駅前庁舎が白紙に
2023/05/24記
 先週末頃から不動産業界や建設業界の方々の間で飛び交い始めた噂である「叶V昭和が木更津駅周辺庁舎整備事業から撤退する」という件は私の耳にも届いていたが、金曜日の19日朝9時に事務局から送信されたメールによってその事実を確認した。
 
 その日の10時から開催された会派代表者会議で、伝えられた情報量だけでは解らないことが多すぎるので改めて所管する資産管理部に説明を求めたところ、本日11時より説明会が行われたので今回はその報告を行う。
 
 19日付けで叶V昭和から渡辺市長に届けられた書類は「木更津駅周辺の庁舎整備に向けた事業契約締結協議の終了につきまして」と題されたもので、令和4年3月1日に締結した協定書に基づく協議が期限である令和5年5月15日までに事業推進の決定が出来ずに事業契約の断念を行うというものであった。
 理由としては、@建築費高騰等で一体整備を目指していた市庁舎・共同住宅・駐車場の実現が困難となり当初計画と乖離すること、A事業用地として計画していた土地の地権者と合意に至らなかったこと、の2点が挙げられていた。
 
 それを受けて同日朝に市役所資産管理部から市議会議員に報告された情報は「木更津駅周辺庁舎の事業化の延期について」と題されたもので、上記の事業化に至らなかった理由を説明した後に付け加え、今後の方針として、@朝日庁舎周辺庁舎の整備は駅周辺庁舎の方針が決定しだい基本契約書を締結すること、A駅周辺庁舎の整備は駅周辺での整備を再検討すること、の2点が挙げられていた。
 
 
 説明会の通知は19日の夕方に議員に配布され21日の17時までに通告があった議員に対してのみ答弁を行う形式とした。その結果、齋藤高・佐藤・竹内・田中・鈴木の5議員からの質疑が行われた。私を含む羅針盤の7人から質問は行われなかったが、個人的には状況が急変したばかりで整理も間に合っていないだろうし、6月定例会で設置することを決めた市庁舎整備特別委員会で詰める方が内容が具体化しているだろうと考えてのことである。なお本日明らかになったことを個人的に整理すると下記の通りである。
 
@令和2年6月に策定した分庁舎を前提とした基本計画は変更せずに踏襲し、駅周辺での整備に向けた再検討を行うが6月定例会中に今後の方針を決定して説明する。
 
A事業化に至らなかった課題を調査・分析し朝日庁舎への全面移転案も排除せず整備手段を再度検討する。
 
B今回の影響で市庁舎の移転は少なくとも1年は遅れる見込み
 
C5月9日から営業を止めた西口立体駐車場は必要な予算措置が承認された後に設備の点検を行い再開に向け調整する。
 
D地権者とは基本的な合意は出来ていたので事業化に進んでいたが、一部の地権者と賃借期間及び価格などの条件面で交渉が完了しなかった。
 
E条件面が折り合い協力を取り付けていた地権者に対しては叶V昭和が事業化出来なかったことを連絡している。
 
F市民交流プラザについては駅周辺での整備を検討する。
 
G飛行場周辺まちづくり計画及び富士見通り無電柱化事業は予定通り進め、新庁舎オフィス環境整備事業は取りやめる。また事業化を前提としていた補助金の要望についても一旦取り止める。
 
H住民への周知はQ&Aを作成して配布するとともに必要に応じて出前講座なども実施する。
 
I駅前庁舎整備に関して木更津市が支出した事業費は下記の通りで全て委託費である。
項目 金額
庁舎整備事業費  21,340,000
駅前庁舎関連市道整備事業  32,332,000
市民交流プラザ整備事業費  14,806,000
合計  68,478,000
 これ以外にも駅前での整備を前提として業務を進めてきた職員の人件費や駐車場の休業による収入減なども計上できるだろう。この様な経費も含めて違約金が請求できるのかを検討し今後の業務を試算する。
 
 
 叶V昭和は優先交渉権を得た事業者で、他社が同様の条件で検討するならば、理屈上はその事業者と交渉を進めることで駅前での整備も可能であろうが、前に書いたように現実には複数の業者が応募したものの市の条件を満たした業者は叶V昭和だけだったことを考えると、当初の基本計画を変えずに駅前で検討するという方針は現実的ではない。
 また、木更津駅西口に庁舎を造ることでパークベイプロジェクトと連携し回遊性を高め活性化を図るという理想は理解できるが一部の地権者の対応は地域の活性化より自己の都合を優先しており、西口の活性化に向けて地域が一体化してはいない、という課題が改めて明確になったように見える中で「西口へ」という要望に応えることは難しい。
 早期的な解決を図る現実的な対応は、朝日庁舎への全面移転であり、この際に分庁舎の解消もするべきではないか、と個人的には思うのである。ただし、今まで想定していなかった全面移転となった場合もイオンが引き受けてくれるのか、また建坪率や容積率などの敷地条件などに法的な問題は生じないか等もクリアしなければならない課題である。
 
 これらのことを6月議会のうちに定めるというが、具体的な日程は遅くとも来月28日の本会議最終日となる見込みなので残りの期間は一ヶ月しかない。現在の駅前庁舎が入る西口再開発ビルの建設に当たり苦悩して追いつめられていった職員が多くいたことを思い起こし、負の歴史が繰り返されないことを願うばかりである。