道路の制度を考える
2013/02/08記
 昨日、賢友会主催の圏央道視察研修が行われた。強風により上空からの視察は行われなかったが、東日本高速道路株式会社木更津工事事務所の平田所長による説明で、有る程度の状況は理解することが出来た。山口トンネルが乾燥流砂層に当たって難工事に成ったとかは他の多くの議員には感心がないことであろうが、一時期はその世界に身を置いた私としては難工事の理由も大変興味深く聴かせて貰った。
 当初は年度内に開通を目指していた圏央道の木更津東〜東金区間も高滝湖PA周辺の工事の遅れなどでGW直前まで遅れるようで、日程の発表はなかったが大安を選ぶなら4月24日に成るのではないかと個人的には思っている。
 館山道の4車線化については交通切り替えが大変で、どうしても部分的な施工を積み重ねるため平成30年の完成に成りそうだと伝えたときの富津市議の落胆ぶりは何とも言えなかった。
 
 さて、ここで圏央道の木更津東〜東金と記載したが、正確には一般国道自動車専用道路である圏央道(首都圏中央自動車道)として整備している木更津東〜茂原長南と一般有料道路である千葉東金有料道路の延長として整備される茂原長南〜東金という区分であり、料金収入はそれぞれ別に計算され、採算を求められることになる。しかし利用者の混乱を避けるため、既に供用している東金〜松尾横芝も含め名称は圏央道で統一するようだ。
 同様に館山道というのは高規格幹線道路である東関東自動車道の館山線の事で、竹岡以南は一般有料道路として館山道を補完する道路として整備されているため、今回の4車線化の対象範囲にはなっていない。更に言えば、東関道の宮野木JCT〜浜野までは館山道を補完する道路として京葉道路があり、高規格幹線道路としてのネットワークは切れているのである。
 ついでに書けばアクアラインは一般有料道路に過ぎず、国家を形成する高規格幹線道路としては位置付けられていない。
 
  
 このような事を書いても通行者には制度上の境界を通過したとは解らないし、多くの国民が制度の違いを理解していない。私は制度の違いを理解することは可能であるが、区分をするデメリットを深く感じている。
 
 法律により道路を規定することで、政治家や官僚が勝手に高速道路を建設することを防ぐという目的はあったのであろうが、道路特定財源が豊かな頃には国道のバイパスという扱いで類似した道路を各所に建設しているし、法律に規定されている中でも広島〜山口で中国道と山陽道が遠くない範囲に重複して整備される一方でJR山陰本線の有る京都〜鳥取で計画がないなど、決して公平な内容とは言えない。
 
 この高規格幹線道路は約14,000km有り、内訳は高速自動車国道11,530kmと一般国道自動車専用道路2,480kmからなる。前者は国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)で認定され、後者は社会資本整備審議会の道路分科会で認定されるなど、官僚が勝手に決めるのではなく外部の視点が入って公平だという建前になっている。
 しかし、実際には事務方である官僚が決めたことを僅かな審議時間で追認する機関となっているばかりでなく、開催頻度が極めて少ないため、追加インターやバス停の設置などが迅速に出来ないと言う弊害も生じている。実際、羽鳥野バス停設置では当初からバス停1箇所を織り込んでいたので、国幹会議の承認が不用と解ったが、それに至るまでに色々と苦労させられた記憶がある(参考)。
 民主党時代に当時の前原国土交通大臣は国幹会議の廃止を表明し、廃止する法案を2010年1月の第174通常国会に提出したがそれは廃案となった。しかし、国幹会議で着工が凍結された新名神の大津〜神戸について国幹会議の手続きを取らず、前田国土交通大臣によって着工許可されるなど、実質的に無視して来たかのようだ。
 ちなみに高速自動車国道の料金は、原則として全国プール制度が取られ、昔に安価に建設された道路も、新たに巨額の工事費を投入して完成した道路も全て走行距離に応じて支払う対距離制を取っている。大都市近郊や長大トンネルなどの特殊なものを除くと普通車では次の式で料金が求められる。
 
 C=(24.6[円/km]×L[km]+150[円])×1.05(消費税)
 C:通行料金(24捨25入し50円単位にまとめる)
 L:走行距離
 
 このプール制度はモラルハザードを招き、幾らでも新規路線が建設されると批判を浴びるものであるが、同様な規格の道路が高速自動車国道なのか、そうでないかによって料金が大きく変わることは別の意味で不公平である。
 なお、一般国道のバイパスから高速自動車国道へ昇格された区間は、関越道になった練馬〜川越(東京川越道路)や山形道になった笹谷〜関沢(一般国道286号笹谷トンネル)など、数路線が存在しているので、既存の道路を編入することは可能である。
 従って、今回開通する圏央道はもとより館山道の竹岡以南、アクアラインや本四架橋などを全て同じ法体系の元に統一することで制度が解りやすくなるし、料金プールに編入することでアクアラインの料金値下げ恒久化が出来ると考えているのである(参考
 どうせ民主党政権でケチの付いた制度で有れば、今度の自民党政権では一から見直すことだって良いのではないだろうか。
 但し、無制限に採算の悪い道路が造られてしまわないよう、新規建設に当たっての制度設計をどうするか、という議論は別にある。そのために必要なのは形式的な審議会でなく、国民代表の国会が議論して行くべきであり、無駄遣いが酷いと感じた場合はそれが争点になって政権交代が起こる世の中の方が民主的ではないだろうかと思っている。
 空からの視察が出来なかったので、このような事を考えていた。