地域差別を感じる
2020/04/29記
 緊急事態宣言が出され、マスコミが首都圏から地方に遊びに出かけないよう求める多くの声や、自粛要請に従わない企業の事などを伝える中、市民からも県外ナンバーの車が集まる有名店や運動施設に対し心配や苦情が寄せられ対策を求められている。
 その様な施設は営業自粛の対象ではないため、感染対策を講じて下さいとお願いする以上の法的根拠もなく、行政部局は市民の意見に対し頭を止ませている。万が一近所にクラスターが発生したとしても隣の家程度に離間が有れば感染するリスクは充分に低いのであるが、生活の中に恐怖が蔓延しているようだ。
 
 公表されている値だけでも、世界で感染者数が3百万人を越え、死者数も20万人を越えた。国内でも新たな感謝数の値が下がりつつあるというものの、昨日21時現在で感染者数は前日より279人増加して13,890人、死者数も19人増加した413人となってしまった。千葉県内の感染者数も8人増加し827人に達している。著名な女優の死亡を伝えるニュースも有り、恐怖を感じることは当然で、むしろ無自覚で遊戯施設に集まる輩より良いと思う。
 恐怖が感染防止対策を高めるモチベーションに繋がるだけなら良いのだが、悪戯にストレスを増やして外部に対して攻撃的な傾向を見せることに心配を感じている。
 
 学校が休みで帰省した大学生とその家族が阻害されている件や医療従事者の子どもが登園拒否されるようなニュースも聞こえてくる。例えば、富津市も海岸の駐車場を閉鎖するなど都内や神奈川県からの観光客が集まらないように対策を講じており、その事は対策として妥当であるが、県外からの訪問者に嫌がらせをする様な事態になるのではと危惧するのである。
 
 木更津市民が都民に向かって向ける眼差しが、実は木更津市民に向けられる場合も生じつつあるのだ。
 
 房総半島の状況について4月14日の状況4月21日の状況を整理させていただいたが、今日はそれから更に一週間後である昨日の状況を整理したものが下表である。 
市名 感染者数 町村名 感染者数
1 館山市 0→0 1 九十九里町 0→0
2 木更津市 9→11 +2 2 芝山町 1→1
3 茂原市 3→3 3 横芝光町 5→5
4 東金市 1→1 4 一宮町 3→3
5 勝浦市 0→1 +1 5 睦沢町 0→0
6 市原市 7→7 6 長生村 0→0
7 鴨川市 0→0 7 白子町 0→0
8 君津市 0→1 +1 8 長柄町 0→0
9 富津市 0→0 9 長南町 0→0
10 袖ケ浦市 5→7 +2 10 大多喜町 0→0
11 南房総市 1→1 11 御宿町 0→0
12 山武市 3→3 12 鋸南町 0→0
13 いすみ市 1→1
14 大網白里市 0→0
市計 30→36 +6 町村計 9→9
房総半島合計 39→45 +6
 14日から21日にかけて19人も増加したことに対し、この一週間では6人の増加と数値は鈍化した。しかし、増加している自治体のうち木更津市と袖ケ浦市が目立つので、他市では木更津市民が来ないような対策をして欲しいという意見が出る事態に成っていると聞くのである。
 
 今回のコロナウイルスは、先ず中国からの観光客に対して厳しい視線が向けられ入国制限という形になり、その後は韓国や欧米での感染拡大で対象国も広がり、現在では87国との往来に制限が掛けられている。当初は武漢市だけに留まらず中国人への排除的行為も見られたが、日本も含め世界中が感染する事態になると自分の住む地域以外の人を差別し、排除する気持ちに成っているように感じている。
 帰国者を一時収容して経過観察を行った勝浦市のホテル三日月で、砂浜に応援の文字を書き太鼓演奏で鼓舞したような県民の優しさが遠い昔に思えてしまうが、それから3ヶ月も経っていないという事に世界の変化を怖く感じている。
 
 日本赤十字も未知のウイルスにより「ウイルス発生」→「不安や恐れ」→「偏見・差別の表出」と社会の分断に繋がり、差別を恐れる余り感染を秘匿するようになり、感染症の封じ込めの阻害に繋がると懸念しているが、木更津市内の感染拡大に伴い、この地域でもそれが現実化している様に感じているのである。
 
 平時で有れば、首都圏からの訪問客が観光産業を支え、首都圏の職場が雇用を支え、首都圏の消費が第一産業を支えるように、房総半島は首都圏の一部として存在していた。同様に房総半島内では行政境を越えて通勤通学が行われ、行政機能も補完しあい広域事業が進められ、供に歩んできた地域である。
 今回の恐怖が国際世界に壁を築き、国内でも分断を招き、地域で差別を育んでしまっている。多くの理性はそれを乗り越えて行く事を信じているが、少なくとも隣人に恐怖の目を向けることが無いように、正確な知識を広げて行かねばと思う昨今である。