予算審査の注目点
2023/03/15記
 昨日から始まった予算審査特別委員会は中日を終え、明日に終了する予定である。選挙直前で各委員が気もそぞろかと思っていたが熱の隠った質問もあり、毎日10時から17時前後まで質疑が続く状況である。田中議員が傍聴している以外に、本日は先月の立候補予定者に対する事前説明会に来られていた市民の方が傍聴に来られていたのが新鮮であった。私が「最近思う事」に記載した「選挙と政治を思う」を読んでの行動かどうかは確認していないが、予算に感心を持つことは嬉しい限りである。
 
 さて、今回の予算審査に当たり、私は予算が成立しても執行に当たって主に3つの点を変えるべきだと考えて質疑を続けている。その最初の注目点は土地開発公社の債務処理である。
 この件に関しては土地開発公社の代表も務める田中副市長に対して総体的事項の中で質問したので、その要約を下記に記す。


 7日の総務常任委員会で示された第6次土地開発公社経営健全化計画に関して公社の代表でもある副市長の見解を求めます。
 委員会の質疑では県内で土地開発公社をもつ自治体は10市で、独自の健全化計画を策定しているのは本市の他には柏市しかなく、健全化計画を建てても国や県から財政措置が執られるわけではないと解りました。令和4年度は想定以上に税収が増加するなどした結果、財政調整基金残高は瞬間的に50億円を超え、今回の予算成立後も40億円を超える額が残るなど、中期財政計画で目標としております30億円を大きく上回る状況です。
 土地開発公社の簿価額は13億2千万円ですが公社が金融機関から借り入れている金額は7億98百万円です。全てを簿価で市が購入した場合は土地開発公社に約5億円の余剰金が残りますが、公社には必要ない金額だと思います。
 従って公社が保有する債務保証対象土地、約6,265uを簿価より安い7億98百万円で市に売却すれば金融機関への返済は完了しますし草刈等の維持管理費が必要なくなります。また市も公社から購入した土地を民間に売却すれば固定資産税の歳入も期待されますし、住宅地となれば人口増加も期待できます。
 財政効果のない経営健全化計画に囚われることなく、財政調整基金に余裕のある令和5年度において一括返済と土地処分を実施するべきだと思いますが、副市長の見解を伺います。
 
 【田中副市長】
 本市では土地開発公社の第1次から第5次までの経営健全化計画を策定し、この計画に基づき計画実施前の平成12年度末簿価総額172億37百万円から令和4年度末簿価総額15億22百万円へと、22年間で157億15百万円の簿価を削減しました。更なる簿価の削減に向け、令和5年度から9年度までを計画期間とする、5年間で9億98百万円の簿価を削減する「第6次経営健全化計画」を策定します。策定にあたり令和5年度からスタートする「木更津市総合計画 第3次基本計画」において期間4年間で重点的かつ優先的に取り組む重点事業に位置付け、計画的に公社が保有する土地の買戻しを実行します。
 財政調整基金残高の考え方は、第3次基本計画における重点事業の査定にあたり計画4年間に取り組む事業として庁内各部各課から174事業、事業費総額347億13899千円の協議がされたが、「中期財政計画」との整合を図るため、優先度や緊急性、必要性などの視点で財源調整を行い、83事業、総額242億95万5419円まで絞り込み、重点事業に位置付けました。
 加えて、今後の財政需要については、少子化による子育て支援策の拡充や生活保護世帯の増加による生活保護費の増大、超高齢社会による医療・介護分野における給付の拡大など社会保障関係経費の増大が見込まれるとともに、老朽化が進む公共施設への対応や激甚化する自然災害への備え、具体化を控えている大規模プロジェクトなどへの対応も見込まれます。
 このような状況から、将来を見据えた持続可能な行財政運営を行っていくため、財政調整基金の計画的な活用を図る必要があると考えてます。従いまして、公社保有土地の買戻しは、引き続き毎年度2億円の予算を確保させていただきたいと存じます。なお、第6次経営健全化計画の実行をもって金融機関からの公社借入金の償還が完了することから、計画期間満了後の公社のあり方につきましては、その必要性等について今後十分に検討を進めてまいります。

 

 市は計画通りに行政を進めたい意向であるが、財政調整基金に余力のある来年度で返済を保障している金融機関に対して一括返済を行えば市の責務が完了するし、翌年度以降は毎年2億円の支出が必要なくなるし、購入した土地は翌年度に設置する財産利活用推進委員会で有効な活用法を審議して民間に売却することになれば土地売却収入がその年に入るだけでなく翌年度以降も固定資産税が見込まれ、翌年度以降には公社に対する利子補給費が無くなるるという、何一つ問題がない施策だと思われる。
 審査の中で会計室に対して歳入と歳出の時間差で財政調整基金を運用する額も聞いたが30億円で収まっているようであり8億円を買い戻すことによる財政運営への影響がないことも確認したし、仮に財政運営基金で足りなくても20億円を超える庁舎整備基金があるので今回で一気に8億円を使っても問題ないことを確認した。
 土地開発公社の問題は先週の総務常任委員会でも伝えており、補正予算で対応を求めるという趣旨で、敢えて副市長の答弁を求めたものであることを理解いただきたいと思う。
 
