アクアライン値下げ運動を思う
2008/09/13記
 現在、通勤時間帯である6:00〜9:00と17:00〜20:00の時間帯にアクアライン木更津金田料金所をETCで通過すると通行料金は基本料金の半額になる社会実験が行われている。具体的には乗用車が現金精算では3,000円の所を1,500円で通過できる制度である。平日にそれ以外の時間帯で通過した場合、ETC割引でも2,320円が請求されることを考えると、その820円の差に通過時間を考えてしまう自分がいる。
 この料金値下げの運動を推進しているエンジンになっているのが同僚議員である高橋浩議員が進めているアクアライン800円運動であることは間違えなく、それはこの地域に大きな成果をもたらしていることも事実である。
 
 この運動が開始された7年前。当時は双方とも議員でなかった間で高橋さんから運動への参加を求められたが自分なりの哲学に基づいて拒否したことを思い出す。
 アクアラインは事業計画上は乗用車が利用をする場合、片道の料金として5,500円を徴収することで認可を得ているが、開通に当たり暫定措置として4,000円と値下げを行い、現在では3,000円まで基本料金を下げている。そこまで下げなければ利用者が発生しないと言う、値下げ運動を主張してきた人々の意見は正しい面が多いし、大多数の住民は便益を被っていると思う。
 
 運動に参加しなかった理由は前にも書いているが便益を得ている地域以外から税金や料金収入などの多大な負担を強いることによる値下げが公平なのかという視点と、料金抵抗が無くなったことによる対岸からの不法投棄の増大に危惧をしたからである。
 また、運動の当初は、松下文洋教授の提唱する「ミープラン」で需要予測を行って、料金値下げの根拠にしたいため、委託費のカンパを求める活動であったが、道路公団内部にも審議室という交通量予測を行う機関(それが良く外れる)が有ることを内部にいた者として知っている事もあり、外注で交通量予測をしてもそれを聞き入れるはずもないと知っていたので協力をしなかった。
 
 運動から7年間のうちに道路関係4公団の民営化がされたが、日本道路公団が3分割された以外は、首都高、阪神高速、本四架橋の3公団はそのまま民間会社に移行して、抜本的な改革が計られる事はなかった。首都高などは全体の道路行政を鑑みることなく距離制の導入を主張しているが、これも前に書いたように大きな視点での料金改正としないので有れば、利用者への負担増になるだけである。分割の際に他社と一緒になりたくないと、ごね押ししたことが明確に解る我が儘な意見と、個人的には理解している。根本的な道路行政は7年間に大きくは変わっていない。
 
 視点は随分違うがアクアライン値下げ運動も、道路管理者の負担軽減につながる視点も冷静に考えるべきだと、元道路公団の経験で思うのだ。例えばアクアラインが千葉プールという、京葉道路・千葉東金道路と同じ財布に入ったことで、東金〜茂原間の延伸が危惧されたが、それは別途やるようだから県発展のブレーキにならなかった事は一安心である。しかし、現制度のままでは今世紀中に京葉道路の無料化はないと思うと料金負担をしてきた沿線の住民には申し訳なく思うところである。
 
 公共投資の元になる財政投融資の原資として大きな問題だと思われていた郵便貯金の見直しも、気がつけば郵便局の民営化という方向に向かい、現況では何も問題が変わっていない。
 政府系銀行が有って、何処の離島に行っても金を降ろすことも振り込むことも出来るようなサービスが有っても良いと思うし、郵便貯金はそのような方向に進んで貰いたかった。その替わりに金利は無くし、保有のメリットが少なくなれば膨大な原資は減って行くと思うのだ。
 現在は金利を返す収入が無く累積赤字が増えているアクアラインだが、維持管理費以上の収入があるので、このような無利子金融を受けられればアクアラインは確実に料金償還を行っていく事が出来る。それが最終的に負担を国民や自治体に押しつけない方法であろう。
 
 国や自治体が抱える膨大な借金。それをどう返すか考えることがこれからの日本の課題であろう。アクアラインの件で知人とやりとりする中でそのような事を考えていた。