水道料金の値上げ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2023/11/07記 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
本日開催されたかずさ水道広域連合企業団議会において「かずさ水道広域連合企業団水道事業給水条例の一部を改正する条例の制定について」という議案が上程された。解りやすく表現すれば水道料金の値上げである。議会に先立ち議場の入り口で水道料金を上げるな、とシュプレヒコールをしていた団体が居たようであるが、開催15分前に到着した私は目撃することが無かった。 電力や薬品といった物価上昇の影響で今年度の水道事業は赤字予算で組み立てられており、来年度からの料金値上げは避けて通れない状況である。統合10年目の料金統一までは各市の単位(セグメント)での独立採算で計算することが統合のルールである。料金改定を行わない場合は君津市が令和5年度から、袖ヶ浦市は令和8年度から赤字になることが試算され、富津市では令和4年度から既に赤字になっている状況で繰越留保資金を取り崩す状況に至っている。令和6年度から令和10年度までの事業費等を算定し国の交付金等を活用したうえで赤字とならない「必要改定率」を算出したところ君津市では23.10%、富津市では26.15%という大幅な料金値上げになることが明らかとなり、改定率に対して構成する自治体の同意が得られず議会への提示ができない状況も続いてきたのである。なお、木更津市では令和10年度までは赤字にならないことが試算され今回の料金改定で木更津市だけは変更されないことになった。 結果として市民生活への影響を削減するため三市が一般会計から「営業助成補助金」を拠出することで値上げ幅を削減することになり、下表に示すように平均改定率が決められた。 |
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なお、営業助成補助金の単位は百万円で来年度から歳出が始まる君津市と富津市では債務負担行為が設定されたが令和8年度以降から支出が予定されている袖ケ浦市では議会に示されたのか否か私は把握していない。 水道料金は不定期に値上げが繰り返されており、平成15年以降の料金改定は次の通りである。なお()内が平均改定率として示された値である。 ・平成16年7月 木更津市(13.37%) ・平成22年6月 袖ヶ浦市( 2.60%) ・平成28年4月 君津市(16.62%) ・平成30年2月 富津市(10.74%) ・平成31年4月 袖ヶ浦市( 9.94%) この「平均改定率」は供給単価の比較で、上表に示された今回の改定では今年度決算見込みと来年度の予測値を比較している。供給単価は料金改定が行われなくても単価の高い大口需要者の消費が増えれば値が高くなるように変動する。なお平成15年以降の値は下表のように推移している事が議会で示された。 |
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平成30年までは各市の水道事業で、令和元年以降は広域連合企業団としてのセグメントの値である。上表をグラフにすると下図の通りである。 富津市は一貫して最高額で、袖ケ浦市は地域最低額であったものが今年度から木更津市より高くなっている。平成16年から27年までは君津市が木更津市より安かったものが今回の改定で大きく差が開く事態となっている。しかし令和10年の改定は君津市に近い値で統一される見込みなので、富津市は値下げ、木更津市は大幅な値上げになるのである。木更津市が低下傾向にあるのは大口需要者が減少したためか、人口増加に伴って単価の安い一般家庭が増えたためかは明かではないが、多分その双方だろう。 今回の改定事案に関しては各市の経営判断が終わっており、各市から3人の有識者が選ばれている水道審議会も了承しているので議案としての反対はしなかったが、料金表は富津市が二本立てで有ったものを統一するような改正が行われているものの、基本的に各セグメントが今まで使用していたものを微修正した程度であり統一に向けた激変緩和措置にはほど遠いもので残念であった。 料金については前に考察したように明確なルール(あるいは哲学)が求められるべきで、今回の富津セグメントの150mmの基本料金が「別に定める」という文字を表に記載するべきではないと思う。なお改定後の管径別基本料金は下表の通りである。 |
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木更津市は大口径の基本料金が極端に安く、極端に高い君津市との差は150mmで7.4倍に開いている。君津市も極端に高いことは理解しているようで125mmと150mmは今回の改定でも値上げしなかったが75mmや100mmは値上げしている。木更津市は赤字にならないので値上げしないというのが今回の改定方針であったが、個人的には激変緩和措置として50mm以上の基本料金は値上げするべきであったと思っている。 基本料金は管径の8/3乗に比例するべきだというのが私の結論なのであるが、解りやすいのは断面積との比較であろう。上表を元に単位面積あたり基本料金を算出したものが下表となる。 |
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これをグラフにしたものが下図であり、富津市と袖ケ浦市は比較的断面積に比例していることが解る。 富津市で設定のない150mmも100mmと同じ17.6円/mm2で設定し310,860円を表記すれば良かったのにと思うのである。 木更津市は管径が大きくなるほど単位面積あたりの単価が落ちるという、市民より企業に優しい料金設定である。基本料金が安いので災害用に接続しておき、通常は井戸を使用するという大口利用者が多いこともこれが一因かと思っている。 単価が例外的に高い値と成っているものは四市とも13mmであり、今後は一般家庭でも20mmを基本にして誘導していくためであると聞いていたが、我が家の近くで新築した家が水圧低下を理由に20mmでの給水が認められず、13mmで給水した上に水槽の設置が指導された例もある。市街化調整区域での住宅増加が原因でもあるが、今時それでよいのだろうかとも思う。 使用料金にも今回の改定で問題を感じている。改定後の料金表は下表の通りで、特に富津市の大口利用者は使用量が321m3を越えると1m3あたり610.5円を支払わねば成らなくなる。木更津市の最大料金である517円が高いと感じて井戸利用に走る利用者が多いことを考えると、この値は自殺行為であると思う。 |
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これもグラフにしたものが下図であり、横軸の使用量は対数グラフとしている。 富津市では最高額が高いだけでなく、最高値に達する使用量の少なさも突出している。木更津市では1000m3を越えると最高値になるものがその1/3以下で最高値に達してしまうのである。令和11年度からの料金統一ではもっと低い値に成るだろうと推察するが、その間に井戸業者が富津市や君津市で営業をかけまくる事は容易に想像される。その対策として何らかの条例が必要ではないかと思うのだが、企業団にはその備えはまだない。 今回の議会では多くの傍聴者が居たようであり、今後も様々に争点になってくるものと思う。コンセッション方式を採用せずに持続可能な水道事業を維持するために、統合による合理化を更に推し進め、市民負担を下げる努力を弛まなく続けねば次の改定が理解されることはないだろうと思うので議会としても注視を続けたい。 四市で14箇所の市民説明会が行われる予定であるが、どの様な議論になるのか気にしながら、とりあえず今回の記載としたい。 |