津波浸水予測図に思う
2012/04/26記
 東日本大震災の想像を絶する津波被害を受け、今までの想定の見直し作業が数多く行われている。
 例えば、2月29日に国土交通省の交通政策審議会港湾分科会における防災部会が木更津港に2.6mの津波が危惧されると発表し、3月31日には内閣府の防災担当より南海トラフの巨大地震による津波高として木更津に2.5mの津波が来ると発表されたばかりであるが、昨日は千葉県防災危機管理部防災計画課より木更津には3.0mの津波が訪れることや、それにより浸水する範囲まで発表され本日朝の千葉日報新聞の1面を飾るとともテレビやラジオでも大きく取り上げられることになった。
 
 新聞による木更津市への影響は、地震等の影響により防潮施設などの構造物が壊れるか何らかの理由で水門が閉鎖できずに開放されている場合には12平方キロメーターが浸水被害を受け、構造物が健全で、水門が閉鎖されている場合でも9平方キロが被害を受けることが指摘されているとある。さっそく調べてみた。
 
 まずは構造物や水門が機能しない場合の図である。

50cm未満 50〜80cm 80cm〜2m 2m以上
 県庁のHPから図面を複写しているので、原図が荒れている影響を受けているものの、傾向は読みとれることだろう。
 すなわち、金田の周辺部、岩根の西側という田園地区だけでなく、富士見や新田、吾妻などの人口密集地でも50cmを超える被害が生じることが示されたのである。
 
 それでは構造物や水門が機能して、その能力の範囲を防いだ場合はどうなるかというと、次の通りである。

50cm未満 50〜80cm 80cm〜2m 2m以上
 
 2枚の絵を見比べると、金田の多くが構造物や水門によって浸水を防ぐことが可能であることに対し、木更津市街地の多くと岩根地区は殆ど変化が見えない。これは既存の施設が今回の想定の波高に対して低すぎて機能していないためである。
 
 県のHPにも『津波は、地震の規模や発生地点、波長、海底や海岸の地形等の様々な要因により、津波高や到達時間、挙動が大きく異なるとともに、街並みや生活形態等によって津波被害の様相は大きく変わります。 自然は大きな不確実性を伴うため、想定より大きな津波が押し寄せ、浸水範囲も広くなる可能性があります』と書いてあるように、この図に着色されていないからと言っても安全性を保証されている物でないことも念頭に置くと、大きな被害が我が市に来ると考えるべきであろう。
 
 想定の津波高さは3.0mである。余裕を見込んで3,5mの高さの防潮堤を回すと、街中から海が見えないようになり、殺風景になってしまうだろう。また、港のレイアウトが現在のままでは使い勝手も悪くなることであろう。
 しかし、今回の震災で、何より生命と財産を守ることの重要性を大きな犠牲を払いながら学んだハズである。幸い現在は木更津港整備計画を進めているところであるので、それを早急に見直して海沿いの防潮力を高めること。次に明らかに被害が予想される地区には津波避難ビルの建設を薦めると供に、地域の総意が得られることなら地盤の嵩上げを伴う区画整理事業を行って地域の防災力を底上げすることも必要だろう。
 
 浸水する市役所の対策、首都圏の防災力維持のための自衛隊機能の維持施策、避難用の高台も兼ねた小櫃川堤防強化など、必要とされる事業は、とても直ぐに対応できないような巨額の予算を伴う話であるが、方針を見失うことなく確実に進めるべきだ。
 
 今回の発表で『想定内』になった災害を防ぐことが政治に求められている事である。そのために公債を発行する事も手段ではあるが、経済が厳しく税収が上がらない状況の中、教育や福祉という聖域視されている事まで踏み込んで考えなければならないのだろうと、新聞報道を読みながら考えていた。