市原で娘と芸術を
2021/12/27記
 週末は家の片付けや雑用が多いので娘と遊んで言われ、折角だから開催最終日を迎えた「いちはらアート×ミックス2020+」を見に行くことにした。ネットで情報を調べてみると五井・牛久・高滝・平三・里見・月崎田淵・月出・白鳥・養老渓谷の9箇所が主な会場となって開催されているということだが、娘を連れて一気に回ることなど出来るはずがない。そこで公式HPで子供連れにお勧めのコースとして五井→牛久→高滝→平三→白鳥というものが示されていたので基本的にそれに従うことにした。ただし五井駅では駐車場確保が困りそうなので上総村上駅の小湊鐵道を待つ宇宙飛行士を皮切りに南下するという計画にした。
 
 牛久駅は五井駅とともにパスポートの販売を行う中心的な会場であり駅前に大きなスペースが設けられていた。聞けば牛久地区の4箇所を見るだけなら8百円のチケットでも良いと言われるが、多くを回る予定だからと全体のパスポートを3千円で購入する。なお未就学児の娘は無料である。購入した証拠のリストバンドを巻かれ、駐車場の場所と市内散策の地図を貰って駐車場に移動し、牛久の町を見て回ったのだが、他にもパスポートを片手に回っている観光客が多く、駐車場の空きを待つ人もおりなかなか盛況であった。空き店舗を利用した展示場所だけでなく営業中のお店にも人が入っていたようなので経済効果もそれなりにあったのであろう。
 
 そもそも「いちはらアート×ミックス2020」は2020年の3月から5月に開催を目指していたものであるが、新型コロナウイルスの流行により一年延期となって東京オリンピックと同様に「2020」から「2020+」と名前が変わった。2020年10月26日に造られた基本計画では小湊鐵道沿線で菜の花や桜が綺麗に咲く3月20日から5月16日で開催するつもりでいたものが再延期され、11月19日から12月26日の37日間で開催されることになったものである。
 過去には2014年3月21日から5月11までと2017年4月8日から5月14日まで開催されているので基本的には3年に一度で、今回は3回目のようだ。私は2014年4月に回らせて頂いた。
 
 牛久エリアの見学を終えて湖畔美術館に移動する途中で上総久保駅に立ち寄り、芸術作品として設置されたホテルを見る。
 駅のホームに直結している造りで、これならイベント終了後も話題性も手伝い、営業して貸し出せそうだと思うが、スタッフの方によると本当の宿泊施設にする場合は消防や保健所の許可を得るなどハードルは高いようである。
 上総久保駅の脇には舗装された駐車スペースも設けられ、マイクロバスでアート×ミックスを回っている一団と一緒になった。市原市はこのイベントを通じて駅周辺の環境整備を進めている事に気が着く。久留里線の活性化協議会が設けられているが、駅周辺の整備を各自治体が協力して行っていくことで利用者を増やすことが鉄道の維持に繋がるだろうと思った。
 
 高滝湖畔公園の美術館は常設展示も多く残る場所で、到着したときには次の会場に移動する人がバス停に長い列を作っていた。ほぼ満車の駐車場に車を停め館内を見て回り始めるが、展示見学に厭きた娘が美術館内で勝手にかくれんぼを開始してしまう。
 地下や屋上を探し回って見つけだし、屋外で遊ぼうねと連れ出して公園で身体を動かす。後に出てくる白鳥エリアのような遊具がこの公園の中に有れば良いのにと思いつつ、車に戻って家から持ってきたお弁当を食べる。
 
 次に訪ねたのは今回からエリアに加わった旧平三小学校を会場としたエリアで、到着したときには校庭でソーランとエーサーが披露されており、娘は校舎の中に入るより外で見学したがっていた。
 校舎の中には多くの面白い作品が展示されており、特に屋外階段で展示されている連作の最上階が野獣に破壊された空間のようで、現に鳥獣被害の大きい房総ならではの作品と感じた。
 
 近くには里美・月出というエリアもあり4時の終了時刻まで余裕があるのだが、娘が早く遊びたいと騒ぎ始めたので当初の予定通り、両者を素通りして白鳥エリアへ行く。旧白鳥小学校の校庭には芸術作品としての遊具があり、娘は滑り台やトランポリンで楽しみ、自宅から持ってきたゴムボールを投げて遊び続け、やはり校舎の中に入るのに抵抗を続けていた。
 校舎の中ではワークショップ形式が多く、何とか入れた娘は折り紙に夢中で、他の子供が創っていた正月飾りをやりたいと言うので参加料1,400円を払い芸術活動のまねごとをさせていただいた。
 午後4時の終了時刻を白鳥校舎で迎えるが、娘はまだ外の遊具で遊びたがっていたので、どうせこの次は月崎駅とクオードの森のイルミネーションを見て帰るだけだからと薄暗くなるまで一緒に遊び回った。
 
 月崎駅へ移動して駅前のお店で購入したアイスモナカを2人で食べながら駅の夜景を待っていたが、娘が疲れた・寒いと言う。アイスを食べたがるから冷えたんだよ、と言って暖かい車の中に入れると直ぐに寝てしまった。クオードの森の駐車場まで移動しようとすると、会場の手間に駐車場待ちの長い列が出来ていたので娘を起こしてまで見るのも如何かと思い、Uターンして自宅に帰った。
 
 2020年10月26日に造られた基本計画ではこの事業に係る市原市の補助金は2019年から2021年の3年間支出され、その累計額は5億15百万円の想定であり、国等の補助を除いた市の一般会計からの持ち出しが3億61百万円とされていた。とても内容が濃いイベントであり、芸術環境の醸成だけでなく過疎地の活性化や小湊鐵道駅周辺の整備事業などで遺産を残すことも出来ることは評価できるが、事業費を考えると木更津市でもとは思えない。
 しかし素晴らしい事業なので、木更津のMOPに来る人達をイベント期間中は市原まで誘導し、養老渓谷や鴨川に泊まって貰うような房総半島全体で取り組む観光行事に活用するべきではないかと考える。3年に1度の開催で有れば、次回は2024年になるのだろうか。それまでに広域での検討を進めることは課題だろう。
 
 このイベントをきっかけに市原市の月出校舎等にアトリエを移した方も居るように聞く。房総半島の自治体はそのようなアーチストの発表の場を設け、活動資金を支えるために分担して作品購入を続け、全体として芸術的環境の底上げを進めることも検討すべきかとも思う。そんなことを考えながら自宅に帰ってきた。