74.1月中旬の活動記録
 11日は朝食を摂り成就寺の駐車場に車を停め駅を越えて東口の高速バス停に集合し交通政策特別委員会の行政視察に出発する。松山空港行きのJAL433便は羽田空港10時発であるが、搭乗口からバスで駐機場まで移動し、機体がD滑走路を離れたのは30分後となった。正月の飛行機事故の影響ではないだろうが羽田の混雑を実感する。朝の木更津駅前では北風が冷たかったが降り立った松山空港は無風で晴れて暖かく、南国を感じながらバスで松山駅前に出て昼食を摂った。
 予讃線の特急で今治駅に着き駅前に建つ宿泊するホテルに荷物を預け市役所まで歩いて向かう。市役所は丹下健三設計で1972年に建てられたものだが古さを感じさせない設計の力には感心する。木更津市の駅前庁舎も自前とするならデザインは重要だと感じる。
 帰宅して調べてみると丹下健三氏は小中学校時代を今治市で過ごしており、他にも公会堂や市民会館など7つの建築物が残っている街で建築に興味有る視点で街歩きも楽しそうだと思う。それはさておき、我々は議会の委員会室で山岡副議長の挨拶を受けてから行政視察を開始した。
 
1.愛媛県今治市
 市制施行 平成17年1月16日(旧今治市は大正9年2月11日)
 人口 149,958人(令和5年12月1日現在)
 面積 419.14km2
 令和5年度一般会計当初予算額 752億5千万円
 財政力指数 0.51 (令和4年度)
 視察項目 公共交通施策について
 今治市では運転手不足により採算の合わない路線からの撤退をバス会社から打診され、令和4年4月から朝倉地区と吉海地区でバスの代替交通機関として乗合タクシーの運行を始め、令和5年10月からは玉川地区が加わった。先行する2地区の運行に先立ち地域の方々でワークショップを開催して決定したものの域外の病院までの路線が極端に利用が少ないなどの課題が見られ朝倉地区の実利容赦は月に6〜10人と低調であった。そのため玉川地区では事前に移動動向を調査しダイヤの増強や乗降場所の増加、路線の拡大などで需要を喚起している。この乗合タクシーは基本的な運行時刻が決まっているが、大三島の上浦地区では、令和5年1月から会員登録を行ったものがAIを使用したオンデマンド型で営業時間内(8:00〜15:00)の好きな時間に利用できるサービス「チョイソコおおみしま」を県から引き継ぐ形で運用している。オンデマンド型の方が使い勝手が良いのであるが下表に示すように運行委託費が高くて、行政の持ち出しが多く、運行会社である株アイシンとの契約終了後には乗合タクシー型に移行することも検討しているようだ。
項目 地域 朝倉 吉海 玉川 上浦
収支 バス補助金  4,409,899  4,979,720  35,772,211  7,529,978
委託費 308,380 2,071,440 2,400,000 13,000,000
スクールバス 0 3,500,000 11,000,000 5,500,000
削減額 4,101,519 -591,720 22,372,211 -10,970,022
料金収入 34,200 423,600 240,000 0
備考 R4実績 R4実績 R5見込 R5見込
便数 廃止前バス 10 9 15 -
乗合タクシー 3 4 6 適宜
増減 -7 -5 -9 -
 便数もバスからタクシーへの移行に伴い大きく減らしているが住民からの不満も多く、朝倉と吉海地では6便/日程度に増便することを検討しているようである。タクシーでは通学の需要を満たすことが出来ないので別途スクールバスを導入しているが、それでも玉川地区のように路線バスの補助に比べると削減効果が大きく出ている場所もある。市内の他路線や他地区でのタクシー移行について質問したところ、財政効果が出る場所では進めたいところではあるが地域の意向を取りまとめるマンパワーが市に足りず、バス会社から廃止を打診された地域を後追いしている形になっているようだ。木更津市でも補助金が大きくても乗車人員の少ない路線が多いので今後の検討に値する内容だと考えた。
 また今治市の中心市街地ではコミニュティモビリティ株が運行するAIを使用したオンデマンド型の「mobi」が社会実験として運行されている。8時から21時までを8人乗りの車3台で運行しており、現在は乗車料金300円か月5千円での乗り放題の何れかが選択できるもので、後者が利用者の58%を占めている。
 運行会社の中間報告では月に2400人程度の利用があり、年齢の内訳では20代から50代が利用者の70%となるように高齢者の足だけではなく市民の移動手段として広く利用されているようだ。目的としては買い物や外食での利用が多く18時以降の利用が減るという傾向も見えている。人気は高いのであるが現在の利用状況では採算が合わず、料金改定や公告料による収入増を目指しているということである。今治市は財政支援を行っておらず、現在の収支不足額も把握していないということであった。既に市民の足として浸透しており、行政としても利用拡大に向けた支援を続けていくということであるが、社会実験が終了した後に自治体が委託する場合はどの程度の委託料になるのか、今後の展開も注視したい。
 
