PFI事業を考える
2013/08/18記
 先月の7月22日から今月の22日まで新庁舎の基本的考え方をまとめた庁舎整備基本計画(案)について意見公募が行われている。議会でも特別委員会を設けて全員で議論しているし、副委員長という立場で委員会運営上の意見を出している経緯があるが、改めて文章でも届けようと思っていたところ、気が着くと期間が残り4日間に成っていた。天気の良い日曜日ではあるが盆休みの最終日で道路は渋滞しているだろうし、夕方から甲子園で木更津総合高校の試合が行われるので、それをテレビ観戦する前の時間を使って意見をまとめ始めた。
 前にも思う事で記載しているが、防災拠点を新市役所に設けることに対する疑問点や、事業費をどの様に捻出して何年掛けて返済するかと行った情報開示、その他の細かい点について意見を整理する中で、事業手法のPFIについて掘り下げて記載することが必要だと考え、この場で考えを整理する事とした。
 
 特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会のHPに示されたPFI事業の一覧を見ると、平成15年から20年頃までは一定の件数で推移していたものが近年は減少していることに気が着く。8月18日現在では7件の事例が記載されている年度途中の平成25年を除き、グラフにしたものが下図である。
 
 PFIの利点として、「財政負担の縮減効果が得られることや財政支出の平準化が図れること」(庁舎整備基本計画(案)P45より抜粋)から有利な制度であるはずなのに、全国的にはPFIを選ばない方向に向かっているのである。
 本市でも平成19年に木更津第一小学校と給食センターの整備事業に当たりPFIを採用しながら、その後に制度を活用する事は無かった。大きな事業がなかったわけではなく、第三中学校の建て替えや真舟小学校の新築、請西保育園と子育て支援センターの運営等、検討に値する事業がある中での話である。
 PFIの弱点として、準備期間や事業決定までの間に時間が必要であり、単年度の補助事業には相応しくないという事があり、それが学校建設の足枷に成った事は解るが、保育園については公設民営事業としているので、民間の運営を前提としたら検討の余地があったものと思う。しかし、指定管理制度の採用によりPFIという手法には至らなかったのである。
 
 全国的に減少しているもう一つの理由として、PFIに応募する業者の減少が挙げられる。例えば事務庁舎に関してPFIを採用した19の事例のうち4件が1社だけの応募である。1社だけでは競争により高品質で安価なものが入手できるという競争入札の原則が機能しなくなり、結果として高いものを購入する可能性がある。
 その様な背景もあって平成25年3月に発表された「小金井市新庁舎建設基本計画」ではPFI方式より従来方式が優れていると結論を出している事は、7月19日に行われた市庁舎整備特別委員会で我が会派の鶴岡議員が明らかにしたところである。
 
 因みに小金井市が事業法式として従来方式を選んだ理由を、基本計画書の38頁より抜粋する。 
 新庁舎建設の事業手法の選択については市で検討し、以下のような理由から、PFI方式よりも従来方式に優位性があると判断し、従来方式とします。
@  VFM試算の結果、PFI方式で実施する場合は事業期間中の財政負担額について、約2%の削減を期待することができるといえるが、従来方式でも設計VEなどの導入により一定の費用削減が期待できることから、必ずしもPFI方式の優位性が判断できない 。
A  後年度の年間財政負担額からみると、従来方式に優位性がみられる。
B  新庁舎単独の維持管理・運営業務では、民間の創意工夫を発揮できる業務の範囲が狭いため、民間事業者の運営収入確保はさほど見込なことから、PFI方式での費用削減効果や民間事業者積極的な参入などを得られる可能性が低い。
C  PFI方式は事業発注後の市民参加は難しいと考えられるため、市民参加の視点では従来方式に優位性がみられる。
 この理由の@で、PFIでは2%程度しか削減効果がないと判断し、削減効果には余り期待していない結論に成っている所が価格が高いという危惧に関連する記述である。従って削減効果を発揮するためには、複数の会社が応募し、適切な競争が為されることが前提となる。逆に2社以内の募集しかなかった場合は、PFIで続けるべきか判断が必要となろう。
 なお、基本計画の策定に当たっても、その点は気にしており、大手ゼネコンを含む15社に意向調査したところ、興味を示している事を確認しており、さらには公開されている委員会に多くの営業職と思われる人達が集まっているので、本市で2社以内に成ることは無いと信じたいところである。
 
 では、何故応募する業者数が少ない事が多いのかというと、将来的に事業が継続できるかという資金面の確認書類の他に、「民間の創意工夫」の名目で、事前に設計書類を作成するなど、段階で非常に多くの事務負担が業者の選定前に必要であり、受注業者になれなかった者は、それに要した費用(数千万円とも言われる)が無駄になる可能性が高いためである。
 その対策として、本年の1月に視察に行った東京都立川市では第1次審査の上位3案には設計コンペに必要な費用を負担したそうだ。採用されなかった2案に支払った金額は市にとって無駄になるかも知れないが、質の高い案を確保するための必要経費と割り切っていた。もちろん無償のサービス作業でなくなった業者は質の高い設計で答えていたことであろう。
 
 優秀な案が多く集まり、従来方式より安いコストの提示が揃ったとしても、次にまた頭の痛い問題が残る。それは、優秀案の決定方法が市民の大多数に同意していただけるか、という事である。
 本市が平成18年に公募した第一小学校と給食センターの案件では最安価では無い会社が最優秀とされた。価格を上回る提案があったという事であるが、例えば環境対策としてエコカーを購入するといった提案に着けられた採点が価格点としては数千万円と同等というのでは審査請求に耐えられるか心許ない話である。
 全ての提案を金額に換算する、というのが最も妥当な方法だと私は思うのだがPFIには「馴染まない」ようだ。そうであれば採点基準の充分な審議とそれに対する意見公募、更に採点の実名での事後公表が公平性の担保として必要だと思う。
 
 最後に、PFI契約の途中変更の方法も課題である。小金井市で市民参加が難しいことを指摘しているが、木更津の給食センターに米飯の自炊設備を着けるように要望し、それが出来なかった事を通じて、履行期間内に一度契約した内容を変更することが如何に難しいか、私も理解している。市役所では組織変更等でレイアウトの変更が生じると思うし、食堂や売店等の営業部門の変更要望をどの様に行うかは事前に調整しておく事と思う。
 
 以上から次の検討が必要と考え、今回の文章を終える。
 
@ 応募してきた会社が2社以下であった場合の契約不成立規定を設ける
A 応募の品質を高めるため、2段階診査とし、2次審査対象社には提案料を支払う
B 採点基準を決める過程を透明化し、市民の意見を反映できる制度を作る
C 業者決定後には、選考過程と採点内容を公表し、その際に発言者等を匿名にしない
D 契約後の変更が容易になるように、様々な想定を行い、契約に規定を設ける