市街地外での開発を考える
2014/04/27記
 日本国の人口が減少に向かう中で木更津市は現在も順調に人口増加を続け、今月1日現在の住民基本台帳人口が132,246人であることを市のHPは伝えている。木更津市の人口が13万人を越えたのが2011年11月1日の集計(130,050人)で有ったので、それから27ヶ月を掛けて2,196人を増やしたことになる。年間に換算すると976人である。増加率は0.75%なので、大した数では無いように思えるが、人口千人以下の自治体がまだ27個も有ることを考えると、毎年高知県馬路村や北海道音威子府村程度の人口が増えている木更津は活力が有ると考えても良いだろう。
 
 さて、その人口が増加する現場であるが、前にも書いたように港南台や羽鳥野を擁する波岡地区と、請西東・南を抱える木更津地区で顕著な増加を見せている他は、ほたる野の有る清川が善戦している程度で、残る5地区(岩根・鎌足・金田・中郷・富来田)では人口減少が続いている。もっとも開発が著しい、金田に限っては減少に歯止めがかかり増加傾向が見えたと噂を聞いている。
 人口の偏在は真舟小学校の開校や八幡台小学校での仮設校舎の増築を招く一方で、中郷では小中学校のあり方や存続について議論が必要となるなど、様々な問題を生じさせている。
 この原因は「都市の健全な発展と秩序ある整備を図」る目的で施行された都市計画法において、市街地では順調に新たな住宅建築が進む一方で、市街化調整区域では宅地等の開発が抑制され宅地の供給が進まない中、核家族化に伴う世帯あたりの人口減少により、郊外部には高齢者だけ残されるというような状況が生じているからである。
 
 木更津市としても、その対策として全国に先駆け地区計画制度を利用して開発を進められるようガイドラインを制定したが、その煩雑さのためか未だに利用実績は積まれていない。
 その一方で都市計画法第34条11号では簡素な手続きで開発することが可能なこともあり、昨年度は請西東に隣接する矢那の一部において62区画にもなる規模の大きい団地の造成が許可されるなど、この制度を利用した開発行為は続いている。
 平成17年度以降は羽鳥野を中心に安価で良好な住宅地が市街化区域より供給され続けたこともあり、この制度の利用は減っているものと思っていたので、現状把握として昨年度末まで調査した結果が下図である。
 最近は既に売り切れが近づいているのか、区画整理地区からの宅地供給が減っており、そのような場所では地価が上昇傾向にあるためか、木更津駅近傍の吾妻や長須賀を中心に地価の安い農地の需要が高まり、この制度の利用が進んでいるようだ。現に農業委員会に上程される農地転用の案件も途絶えることがない。
 矢那の団地造成による特殊要素を別にすれば、毎年50件程度で推移している状況にあるので、全てに住宅が建ち、3人家族が居住すると仮定すると、年間に150人程度の人口増に寄与していると考えられる。その全てが市街から移住してきた人であるなら、先に述べた木更津市全体の年間人口増加量の約15%を占めていると推計できる値である。
 
 さて、毎年確実に岩根地区での開発が続いている事もあるので、この12年間の合算ではどの程度の値になるだろうかと考え、円グラフにまとめてみた物が下図である。
 木更津市の全件数の過半数が岩根地区で許可され、その総数の357件に全て3人世帯が住んでくれたら1,071人は増加しているはずである。それなのに、その間に地区の人口は19,076人から17,152人まで1,924人も減少している。この開発がなければ約3千人も減少していたところにブレーキを掛けていると考えると、地域の人口減少対策に頭を痛める事になりそうである。
 
 因みにこの第34条11号の条文の抜粋は『市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(略)が連たんしている地域のうち(略)条例で指定する土地の区域内において行う開発行為(略)』と有り、既存市街地に近い岩根や木更津における市街化調整区域の多くはこの対象地域になるが、中郷や富来田ではこの規定を満たすことが出来ない場所が多い。
 容易に開発を進められることより乱開発に繋がりやすく、埼玉県川越市や大阪府堺市などではこの制度で開発できる区域を廃止しているが、本市においてはその議論はまだ進んでいない。
 私個人としても、地区計画制度に一本化する方が行政の指導が行き届くと考える一方で、大規模な区画整理が無い地域には実質的に唯一の人口増加施策であり、活性化に繋がっている事も認めねば成らないことも事実であり、悩ましく考えている。
 都市と郊外の関係や、市街地外での開発がどうあるべきか考えながら、データを取りまとめてみたので