社会実験を危ぶむ
2023/06/23記
 私が今回の一般質問で通告していたアクアラインのロードプライシングについて、偶然にも質問の当日である18日の朝刊で千葉日報や読売新聞等が実施を報じていたが、21日に国土交通省道路局高速道路課・千葉県県土整備部道路計画課・東日本高速道路鰍フ連名で正式な発表が行われ、議員にも情報提供があった。
 繁忙期になる夏休みには社会実験が実施されると言う噂を聞いていたがタイミングが良すぎて仕込んだように思うが、この質問を行うと決めたのは連休明けのことである。大した問題ではないが個人的な時系列を整理すると次のようになる。
 
 5月10日 議会質問に向けた事前協議開始
 5月29日 一般質問通告
 6月17日 ロードプライシングを行う旨の報道が流れる
 6月18日 一般質問当日(新聞での報道)
 6月21日 公式な発表(内容はこのとおり
 7月22日 社会実験開始(〜令和6年3月31日)
 
 因みに、議会で問いただしたのはロードプライシングの内容ではなく、それを始めることによる問題の回避という視点である。質問の関連部分は下記の通りで、6月定例会の質問と答弁の全文についてはこちらを参照いただきたい。 
 
 【私の第一質問】
 中項目2点目として「渋滞対策について」質問いたします。
 小項目1点目として通行料金の設定についてお聞きいたします。アクアラインの交通量は配布資料3に示すように昨年度は日平均で5万台を越えました。休日の午後ともなるとアクアラインから金田周辺の生活道路まで激しい渋滞が生じており、この解決策として渋滞する時間帯の通行料金を高額にして空いている時間帯へ交通の分散を図る制度とされるロードプライシングを導入しようという話が今朝の朝刊にも載っていました。私も基本的に賛成ですが、例えば800円と1600円のように2段階の料金に設定した場合、料金が安くなる直前まで料金所の手前で停車するものが増え、新たな渋滞を招くことが危惧されます。アクアラインを800円で通過できる車両はETCを車載していることが前提ですので、料金は一円単位で変更しても収受に手間を執ることが有りません。新たな渋滞問題が発生しないよう、関係機関に求めるべきかと思いますが、当局の見解を伺います。
 
 【渡辺市長の答弁】
 「通行料金の設定」について でございますが、金田地区の渋滞対策につきましては、東京湾アクアラインの交通量の分散化・平準化に向けた取組を行う必要があると考えており、この取組として、ロードプライシングの社会実験が実現できるよう、県や南房総地域の関係自治体と協議を進めてまいりました。議員おっしゃいますとおり昨日、また本日、今年の夏の試験導入の話がありましたが、導入が具体化される場合におきましては、効果的 かつ 合理的なものとなるよう、関係自治体等と調整してまいります。
 
 【私からの要望】
 通行料金の設定については、ロードプライシングの導入の結果、料金が安くなる時間を待ち料金所手前で待機する車両による渋滞の発生といった、ロードプライシング導入による弊害を抑止すべきと考えて質問しております。東日本高速道路株式会社でも検討するとは思いますが市からも強くその危惧をお伝えいただければと思います。
 今回の社会実験で評価できるところは渋滞が顕著である土日祝日の上り線についてだけ料金変動を行い、それ以外は現在の料金を変えないことと、料金を高くした後には現行より低い料金の時間を設けたことである。特に後者については安くなるまで房総半島に居ることで夕食を食べるなどの経済効果を期待させる点が好感を持てる。
 しかし、全体を観ると効果に疑問な点や質問でも述べていた『ロードプライシング導入による弊害』が気になる点も多い。
 具体的に指摘するため、先ずは今回の社会実験で設定された土日祝日の上り線の料金体系を記載する。
 
時刻 軽自動車 普通車 中型車 大型車 特大車
0:00〜13:00 640 800 960 1320 2200
13:00〜20:00 960 1200 1440 1980 3300
20:00〜24:00 480 600 720 990 1650
 
 これをグラフにすると下図の通りである。
 
 問題として感じるのは、軽自動車と普通車の増加分が400円以下に収まっており、本来の目的である料金を高く感じさせることによる心理的効果が発揮されないと感じる点である。その逆に大型車両での格差は大きく、特に特大車では20時で一気に1,650円も通行量が下がるため、質問で危惧したように料金所の手前に大型車両が列をなして停車し、それが渋滞に拍車をかけることである。
 
 私の代案は、まず料金抵抗を車種区分に関わらず一律1200円とし、普通車の料金を2千円にすることである。その逆に誘導すべき夜8時以降は一律300円を値引きすることで車両に関係なく料金格差を1500円の大きさにしてお得感を強くすることである。ただしこの料金格差が一瞬で来ないように、料金変動は6秒あたり1円若しくは1分あたり10円で変動させ、1200円の値上げには120分を要するようにして、1500円の料金差には150分を要する設定とすればよい。底値まで待つ人もいるだろうが有る程度安くなれば料金所を通過する人も居るだろうから渋滞は激しくならないと予想される。その料金体制をグラフにすると下図の通りである。
 
 問題なのは解りやすい料金表には成らないと言う点だろう。私なりに整理すると次の様になる。
時刻 軽自動車 普通車 中型車 大型車 特大車
0:00〜12:00 640 800 960 1320 2200
12:00〜14:00 変動料金帯(6秒あたり1円増加)
14:00〜18:00 1840 2000 2160 2520 3400
18:00〜20:30 変動料金帯(6秒あたり1円減少)
20:30〜23:30 340 500 660 1020 1900
23:30〜24:00 変動料金帯(6秒あたり1円増加)
 
 市役所には今回の社会実験で懸念される夜8時前の渋滞が多発するようなら来年3月末の期間終了を待たず、料金体系を見直すように協議して欲しいと要望しているのであるが、今回の社会実験は国と県とJHが主体で行っており、市には事後報告が来るだけのようだ。市が県や国にもの申すことが難しいので有れば交通政策特別委員会が主体となって国土交通大臣と千葉県知事に対し議会の意見書を出さねばならないかも知れない。
 今回の発表の内容を見ながらその様な事を考えていた。