自治会の加入促進
2026/09/08記
 今回の9月定例会で多くの議員が頭を悩ませている事案が今定例会に連合区長会から提出された「自治のまち木更津市自治会等の加入及び参加の促進に関する条例の制定に関する陳情書」に対する議決行為だろう。
 連合区長会からの提案ということは形式的には市民が要望していることであり、私を含む多くの議員が自治会加入率の低下を危機と捉え自治会の活性化に関する取組を進めるべきだと一般質問等の場を通じて提言しているように原則的には賛同する案件である。自我自存すれば令和6年6月議会における私の質問が最も先鋭して自治会への加入を呼びかけていただろう。
 ともあれ本日の教育民生常任委員会においてその陳情が行われたので思うところを記載する。
 
 陳情者は連合区長会長である岩根東地区代表でもある青木さんと連合区長会の理事にして私と同期で私が議長の時に副議長として支えて頂いた国吉元市議である。本日の議会には金田地区区長会長の大村元市議も傍聴に来ており、心なしか空気が重く感じられる。
 陳情書には埼玉県川口市の事例を引用した条例案も付けられており、国吉氏の調べでは全国で75の自治体が同様の条例を策定しているという。全自治体に占める制定率は4.3%である。
 市役所で所管する市民活動支援課では執行部上程とした方が速く提案できると提案したものの陳情者は議会が市の法務担当と協議を進めればより早く条例化が可能であり、改選前の来年3月議会までの制定を目指して欲しいという。10年程前に斉藤高根議員が中心になり制定した「木更津産米を食べよう条例」は僅か7条という短い理念条例であるがパブリックコメントなどの手続きを経て6か月を要していることは国吉氏も当時議員であったので理解していながらの発言である。
 
 条例の目的は、市民が自治会に加入する意識づけである、という点には何も異論はないのであるが、既に改選まで約半年となった段階で多くの課題を整理して木更津市議会として恥ずかしくない条例を作ることが出来るのかという点であり、委員会としては悩みながら趣旨採択の動議が重信議員から出されて可決された。
 なお堀切議員からは条例が出来ることにより住民には自治会費の負担が増えること、未加入者がゴミ処理が困難になる恐れがあること、自治会長が自治会加入拡大に追われる可能性があること等を列挙して反対討論をしたものの、そのような危惧があるなら委員会の中で質疑すればよいのに討論まで黙っているのも如何なものかと感じていた。
 
 自治会は任意団体であるために条例化するまでに整理しておくべきことを個人的に列挙すると次の通りである。
 
1. 加入すべき対象の自治会
 新興住宅地では住居毎に自治会が編成されているので加入する対象は明確であるが、同じ大字でも自治会が異なる事例は多い。矢那や桜井では複数の自治会に分かれており、江川区は岩根一丁目や久津間の住所の自治会員も多数存在する。久津間の住所の中に久津間住宅自治会が有ったり高柳という住所で西山区が有ったりと、どこに加入するべきか市では判断できない状況なので、それを地図上で整理して良いのかという課題はあるだろう。更には自治会が解散して空白区になっているところに自治会を復活させることが可能かという問題もある。
 
2. 自治会としての負担範囲
 自治会活動で基本的なゴミステーションの維持やごみゼロ運動などの他に、消防団活動の支援や市の代わりに簡易な公共事業の実施といった各所での個別の自治会活動には内容の差が大きい。未加入者が加入してその全てを負担することが妥当と思わせることが行政に可能なのかという課題や自治会が主催する神社の祭礼のように政教分離の課題は生じるだろう。
 
3. 自治会費の支払い
 税金は義務的な支出であるが地域によって差が大きい自治会費の妥当性が自治会の総会で審議される状況の中で、それぞれの自治会が決めた金額を支払うことに対することを条例で求めることが妥当なのかという議論は堀切議員の反対討論でも出されていたように無視できない課題であろう。
 
4. 自治会加入者の対象
 陳情者の条例案は住民とともに集合住宅などを営む事業者を対象としている点は評価できる。賃貸住宅の居住者は特に地域との繋がりが薄く自治会加入しない場合が多いので事業者が入居者の加入に責任を持つということは有効で、家賃に自治会費を上乗せして徴収して支払っている事例も知っている。西山区では居住していないが日常的に存在している法人も法人会員として自治会に加盟してもらい様々な協力を得ているという好事例もあり、単に自然人だけを対象とした条例とするのが妥当なのか議論が必要だろう。
 
5. 自治会の規模
 木更津市内には資料に示すように650世帯を超える大きな自治会から一桁しかいない小さな自治会まで様々である。大きな自治会になるほど民生児童委員を始め多くの人材供給を行政から求められるが小さな自治会では行政からの依頼は少ないだけでなく市政協力員として大きな自治会に比べ一人当たりでは多くの行政負担を得ている実態がある。自治会未加入者が数軒で集まって新しい自治会を登録し、実態として何も市政に協力しない状況の乱立も認めるのかという点は整理しておくべき課題である。
 
6. まちづくり協議会との分担
 自治会は住民の任意の集まりに留めて行政からの依頼を全て辞めてしまい、多くの事項を全てまちづくり協議会に依頼するという方法も考えられる。対象範囲は広くなるが人間関係は希薄になり多くの志の高い人材を見落とす可能性が考えられるし、顔見知りの範囲ではなくなり災害時に弱者の救済活動が可能なのかという心配もあるが、自治会に委ねる項目が多すぎることが問題なので、一定の役割を自治会から引き上げることは重要だと思う。
 
 委員会審査の中で市役所としては制定率の低さをどう考えているかと質問した議員に対し、理念条例だし罰則もないから無いよりいい程度に感じる答弁がなされていたように、行政当局として積極的に自治会員を増やそうとしているのか疑問である。既存の自治会を上手く使って行政事務の負担を減らそうとしているだけなら持っての外である。確かに条例を制定した市に問い合わせた結果として自治会加入率が上昇したわけではないことは解るが、精神的な支柱は必要であり、その手法としての条例は有効だと私も思う。
 
 木更津市では制定していない自治基本条例の中で自治会の意味を高らかに謳い、加入や参画を促すという構造が望ましいと思いながら今回の議会報告としたい。