 約2時間の視察を終え、議場も見学させていただき市役所を後にしてホテルに戻る。サイクリストの聖地といわれているしまなみ海道の起終点なので駅前にサイクルショップや貸し自転車も多い。余裕が有れば自転車で来島海峡を往復したいと思ったが、行政視察委はその様な時間は用意されていないのである。それでも今治焼き鳥を食べながら委員での情報交換を行い、繁華街が賑やかではない今治の夜は更けていった。
 
 12日はガイアの夜明けでも取り上げられた「mobi」の利用体験を行う。委員と職員の合計が8人であるので1台で収まるのも有り難い。携帯のアプリでは3台が何処を運行しているか見られ、手配も現在地と目的地と人数を入れるだけで簡単である。mobiが今治で実験を始めたのは元日本代表監督の岡田監督が率いるFC今治(現在J3)の活性化を求められたからだと聞いているので、そのスタジアムを見学し、街中に戻るように乗車して運転手さんからの聞き取りも行う。
 
 タブレットで配車してから10分程度で車は到着する。市内には停留所として定められている場所があるが実際に看板が出されているわけではない。運行は地元のタクシー会社へ委託されており、導入に当たってバス会社やタクシー会社からの大きな反対はなかったようだがmobiの停留所はバス停と別に設定してバス待ちなのか解るようにして欲しいという意見が出されたようだと昨日の視察では聞いている。運転手さんに聞くと現在の利用状況では相乗りになることは少ないが、相乗りになったお客さんが寄り道することで「急いでいるのに」と苦情を言うケースに遭遇したことがあるということであった。予約が入っていないときには何処かで待機していることもあるし次の予約が入りそうな場所に移動することも有るようで、そこまでAIは指示していないようだ。また走行するルートもナビでは推奨ルートを示すが運転手さんが走りやすいと思うコースを通っても良いようであるし距離別料金でないため問題にならないようだ。
 週末の日中の混雑するイベントに利用することで駐車場を探す手間が省かれ、昼間から麦酒を楽しめるというような利用も多いようだ。昨日の視察でも市の職員も夕方の懇親会の会場への移動に利用し、帰宅は通常のタクシーを使用するように使い分けをしているらしい。利用してみると便利であり、導入コストが解らないが路線バスの空白地が多い我が市にも欲しいサービスだと参加者一同が実感して今治を後にした。
 松山空港は曇っていたが昨日と逆に関東は晴れており南風が強いというアナウンスが機内に流れた。翼の上であるが窓際の席であったので羽田空港への着陸ルートとして新たに設けられて都心上空通過を始めて経験して窓の外のビル街を楽しみながら空港に戻り、木更津に帰った頃に日が暮れた。
 
