2012.04.16-04.18 アシアナ航空で往復 宿泊はソウル龍山洞の加羅ホテル
▼水原市:世界遺産華城  前回の中国桂林の旅からおよそ2年半ほど海外に出かけていない間に円高がずんずん進んでいた。一昨年は海外に出る暇がないほど国内旅行が忙しく、昨年は東日本大震災のため海外に行く余力を全て東北に注ぎ込んでしまったためである。しかし、円高効果を実感することも悪くなかろうと、短い日程で行ける韓国への旅を企画した。往復航空券とソウルのホテル2泊が付いた安いツアーを探し16日(月)の夜7時に成田を旅立ち、深夜の空港で両替を行い(10円→131W)、ソウルのホテルに入ったのは日付も変わろうとする頃だった。
  
 17日は何時も通り朝7時に起床し、朝食も取らずホテルから歩いて5分の地下鉄1号線南宮駅に行く。日本語対応がされている自動販売機で水原まで1750W(≒135円)の切符を買ってホームに出る。地下鉄といっても中心市街地側だけで、南宮駅はソウル駅の次の駅なのに国鉄路線と平行に地表に敷設されているため隣をKTXが通り抜けていく。
 各駅の電車に1時間ほど揺られ水原駅に到着。駅前の観光案内所で日本語表記のガイドを貰い、華城までのバス便を教えて貰う。乗り込んだバスで隣の席に座っていた男性は電力会社の技術者で日本語を話せたので、フクシマの事などを話しながら時間を過ごした。
 八達門前でバスを降りる。残念なことに、国宝の建造物は工事用の仮囲いで覆われている。4年前の南大門と一緒だな、と思いながら一周5.8kmの城壁巡りを開始する。1000W(≒76円)の入場料を払って西側にある急坂を登り始める。山頂の西将台から水原の街を見下ろすと旧城内には古い家屋が多く、郊外には数多くの高層マンションが林立していた。山を降りる途中の華西門の手前からは長安門に続く見事な城壁が俯瞰でき、世界遺産指定に納得しながら、櫓の上で靴を脱いで休憩を取る。
 巨大な長安門で城壁から降り周辺からの視点を楽しむ。周辺に名物の味付きカルビを食べる店がないか探すが、日本語対応の店が見つからない。仕方がないので少し歩き水原川に掛かる華虹門をくぐったところで高級店の『ヨンポカルビ』が目に入った。ちょっと贅沢かなと思ったが日本語の看板に誘われて中に入る。
 朝食を抜いている事もあり、10:45と早めの時間であるがしっかりと昼食を取る事にした。日本語表記メニューはあるのでオーダーには不自由しないが言葉は通じない。それでもカルビ(400g)とビールを頼み、追加でマッコリ・冷麺・味噌チゲを味わい45000W(≒3435円)を支払って外に出る。昼間の酒は気分が良くなり、竜池の畔のベンチで暖かな日差しを浴びながら贅沢な時間を過ごす。
 
 正午を回ったところで散策を開始し、東半分の平地部を見て回る。午前中の山岳部と違い住宅が隣接しており、多くの場所が復元工事を終えたばかりのようであった。それでも東北空心敦、蒼龍門、狼煙台等の韓国式城塞建築や満開の桜や韓国式の街並みを楽しみ、城壁の復元工事が最盛期である八達門市場に降りる。ここで家から履いてきた古い靴の底が今回の城壁歩きで穴が空いたので靴屋を探し、新しい靴を35000W(≒2671円)で購入する。前回もソウルで靴を換えたなと、妙な付合が面白い。
 散策も終えて駅まで2.3kmを歩いて戻ろうかと思ったが、行きのバスで隣の男性からタクシーも安いと聞いていたので、八達門のバス停近くでタクシーを拾う。駅前で渋滞し、動かない中でメーターが100W単位で上がっていく。数字の上がり方が気になるが計算すると1メーターが8円程度である。結局駅までは3000W(≒229円)で到着した。確かに日本の物価に比べれば比較にならないほど安い。
 
