防衛省の情報に思う
2018/04/10記
 先月末に自衛隊のオスプレイを木更津基地に暫定配備するという報道が複数のメディアで流され、防衛省は小野寺大臣が現時点で決まっている事はないと否定をしたものの、そろそろ何らかのアクションが有るかなと思いながら新年度を迎えた。
 今月になって唐突に米空軍のオスプレイ[CV-22]5機が横浜港に陸揚げされ、速やかに横田基地に配備された。現在、木更津駐屯地の格納庫で定期機体整備を行う対象は現在沖縄の普天間基地に展開する米海兵隊のオスプレイ[NV-22}だけなので、既に機体が日本国内に運び込まれた以上、整備対象に追加するような変更も行われるのではないかと考えていたところ、木更津市役所より下記の情報提供がもたらされた。
 
米海兵隊MV-22オスプレイの定期機体整備状況について
 
 標記の件について、防衛省北関東防衛局から下記のとおり情報提供がありましたので、お知らせします。
 
 
1 現状について
 木更津駐屯地におけるMV-22 オスプレイの定期機体整備については、現在、所要の修理や機体の組立てが実施されており、本年4月中旬以降、順次塗装の塗り直し等が行われる予定。なお、塗装の塗り直しについては、塗料等の飛沫防止と廃液処理のために格納庫内に設置された区画において行われ、塗装による廃液は確実に回収される。
 
2 試験飛行の時期について
 試験飛行は塗装の塗り直し等を行った上で、所要の点検等を経て行われる予定であるが、確定的な時期については、情報が得られ次第提供する。
 
3 2機目の整備計画について
 2機目の整備計画等については、現時点で米軍から確定的な情報は得られていない。
 
 これは、昨年の12月27日に北関東防衛局から、現在整備中のオスプレイの試験飛行については「今年度中は行われない見込み」として発表があったものを、先月中に年度末を終えてしまう中で先の見通しを速やかに示して欲しいと要望していた件に対する回答が新年度も9日が過ぎて送られてきたもので、内容についてもそろそろ塗装工程に入るという情報以外は何も具体的な話になっていないので、検討や分析に値するような内容ではなかった。
 
 米軍が相手の話では確実な情報が入らず、防衛省としても歯がゆい思いをしている事は容易に想像されるが、受け入れている地域にはもっと情報を出して貰うよう、積極的な働きかけを行って貰いたいものである。
 さらに、将来的には佐賀空港への配備を考えている自衛隊のオスプレイの暫定配備については米軍とは違って日本国政府が対応する話なので、新聞による憶測の話ではなく、具体的な議論を開始したいものである。
 
 具体的には、まず木更津が選定された事を市民にも解るような説明が欲しいと思う。何故なら自衛隊の購入するオスプレイは離島防衛を目的とする「水陸機動団」の運搬を前提としており、その基地は長崎県佐世保市の相浦駐屯地である。佐賀空港への配備が難しくなっているとしても、距離的に近い中国・四国・九州(沖縄含まず)には下表のように36箇所も空港が存在している。
名称 所在地 備考
1 鳥取空港 鳥取県鳥取市
2 米子空港 鳥取県米子市 航空自衛隊も使用
3 出雲空港 島根県出雲市
4 隠岐空港 島根県隠岐の島町 離島
5 石見空港 島根県益田市
6 岡山空港 岡山県岡山市
7 岡南飛行場 岡山県岡山市 定期航路無
8 広島空港 広島県三原市
9 岩国空港 山口県岩国市 在日米軍も使用
10 山口宇部空港 山口県宇部市
11 徳島空港 徳島県松茂町 海上自衛隊も使用
12 高松空港 香川県高松市
13 松山空港 愛媛県松山市
14 高知空港 高知県南国市
15 北九州空港 福岡県北九州市
16 福岡空港 福岡県福岡市
17 佐賀空港 佐賀県佐賀市
18 長崎空港 長崎県大村市
19 対馬空港 長崎県対馬市 離島
20 壱岐空港 長崎県壱岐市 離島
21 小値賀空港 長崎県小値賀町 離島(封鎖中)
22 上五島空港 長崎県新上五島町 離島(封鎖中)
23 福江空港 長崎県五島市 離島
24 熊本空港 熊本県益城町
25 天草飛行場 熊本県天草市
26 大分空港 大分県国東市
27 大分県央飛行場 大分県豊後大野市 定期航路無
28 宮崎空港 宮崎県宮崎市
29 鹿児島空港 鹿児島霧島市
30 種子島空港 鹿児島中種子町 離島
31 屋久島空港 鹿児島屋久島町 離島
32 奄美空港 鹿児島奄美市 離島
33 喜界空港 鹿児島喜界町 離島
34 徳之島空港 鹿児島天城町 離島
35 沖永良部空港 鹿児島和泊町 離島
36 与論空港 鹿児島与論町 離島
 米軍の再編に協力している岩国空港への配置は難しいと思うが、既に自衛隊の存在する米子空港や徳島空港も使用可能だと考えるのである。
 また、6年前に基地対策特別委員会で行政視察をした宮崎県えびの市のように、人口減少の対策として自衛隊の存続を考えたい自治体があるのだから、誘致を考える自治体があっても不自然ではないし、自衛隊の配置は地方自治体の活性化に繋がるような展開がされるべきだとも思う。
 そこで、上記の36箇所の自治体の将来人口を「国立社会保障・人口問題研究所」のHPで調べてみると、2015年の人口に比べて30年後に4割以上人口減少となることが予想されている空港(自治体)が10箇所も有ることが判った。
名称 所在地 2015年 2045年 変化率
1 小値賀空港 長崎県小値賀町 2,560 942 36.8%
2 上五島空港 長崎県新上五島町 19,718 7,685 39.0%
3 対馬空港 長崎県対馬市 31,457 13,731 43.7%
4 大分空港 大分県国東市 28,647 13,848 48.3%
5 福江空港 長崎県五島市 37,327 18,159 48.6%
6 壱岐空港 長崎県壱岐市 27,103 14,622 53.9%
7 天草飛行場 熊本県天草市 82,739 45,913 55.5%
8 種子島空港 鹿児島中種子町 8,135 4,610 56.7%
9 大分県央飛行場 大分県豊後大野市 36,584 21,170 57.9%
10 奄美空港 鹿児島奄美市 43,156 25,353 58.7%
 そのうち半数が長崎県に所属する離島の自治体である。人口減少につけ込むような話は失礼だと思うが、離島の自治体の活力を維持するために自衛隊を配置することが悪いとは思わないし、ましてオスプレイの目的である佐世保市には木更津と比べて格段と近いのである。それが検討されない理由を示して欲しいのだ。
 
 また「暫定配備」と言いながら、その規模や期間、及び部隊の活動内容など、状況を想像できる情報が何もなく、これについては新聞でも報道されていない。前にも書いたように、単に格納庫に保管して時々エンジンを回す程度の保管を続けるなら日常生活に大きな影響はないが、パイロットの養成を行うための訓練を繰り返されるようだと、その影響は大きくなるし、また熟練するまでに生じると思われる事故も心配と成るのである。
 パイロットが来るとなると、どの程度の人員増加になるのかも気になる話であるし、自衛隊が購入しようとしている全ての機体を木更津に置くとすると現在の格納庫だけでは不足すると思われるので、どのような計画に基づき、どの程度の工事が何時行われるのかといった事も気になる。それらに伴う経済や税収の影響など、多くの要素を早めに示していただき、具体的な議論を議会で始めたいと、基地対策特別委員会の委員長として考える日々である。