屯地が配備されている熊本空港なのか、海上自衛隊大村航空基地が置かれている長崎空港なのか、それとも離島の五島空港か対馬空港か、それ以外かも解らないが佐世保の水陸機動団を有効に活用できる場所への移駐を前提とした取組が求められることとなるだろう。
 
 さてオスプレイについては反政府・反米・反基地等の様々な反対運動のシンボルとして選ばれてしまい、30年前の試作5号機が配線ミスで破損炎上する事故映像が繰り返し使われるなど、危機感を煽る状況が続いている様に感じられる。手放しで安全な機体だと思う事は出来ないが、他の航空機と同じ程度の事故率である事を考えると過剰反応とも思われる。
 オスプレイも砂を巻き上げる場所でのホバリングはエンジン内に異物を吸い込み推力が落ちて落下の危険性がある事や、定期機体整備に長い時間と膨大な費用が必要となる現状があることなどを知り、現在明らかになっていないホバリングでの低周波の影響などを研究する一方で、反対のためだけに言われている正しくない情報は払拭すべきだと私は思うのである。
 その様な正しい知識を得るために、協議会と部会のメンバーを中心に、一般市民も参加できる学習会の様な場を設けることは出来ないものかと、オスプレイの飛来を前に思っているのである。
 
 ではどの様な情報が正しくないのに流布されているのか、具体的な事例を上げてみたい。
 
 まず「オスプレイは危険な飛行機なので米国では首都の近くにはなく大都市は飛べない」というものがあるが、ホワイトハウスがあるワシントンD.C.から約50kmに有るクワンティコ基地には要人輸送型のオスプレイが駐機され首都まで頻繁に飛んでおり、ニューヨークやサンフランシスコにもオスプレイが飛んでくることは一般的という事である。因みに木更津は東京から40km程度である。
 
 次に「飛行機からヘリコプターに飛行モードを転換するときに事故が多い」というものも有るが、この類型での事故はモロッコで低速のヘリモードからナセルを倒して飛行機モードに替えようとして失速して墜落した1件だけで、その逆の事故は無いようだ。沖縄でも市街地上空で飛行モードからヘリモードに転換しているという問題が聞かれ木更津でも危惧する者も多いが、米国でそれを回避するのはエンジンが下向きになることで騒音が上昇することを避けるためであり事故発生を危惧してのことではないとの事である。
 
 さらに「危険な上に実用性がないので誰も買わないが日本政府は無駄なものを米国から買わされている」というものもあるが、米軍でも海兵隊のMV-22に続き空軍がCV-22を配備し、今回定期機体整備の追加として話題に上った海軍のCMV-22が新規に配備される状況である。軍事通の知人に聞くとオスプレイはF-35のエンジンを搭載することが出来るので空母に必要なものを遠くから早く調達できるだけでなく、CMV-22は航続距離を伸ばすように改良された結果、空母を中心とした艦隊の行動半径が一気に広がるという利点もあるようだ。米軍も危険で実用性がないものを第一線に配備する事はないと思うのだ。しかしNATO諸国はもちろん日本以外での購入がないことも事実である(※既に遭難救助機としてカナダには2機が貸与されていたが、この頁を記載した7月6日にインドネシアに対し8機のオスプレイを有償軍事援助する事が米国務省より発表された。順調に進めば米国・日本に続く3番目の導入国になる予定である)
 
 また「高度1,600ft(約490m)より低い領域ではオートローテーションが機能せず安全に着陸できない」というものも有り、木更津市議会でも質問している議員があるが、オスプレイには翼が有るため水平速度が有る場合は固定翼のように滑空して着陸することが可能である。米軍はオートロ−テーションで着陸できないことは決定的な欠陥ではないという結論に至り、オートロ−テーションによる着性を性能所用から削除している。
 
 個人的には1980年代では画期的であった設計も既に古くなっている上、開発時に要求された項目が多すぎたために無理をしてたので、折角始めての本格的なチルトローター機として登場したオスプレイは複雑で故障も多くやっかいな物に成ってしまっている事が残念であるし、木更津駐屯地に恒久配備されるような事態は回避したい。ただ、チルトローター機については新機種が多く開発されているいるので、その動向には注目している。
 
 明後日、また改めて最初の機体が木更津に到着する事を確認することに成りそうであるが、今日から始まらなかった暫定配備に対して考えを整理するため記載した。
 (※7月8日及び14日に青文字の加筆と微修正を行った。)