 次の注目点は来年度予算に散見される「個別施設計画策定業務」の執行方法である。この点も総体的事項の中で質問したので要約を下記に記す。


 令和5年度当初予算の各部に共通して計上されている「個別施設計画策定業務」について一括して伺います。金田地域交流センター(320万円)、市立保育園(360万円)、健康増進センター(350万円)、福祉会館(360万円)、老人福祉センター(230万円)、まなび支援センター(280万円)、キャンプ場(350万円)と多くの施設で計画されてますが、この業務の目的、金額の積算根拠及び発注は個別に行うのか、来年度から設置される資産管理部において一括して行うのか、伺います。
 
 【渡辺財務部長】
 業務の目的ですが「公共施設等総合管理計画」に基づき、個別施設ごとの具体の対応方針を定める計画として、点検・診断によって得られた個別施設の状態や維持管理・更新等に係る対策の優先順位の考え方、対策の内容や実施時期を定めようとするものです。次に、積算根拠ですが、各施設を所管する課ごとに、複数業者から見積もりを徴取したうえで予算要求がなされております。最後に、発注につきましては、現行と変更なく、各施設 所管部署で個別の発注と考えてます。

 
 施設の評価を個々に行う場合には、同じ視点で無いため、市全体としての優先順序が明確ではなく、所管課が急いで対応したい場所が、それよりも本来なら優先される施設より先に予算化される懸念が有りますし、そもそも建築技師がいない課では、老朽化を見落としたという責任を回避したい業者の言いなりになって必要以上に早い改修を求められるという危惧もあります。
 何より、一括発注による発注金額の低減と、発注・監督業務に係る職員の人件費の削減という効果を目指すべきだと思いますが如何でしょうか。
 
 【渡辺財務部長】
 個別施設ごとの長寿命化に関して各施設の管理所管課が、施設の特性や取組状況を踏まえつつ、メンテナンスサイクルの核となる個別施設計画を策定し、維持管理・更新等を推進しようとするものですので、各所管部署において検討、判断が進められるよう個別に予算計上のうえ、策定しようとするものです。
 

 別々の業者が個別のフォームで作成した報告書から市全体の計画に昇華させることは困難だと推定し、最初から今後の施設維持管理の全体像を描く資産管理部で所管することが職員の生産性向上に繋がることだと考えている。予算要求は現状のように各課でも構わないが、その成果品をどの様に活かすのかという視点は最初に持つべきだと私は考えるのである。
 なお、資産管理部が出来ることによって移管すべきものは他にも多く、例えば現在福祉部が管理している木更津駅のエレベーターと今後市道の一部として都市整備部が管理する予定で建設中の巌根駅のエレベーターは、他の建築物のエレベータも含めた保守点検業務として一括発注することでコストの削減と担当職員の手間の集約を目指すなど、業務改善を考えるべきである。
 
 3点目の注目点はシーリングの弊害である。継続事業は基本的に前年度の予算内に収めることを要求されているので、土木課の道路維持補修、資産管理課の学校施設改修、農林水産課の用排水路維持管理など市民要望が多い事項が充分な対応を行えない一方で新規事業として多くの予算が計上されている。私は千葉県誕生150年のアートフェスとして約8億7千万円のイベントを実施し、そのうち木更津市が6千万円を補助することと、用排水路維持管理に250万円の予算しか付けないことの優先順位を決めることは、文化に対する評価が個々に違うので難しい事は承知している。
 しかし、ハッキリしていることは細かい仕事を毎年行うことは職員の生産性を低下するだけだという事である。90mの工事を一度に行う手間とそれを30mに分割して行う手間では、明らかに後者の方が1/3の生産性になる。職員が限られているので仕事が出来ないという言い訳を良く聞くが、それは発注単位が無駄に細かいことで自らの生産性を低下させているためであり、実は職員が少ないのではなく予算を適切に配分していない弊害だと思っている。
 それだけでなく、工事が数年に渡って続く地元では、一度で済む交通規制が複数回になり、施行業者も規模の縮小により経費倒れに陥る可能性があり地元業者の育成に繋がることもない。
 
 シーリングのもう一つの弊害は、使用できなくなった学校のプールや住人の居なくなった市営住宅を解体する予算が充分にないことで、学校の校庭を広げられないことや市営住宅解体後の敷地利用が進まないことで、教育環境の改善が進まず、新たな歳入の期待も生じない事だと思っている。
 予算編成では、予算を拡大した事による職員の生産性向上の効果とか、予算を投入したことで得られる効果などを重視するべきだと私は思う。その様な方向に変えるため、明日も予算審査に臨まねばと考えながら生産性の低し深夜にHP更新の時間を割いている状態である。