 13日は朝のうちに仕事の立会を済ませ、帰宅後に前日までの視察資料を整理してHPを更新する。前日に届いたメールでかずさ水道広域連合企業団が16日から被災地に1.6m3の給水車1台とサポートカーと職員4名で1班を4日交代で述べ16日ほど派遣することを知る。市役所も珠洲市に職員2名を派遣しているよう支援しているが積雪が増える中での苦労を思うと頭が下がる。私は3月議会終了後に向かおうかと考えながら、雑件の処理などをしていた。
 
 14日は朝食後にゆっくり新聞を読んでから旧潮見庁舎で10時から開催する消防出初式に参列する。風もなく日射しが強く暖かい。
 式典の後にはドローンや千葉市消防ヘリ、本署の新鋭車両が揃った連携総合訓練が開催され見所が多いだけでなく子どもたちが楽しむことを前提とした消防広場も設けられ多くの子供連れ市民が参加していた。近隣市では屋内の式典だけとしている所が増えているようだが木更津の姿勢は好感が持てる。参加車両の価格や使用年数を明らかにすると更に面白いだろう。式典は午前中に終了となりジェスパルの焼きそばなどを購入して帰宅し家で待つ娘と食事を摂り、午後は事務所で遊ばせながら私的な仕事を片づけた。
 
 15日は臨時議会である。駅前庁舎に登庁して議場を見ると私の隣で鈴木秀子議員の議席だった場所に百合の花が飾られていた。市民歌斉唱の後に黙祷を行い12年7ヶ月の議員活動への献身に感謝を捧げた。議運の報告を行い会期は本日一日限りと決める。市長から上程された議案は下記の通りである。
番号 内容(件名とは異なる) 関係部 補正額
議案01 専決処分の承認 財務  8億6251万4千円
議案02 一般会計補正予算(第7号) 財務  5億8434万5千円
 国会が昨年11月29日に議決した物価高騰対応重点支援地方創生臨時地方交付金を活用した市民生活支援のための補正予算であり、両議案の合計は14億円を超える額で、その大多数は国費である。上程後に本会議は休憩を摂り、午前中に総務常任委員会と教育民生常任委員会、午後からは建設経済常任委員会が開催されて所管事項を審査し、委員長報告の後に採決が行われ全会一致で両議案とも可決された。私からは総務常任委員会の中で今回の推奨メニューにある省エネ家電の買い換え促進に対する補助などが無く、もっと様々な支援を準備しておくべきでは無かったかという点を指摘させていただいた。帰宅して町内の仕事を片づけ、夜は議員会主催の情報交換会に出席した。臨時議会後に開催された議員会の役員会議で能登半島地震の支援として10万円を寄附することを決めたことの報告があった。インフラが復旧するまでは特別なスキルがない者は、先ずは資金援助が妥当であろう。英断に感謝。
 
 16日は朝から私的な仕事を片づけ10時に供用開始となった巌根駅の人道跨線橋に設置されたエレベーターに乗りに行く。
 東口の歩車分離柵も設置され安心できる歩行空間が確保されていた。東口の改札工事は依然として着手されずバリアフリーの完成まではもう少し時間が必要であり、その前に房総半島の電車利用者を激怒させている春のダイヤ改正が成されるのでJRに対する感謝の気持ちが薄れてしまうだろう。
 帰宅して仕事を続け買い物に出かけ、夕方に行政視察の準備をした。
 
 17日は朝食を摂り木更津駅西口まで家人に送ってもらい駅を越えて東口の高速バス停に集合し議会運営委員会の行政視察に出発する。駅前では青年会議所の現役が能登半島地震への寄附を行っていた。
 宮崎空港行きのJAL689便は先週の松山便のような空港の混雑もなく暖かな宮崎に着く。借り上げバスで日南市まで走り飫肥城の近くで昼食を摂り城や九州で最初に指定された伝統的建造物群保存地区を見学してから真新しい日南市役所に入る。
 