 水原駅に到着したのは13:35と早かった。当初はソウルまで京釜線の特急に乗る予定だったが、韓国の国会議事堂を見に行こうと地下鉄1号線の新吉駅までの乗車券を購入し、各駅電車で1時間ほど揺られる。 
西将台
長安門 華虹門
味付きカルビ 東北空心敦
蒼龍門 狼煙台
▼汝矣島  新吉駅で降りて対岸の汝矣島に渡る橋を探そうと駅舎を出ると、目の前に木床板で主塔が2本交互に斜めに配置された曲線的な斜張橋の歩道が架けられている。地震がの差があるとは言え、日本では見ない形式であり、韓国の技術力が急激に上がっている事を実感する。
 橋を渡ると桜並木であった。桜は日本のシンボルとして韓国では避けられているかなと思っていたが国会の有るエリアに溢れている所を見ると、美しい物はやはり強いという事なのだろう。ここは新しい国の中心部という事で高層ビルも林立しているし、セントラルパークのように中央に大きな公園も配置されている。その公園を経由して国会議事堂前広場に行き、更に漢江側に抜けると一面の桜並木と車両通行止めになった道路に溢れる大勢の観光客である。イベントブースや看板からは、どうやら桜祭りが行われているようだ。桜前線にソウルで追いつくことになってしまったようだ。人混みに疲れた頃、地下鉄4号線の汝矣ナル駅に到着する。多くの人が駅から出てくるが、多くが花見に来ているに違いない。
▼南山:ソウルタワー  汝矣島でも3km近く歩き、流石に疲れが出てきたが、光化門で地下鉄を降り、歩き始める。4年前にゆっくり見た清渓川に降りて、相変わらず多くの人が居るなと思いつつ、水原で購入した靴が合わないのか右足の小指が痛いな、と辛さが出てくる。それでも20分の休憩を取った後にソウルタワーを目指して歩き始める。ソウル市庁では妙な建築物が出来つつあるがスルーして進み、夕焼けに桜が冴える南山公園を登っていく。他にも多くの人が歩いており、韓国は今日が祭日なのかな、と思ったりする。
 疲れと足の痛さで汗をかきながらも標高243mの山頂に到着する。ロープウエィやバスで多くの人が登っており、大変な賑わいである。午後6時を回っているがまだしばらく日が沈む気配がない。明石との経度差は解らないが1時間は持つだろうと、売店でビールを買って東屋でゆっくりと日没を待つ。ふと、環境や状況は全く違うが、小笠原父島の三日月山展望台で夕日を見ていたことを思い出した。
 
 願掛けの鍵が鈴なりになっている展望デッキで夕日が沈むのを確認したらタワーに入場料9000W(≒689円)を支払って登る。東京タワーには今から34年前に1度登っただけなのに、何故ソウルタワーには4年間で2度も登るのかと思いつつ、前回はガスで見れなかった展望を期待する。
 天候は晴れているが黄砂か水蒸気で遠望は効かない。それでも日が沈むに従ってソウルの街並みの明かりが奇麗になる。しかし、ソウルには申し訳ないが、山が多い事もあり、夜景がいまいちである。大山からの関東平野の広がりに比べることは無理だが、六甲からの夜景より暗いのではと思う。ビルの数は函館より遙かに多いのだが、造形の美しさが函館には及ばない。夜景を見すぎて目が肥えてしまったのだなと思いながらタワーを降りる。
 疲れているのでロープウエィを使おうかと思ったのではあるが、多くの人が遊歩道を使っているのでついて歩き、明洞に降りる。夕食を食べた後は流石に疲れて歩くのを止め、地下鉄でホテルに帰ったのは21:40であった。
▼仁川旧市街  前夜は気絶するように寝てしまったので朝6時前に目が覚める。それでものんびりと部屋で過ごし7:40にチェックアウトを行い、この日も地下鉄で目的地に向かう。前日の水原は途中駅なので緊張して待機していたが、仁川は終点なので「日本語と韓国語」(文春新書:大野敏明著)を読みながら時々うたた寝をする。東仁川まで複々線という状況に驚きながら、余程の大都市に違いないと思って降り立った仁川の駅は貧弱な終着駅で肩すかしを食らう。
 駅前の観光案内所で今日も日本語表記の地図を貰ってから散策を始める。駅前に最近出来たと思われるような中華門を潜り丘を登りついたところにマッカーサーの像が有った。仁川は朝鮮戦争の転機になった上陸作戦が行われた場所で、記念碑なども建っていた。記念碑建設の頃は漢字表記だったのだなと思いながら、その後のハングル純化の流れを残念に思う。
 公園から坂を下り市場に入る。港町だけ有って魚が多く、店頭で売っていた薩摩揚げのような物を購入して食べながら日本租界の散策に入る。旧朝鮮銀行の建物などが残っている所は興味深いが周辺整備が今一つである。
 再度、清国租界でも有った中華街に戻ると、朝方は閑散としていた街に多くの団体観光客が訪れ始めている。制服の一団は韓国内の就学旅行生だろう。やはり朝食抜きだったので早めの昼にジャジャンメンを食べ、旧市街の散策を終える。月尾島にも行こうかと思ったが、新市街に興味を引かれ地下鉄に乗る。
▼仁川松島地区  地表面を走るソウル地下鉄で富平まで戻り、そこで仁川地下鉄に乗り換えると、本当に地下に建設されており、ホームも奇麗である。仁川国際空港の効果を反映させるための設備投資を想像させられる。終点の一つ前のセントラルパーク駅から外に出ると、奇妙な形態の『トライボウル』というモニュメントが建っている向こうにビル群が広がっている。駅の近くにある『コンパクト・スマートシティ』という展示館に入ってみると、全くコンパクトではない大規模開発の模型が、これでもかという程に展示されている。この松島地区もランドマークとして151階建てのタワーを造るようだ。現在世界第2位の高さの台北101を大きく上回る。いったい何億円の投資をする気だろうと、韓国の勢いを感じさせられたし、バブルになるから止めろとも伝えたくなった。
 セントラルパークに沿って街並みを見ながら歩き、連日の疲れで時間にゆとりはあったがシェラトンホテルの近くで空港行きのバスに2800W(≒214円)を払って乗り、空港島から2本目となる橋を渡って出発の3時間前に到着。成田には夜10時少し前に帰り着き、韓国の旅は終わった。

世界の旅 大韓民国:水原・仁川