北京オリンピックに思う
2008/08/08記
 いよいよ今夜、北京でオリンピックの開会式が開かれる。毒餃子問題、チベット弾圧、四川大地震、環境問題、ウイグルのテロなど、様々な問題が背後にあり、厳戒態勢の中での緊迫したオリンピックである。
 既に男女のサッカーは予選が開始されているが、現在の所、中国を目の敵にした品位のない応援は行われていないようだ。平和の祭典として何もなく大会が終了することを祈るばかりである。
 
 今頃になって欧州では『何故、北京を開催都市に選んでしまったのか』という議論も出ているようであるが、少なくとも世界第4位の経済力を持ち、世界人口の1/5を占める大国でオリンピックが開かれていなかった事の方が不自然だと言う意見には同調する。
 そこで、国力との関係を知りたく過去の近代オリンピックの開催国と、前にも記載した2006年の国内総生産(GDP)順も合わせて整理してみたものが下表である。 
大会 開催国 GDP 区分 
1896年 1 アテネ ギリシャ 1 27 欧州 1
1900年 2 パリ フランス 1 6 欧州 2
1904年 3 セントルイス アメリカ合衆国 1 1 北米 1
1908年 4 ロンドン イギリス 1 5 欧州 3
1912年 5 ストックホルム スウェーデン 1 19 欧州 4
1920年 7 アントワープ ベルギー 1 17 欧州 5
1924年 8 パリ フランス 2 6 欧州 6
1924年 1 シャモニー フランス 3 6 欧州 7
1928年 9 アムステルダム オランダ 1 16 欧州 8
1928年 2 サンモリッツ スイス 1 20 欧州 9
1932年 10 ロサンゼルス アメリカ合衆国 2 1 北米 2
1932年 3 レークプラシッド アメリカ合衆国 3 1 北米 3
1936年 11 ベルリン ドイツ 1 3 欧州 10
1936年 4 ガルミッシュ ドイツ 2 3 欧州 11
1948年 14 ロンドン イギリス 2 5 欧州 12
1948年 5 サンモリッツ スイス 2 20 欧州 13
1952年 15 ヘルシンキ フィンランド 1 33 欧州 14
1952年 6 オスロ ノルウェー 1 25 欧州 15
1956年 16 メルボルン オーストラリア 1 15 大洋州 1
1956年 7 コルティナダンペッツォ イタリア 1 7 欧州 16
1960年 17 ローマ イタリア 2 7 欧州 17
1960年 8 スコーバレー アメリカ合衆国 4 1 北米 4
1964年 18 東京 日本 1 2 アジア 1
1964年 9 インスブルック オーストリア 1 26 欧州 18
1968年 19 メキシコシティ メキシコ 1 14 北米 5
1968年 10 グルノーブル フランス 4 6 欧州 19
1972年 20 ミュンヘン ドイツ 3 3 欧州 20
1972年 11 札幌 日本 2 2 アジア 2
1976年 21 モントリオール カナダ 1 8 北米 6
1976年 12 インスブルック オーストリア 2 26 欧州 21
1980年 22 モスクワ ロシア(ソ連) 1 11 欧州 22
1980年 13 レークプラシッド アメリカ合衆国 5 1 北米 7
1984年 23 ロサンゼルス アメリカ合衆国 6 1 北米 8
1984年 14 サラエボ ユーゴスラビア 1 - 欧州 23
1988年 24 ソウル 大韓民国 1 13 アジア 3
1988年 15 カルガリー カナダ 2 8 北米 9
1992年 25 バルセロナ スペイン 1 9 欧州 24
1992年 16 アルベールビル フランス 5 6 欧州 25
1994年 17 リレハンメル ノルウェー 2 25 欧州 26
1996年 26 アトランタ アメリカ合衆国 7 1 北米 10
1998年 18 長野 日本 3 2 アジア 4
2000年 27 シドニー オーストラリア 2 15 大洋州 2
2002年 19 ソルトレークシティ アメリカ合衆国 8 1 北米 11
2004年 28 アテネ ギリシャ 2 27 欧州 27
2006年 20 トリノ イタリア 3 7 欧州 28
2008年 29 北京 中華人民共和国 1 4 アジア 5
2010年 21 バンクーバー カナダ 3 8 北米 12
2012年 30 ロンドン イギリス 3 5 欧州 29
2014年 22 ソチ ロシア 2 11 欧州 30
未開催 ブラジル 0 10 南米  
未開催 インド 0 12 アジア  
未開催 トルコ 0 18 アジア  
未開催 インドネシア 0 21 アジア  
未開催 台湾 0 22 アジア  
未開催 サウジアラビア 0 23 アジア  
未開催 ポーランド 0 24 欧州  
未開催 デンマーク 0 28 欧州  
未開催 南アフリカ 0 29 アフリカ  
未開催 イラン 0 30 アジア  
未開催 アイルランド 0 31 欧州  
未開催 アルゼンチン 0 32 南米  
 1984年夏のユーゴスラビアは既に連邦が解体してしまっているので除外して考え、1952年夏のフィンランドがGDP順位33位と開催国中の最小経済力なので、それを上回る経済力を持ちながら未開催の国を表末にリストアップしたが、12カ国:地域が未開催のままである。
 
 未開催の地域のうち半分がアジアに集中している。インドやトルコなど開催しても不自然とは思えないが、イスラムの戒律が厳しいインドネシア・サウジアラビア・イラン等で開催される時は来るのだろうか?その場合、女子スポーツはどうなるのか等、気になる所である。「地域」扱いの台湾が開催するときは国連加盟を果たして国として認められた後になるのだろう。そんな日も見たいと思う。これ以外にもGDP34位のタイはASEANの代表としてバンコク開催を目指しているから応援したいものだ。こうなると日本開催は当面冬季大会だけになるしか無い。なお、2018年の冬季大会には韓国と中国が立候補している事も付け加えておこう。
 
 GDP10位の南米ブラジルは、この表を見る限り有力である。第31回大会に残った4都市(東京・シカゴ・リオデジャネイロ・マドリード)の中では世界の調和や公平性に訴え掛ける力は有りそうだ。後は都市の能力がどの程度かという問題である。
 アフリカ代表である南アフリカはワールドカップで開催能力を他国に見せることになるであろう。しかし都市の治安が悪いという噂も聞くので、負の面を見せることがない事を祈る。
 欧州はEUでの開催が相次いでいることを考えると、そろそろ遠慮しても良いのではと思うが、ポーランドは東欧圏からと言われるとそれなりの説得力を持つかもしれない。
 
 ともあれ今日からの北京である。日本選手団の活躍が気になる日々を過ごし、寝不足になることは想定の範囲である。
 これから重要なのは、今朝読み終えた『「チベット問題」を読み解く(大井功著:祥伝社新書)』にも書いてあるように、オリンピック後も中国に報道や言論の自由が確保されるか注視し続ける事であろう。