1.宮崎県日南市
 市制施行 昭和25年1月1日
 人口 47,832人(令和5年12月1日現在)
 面積 535.49km2
 令和5年度一般会計当初予算額 314億9千万円
 財政力指数 0.40 (令和3年度)
 視察項目 議会業務継続計画について
 日南市は濱中議長、北川議会運営委員会委員長、黒部副委員長及び議会事務局4人の7人で視察対応をしていただいた。平成27年に設置された議会改革推進特別委員会が有事の際にも議会機能を維持することと議員活動が災害対応を行う市の負担と成らないことを目的に「議会BCP」を平成31年2月に制定し、コロナに併せて感染症の項目を追加する改定を行っている。木更津市でも私が議長の時に「災害対応マニュアル」を策定しているが、日南市の計画は具体的で細部まで定めており、実践できるように令和元年と令和3年に訓練を行っている。
 議会開催中に災害で議場が使用できなくなった想定で会期が終了して議案を廃案にしないよう屋外の公園で会期延長を議決する訓練はNHKにも取り上げられ、注目を集めていた。またタブレットでの安否確認が難しいという意見に対応するためにTeamsを活用するなど柔軟に見直しを進めている。
 本市でもマニュアルをより具体化するとともに具体的訓練が必要だと実感した。災害時に議会事務局の機能を維持できるよう災害対策本部に入らない職員が4人残り、議長を委員長として各会派の代表を委員とする議会災害対策会議を設けて議員からの要望は全て議会として取りまとめ市への障害にならないようにするが、現在は市の災害対策本部に議長が入ることは想定していないようだ。まだBCPを発動するような事態にはなっていないが、大きな災害の場合には災害対策本部に加わることも必要だと私の質問に対して濱中議長は答えていただいた。
 
 往路は東九州道を使用したが復路は海岸沿いの国道を走る。南海トラフ地震では沿岸に津波が襲来する想定であり集落毎に災害備蓄をしていると聞いたが、確かに厳しい地形が続いている。宮崎市で視察参加者の情報交換を行い3月定例会で訓練をしようと話し合った。
 
 18日は荷物を持って徒歩で宮崎市役所に入り2日目の視察を行う。
 
2.宮崎県宮崎市
 市制施行 大正13年4月1日
 人口 397,078人(令和5年12月1日現在)
 面積 644.61km2
 令和5年度一般会計当初予算額 1,814億8千万円
 財政力指数 0.69 (令和3年度)
 視察項目 議会報告会について
 宮崎市では副議長を委員長として各会派の代表と無会派の1/2を構成員とする11人の広報公聴委員会を設け、議会報告会や議会便り、DXみやだんの運営をしている。広報委員会は調整機関として位置付けられ「企画部会」「公報部会」「運営部会」で校正される。常任委員会や特別委員会に対してパワーポイント作成を依頼し公聴会のテーマを検討する。
 議会報告会は年に2回開催し各年度の参加者は概ね百名程度、それのネット配信はライブと録画で併せて千件程度見られている。他にも高校生との意見交換や一般質問後の30秒感想などDXを活用して議会の関心を高めるために努力している。
 議会報告会は4つの常任委員会と5つの特別委員会の報告で40分ほど使用しその後は常任委員会別に別れて市民の意見を伺う公聴会を40分ほど実施しており全体では14時から15時半まで90分ほどの構成である。公聴会のテーマや形式は各常任委員会が決めている。参加者は70代が最も多い。
 議会アンバサダーも設けており費用は無償で14人が登録している。情報発信力のあるインフルエンサーに議会モニターを務めてもらことで情報の拡散を図るという手法は参考になる。議会報告会では議員個人の考えは出さないと言うルールであるが、議会DX戦略として「みやだん」というアプリを使い市民と議員が直接やり取りできる制度を設けている。運営費が22万円/月で福岡の会社に委託しているということなので木更津市での使用は現実的ではないと感じた。
 
 午前中に視察を終えて宮崎空港に向かい昼食を摂って帰路につく。先週の松山からの帰路では強い南風だったがこの便は冬らしい北風の着陸となり木更津などを見下ろしながらの帰路となった。木更津に帰った頃には日が暮れていたので会派の有志と軽くない砂払いを行ってから帰宅した。
 
 
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