税率の設定に思う
2025/02/14記
 毎年、自分の誕生日の前頃には確定申告の整理を行っている。途中でしっかり整理しておけば良かったと毎年思いながら仕事をするというのはいつもの展開である。
 26歳で日本道路公団を辞めてから青色申告を始めたので今年で35年目に成っているが、私の所得の内容や税の制度が毎年少しづつ変わっているので前年踏襲というわけにはいかない。昨年は不動産の売却で分離課税という申告を初めて経験したし、今年は個人年金の支給を受けたり定額減税制度が導入されたりと変化している。そのため税務署から送られてくる手引きを読み込み、前年度まで使用していたエクセルシートの計算式を修正させる必要があるのか内容をチェックするのも大変なのである。
 
 さて、その様に手引きを読み込むことで税の制度の一部が見えてくる。国会では前に書いたように103万円の壁を見直す議論が進み来年の納税の際には大きく制度の修正があると想像される中で、現在の制度では税率の設定と変化点が数学的に美しくないことも併せて修正してほしいと思うのである。具体的には下表の通りで所得・控除額・税額の単位は千円である。計算上は所得が千円から計算することに成り、その場合の税額は50円である。
所得 税率 控除額 税額 実質税率
1 5% 0.05 5.0%
1,950 10% 97.5 97.50 5.0%
3,300 20% 427.5 232.50 7.0%
6,950 23% 636.0 962.50 13.8%
9,000 33% 1,536.0 1,434.00 15.9%
18,000 40% 2,796.0 4,404.00 24.5%
40,000 45% 4,796.0 13,204.00 33.0%
 695万円を超えると20%であった税率が23%にへと3%ほど増える一方、900万円を超えると23%が33%になり一気に10%のアップとなるのである。実際には変化点を超えた額に税率が適用されるので後者の場合で所得が950万円の場合は50万円だけが税率30%になるので税額は159万9千円、実質税率は16.8%となる。税金の連続性は保たれているものの変化の程度がいかに美しくないかは下図を見ていただければ理解できると思う。
 
 
 
 グラフは横軸が所得で単位は千円、図では対数目盛りで示している。縦軸は税率を示し青色の線が租特に対する税率、オレンジの線は納税額を計算して所得で割り戻した実質税率である。青色を見てわかるように、いかにも登りにくい階段である。
 
 そこで税率を5%刻みで現行の45%を上限になるように設定して変化点を10万円単位で任意に設定したもの(A案)が下表である。
所得 税率 控除額 税額 実質税率
1 5% 0.05 5.0%
2,000 10% 100.0 100.00 5.0%
3,000 15% 250.0 200.00 6.7%
4,500 20% 475.0 425.00 9.4%
6,800 25% 815.0 885.00 13.0%
10,200 30% 1,325.0 1,735.00 17.0%
15,300 35% 2,090.0 3,265.00 21.3%
23,000 40% 3,240.0 5,960.00 25.9%
34,500 45% 4,965.0 10,560.00 30.6%
 変化点の設定においては200万円を基準にして、1.5倍程度に増えていくという計算式で求めたので45%の最高税率になる所得額が3450万円になってしまったが実質税率には大きな変更はないように設定した。同様に図示すると下図の通りである。
 
 
 
 さらに所得が低い人にとって税率の変化が5%刻みであるという発想も見直し、小数点1桁の単位まで税率を細かくすると想定し、最初の税率を1.5%として約1.6倍程度に増えていくという計算式で求めたもの(B案)が下表である。 
所得 税率 控除額 税額 実質税率
1 1.5% 0.02 1.5%
400 2.3% 3.2 6.00 1.5%
600 3.5% 10.4 10.60 1.8%
1,000 5.3% 28.4 24.60 2.5%
1,600 8.0% 71.6 56.40 3.5%
2,600 12.0% 175.6 136.40 5.2%
4,200 18.0% 427.6 328.40 7.8%
6,700 27.0% 1,030.6 778.40 11.6%
10,700 40.5% 2,475.1 1,858.40 17.4%
30,000 45.0% 3,825.1 9,674.90 32.2%
 この場合は45%の最高税率になる所得額が3000万円になってしまったが高額納税者の実質税率には大きな変更はないように設定したつもりである。同様に図示すると下図の通りである。
 
 
 
 さらに前に書いた自分の計算式も検証してみた。具体的に提案した数式は
 
 税額等=α×(収入額/β)^γ
       若しくは
      δ×収入額
       の少ない方の値
 
 である。容易に計算出来るようにするためγは2とし、現在の最高税率を踏襲するためδは45%とする。βも計算しやすい10万円として1千万円の所得のものが現在の実質税率に近いようにαを設定すると概ね0.2となる。このモデル(C案)では納税額が一気に求められるため「税率」とか「控除額」という概念が無くなることが特徴であり、表で表す必要もなくなるのである。ちなみにグラフ化すると下図の通りである。
 
  
 所得が2250万円に達すると税率が45%の上限値となるので、所得が1千万円から10億円の世帯の増税感は厳しいことになるだろう。1億円の所得の人の実質税率が5%違えば税額は500万円も差が生じるのである。数式にもう少しの工夫が必要かとも思うが高額所得者は応分の納税をしてもらいたいという強い意志の現れている数式とも表現できる。
 
 これらの案で百万円、5百万円、1千万円、1億円、10億円の所得の人の実質税率を求めて比較したものが下表である。
所得 現行 A案 B案 C案
200万円 5.1% 5.0% 4.4% 4.0%
500万円 11.5% 10.5% 9.4% 10.0%
1000万円 17.6% 16.9% 16.7% 20.0%
1億円 40.2% 40.0% 41.2% 45.0%
10億円  44.5%  44.5%  44.6%  45.0%
 
 市議会議員には税制を決める権利はないし、数字に美しさを要求しているものは殆どいないことは解っている。しかし納税の計算を行っていると個人的には気になって仕方がないのである。課税控除額を取り払うとともに低所得者に優しい納税モデルに変更することで根本的な解決を講じるべきだと思いながら、週明けには申告書を提出しようと考えているのである。