東電の写真が届く
2023/11/04記
 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業を先月末に視察したことは既に記載済みであるが、テロ対策等のためで構内には携帯電話及びカメラ・ビデオ等の持ち込みは禁止されており、同行した東京電力の職員が撮影したデータを後日入手する事になった。
 一昨日の夕方に災害ボランティア議員連盟事務局から届いたメールはクラウドにアップしたものを入手する手続きが示されていたが、出かける直前で先送りをして、昨日オーガニックシティフェスティバルから帰って斜視を見させていただいた。
 視察に参加した他市の議員が大きく移る写真を断りもなく使うことは問題だろうと思い、膨大な写真から4枚だけを入手させていただいたのでその報告をさせていただく。
 
 最初の写真は映像でも有名になった水素爆発で破壊されたままの1号炉である。同様に破壊された3号炉と4号炉は作業用の上屋が設置されており、12年前の状況のままであるのはここだけである。廃炉見学はこの位置にバスを停めて下車して見るのである。
 右側に茶色く溜まっているのは破壊された建物の鉄骨等で、この下に使用済み燃料が入ったままであり放射線量が危険なほど高く、動かすことで放射性物質が拡散しないように覆いを造ってから作業する計画になっているという事である。写真下に見える灰色の部分はコンクリート吹き付けをした土手部分である。バスを停めて降りる瞬間のバス内の線量は30.4[μSV/h]であった。
 
 バスを降り高さ70cm程度の土手を越えた先の「ブルーデッキ」では写真に示すように64.5[μSV/h]まで一気に線量が上昇した。バスからは5m程度しか移動していないが土手が放射線を遮っているようだ。デッキから1号炉までの距離は100m程度である。
 足元には作業用のクローラクレーンが停まっており、1号炉との距離は20m程度である。その周辺では長時間作業は難しいだろうと思ったが、クレーンの運転者は防護服を付けていなかった。
 
 この写真の中央が私である。後ろにはクレーンと1号炉、右側には上半分を解体した1号炉と2号炉の供用煙突が見える。水素爆発の時に煙突の一部が損傷し、撤去作業中に倒壊するような事態にならないよう安全側に撤去したという説明であった。
 私はスーツの上に東電が用意したベストを着用し、その左側の胸ポケットには線量計を入れてある。この距離で見学したのに被曝量は極めて軽微であった。
 
 最後の写真はペットボトルに入ったALPS処理水を持つ東電職員と目前で話を聞く谷会長である。前回も記載したようにトリチウムからのβ線はペットボトルの壁を抜けることが出来ないので希釈前の水でも安心して持つことが出来るとされ、多くの議員が実際に手にしていた。
 ALPS処理水は無色透明であるが、核燃料が溶融して原子炉の下に落ちた「デブリ」に接触して冷却している水は上の写真の左上に示されているように焦げ茶色の液体であり、致死量レベルの放射線を発する液体で、それを現場では「汚染水」と呼んでいる。従って国会で「汚染水」と「処理水」を間違えることは現場の定義からすると許容できない間違えだと理解した次第である。
 
  最後に中間貯蔵エリアから見た福島第一原子力発電所をアップする。左側から1号炉、2号炉、丸い上屋が乗った3号炉、平らな上屋で覆われた4号炉である。安倍元総理が2013年にリオデジャネイロのIOC総会で「the situation is under control」と発言したことが物議を醸した。現在はデブリ撤去等の困難な局面を残しているものの、確かに制御されている状況であった。しかし廃炉と中間貯蔵の現場で毎日1万人近い人々が、国力を高めるためではなく、マイナスをゼロに近づけるために懸命に働いている。
 原子力という技術は人類には早すぎたのかも知れないと思いながら視察を終えたことを写真を見ながら思い出していた。