資本主義と温暖化
2021/04/22記
 今日は地球環境について考える"Earth Day"である。最近は感染症のことばかり考えていたので私も最近読んだ本の影響を受けながら地球環境を考えてみることにした。
 
 "Earth Day"は1969年にユネスコによって提起された記念日であり私は5歳であったが、その頃には地球温暖化や異常気象という概念は一部の人達しか感じていなかったものだろうと思う。
 当時の日本はオイルショック前の高度経済成長を謳歌しており、1968年にGDPが西ドイツを抜いて世界第2位になった。一方、現在は日本を抜いた中国も当時は1966年に始まった文化大革命の混乱の中に中にあり、人口が遙かに少ない台湾(中華民国)よりGDPが少なかったように記憶している。
 第二次大戦後に独立を果たした多くのアジアの発展途上国は統治機構の未熟さもあり、東西両陣営による代理戦争のような内戦が続き社会資本の整備すらままならない状況であって、さらにアフリカ諸国が独立を果たすのは1970年代なのでまだプランテーションで搾取される植民地の状況におかれていた。
 つまり、一部の先進国だけが工業化を進めている状況なので地球環境に与える影響は目に付かず、化石燃料の使用による影響は地域的な公害の問題として認識され国内では大気汚染等の公害訴訟が頻発していた頃であり、汚染物質の除去という考えはあっても、二酸化炭素の抑制という意識はなかっただろう。
 
 1989年のベルリンの壁崩壊に象徴される東西冷戦の終結は発展途上国に平和の恩恵を与え世界中で経済が発展し始める。先進国の資本により工場移転が行われることで工業化と都市化が進み、郊外では原生林を焼き払うことで大規模農業化も進展する。
 人類の経済活動が地球環境に深刻な影響を与える事が明らかになり、1997年には地球温暖化を防止すべく京都議定書の締結が成されるに至ったが、経済活動の方向性が変わることは少なく近年では2030年には戻れない臨海点を超えてしまい人類の制御が効かなくという説も出ている。
 2003年生まれのスウェーデン人のグレタ・トゥーンベリさんなどの若い世代が持続可能な地球を次の世代に残すように声を挙げ、世界はその声に耳を傾ける状況ではあるが具体的な対処方法は2050年までにゼロカーボンを目指すというスローガンだけで具体的な処方箋は少ない。
 それは日本国内でゼロカーボンシティ宣言を行った自治体が一昨年の4から370に増加する中でも、再生可能エネルギー導入目標を持っている割合は30%に留まっている事にも現れている。そのため「再エネ100%北九州モデル」を掲げた北九州市のような例が貴重に思えてくるのである。なお目標がない70%側に立つ木更津市では省エネ機器への変換程度しか案は出されていない。
 
 そもそも「資本主義」という制度のままでは地球環境は守れないと提言しているのが「人新世の資本論」の著者である齋藤幸平である。「兜n困大国アメリカ」の著者である堤未果は「金だけ今だけ自分だけ」というフレーズで暴走するアメリカ資本主義の問題点を提示しているが、最大利潤を求める資本主義では人権や環境に対するコストを可能な限り低くするように意識が向かい次世代のために地球環境を残そうとしないという説明は納得できる。
 その一方で投資家は将来までの利益を確実なものにするため環境リスク等の多い行為を行う企業には出資しなくなっているという世界の変化を示しているのが「データでわかる2030年地球のすがた」の著者である夫馬賢治である。齋藤幸平はSDGs等は対策を行っているような錯覚を講じる効果はあるが根本的な変化が必要だと述べているが、夫馬賢治は現在進んでいる意識と技術革新に可能性を感じている。私も現制度を維持したままで未来は創れると信じる側に立つ。
 そもそも世界4大文明のといわれるエジプト文明及びメソポタミア文明は資源として森林伐採をすすめ周辺が砂漠化することによって滅んだと言われている。資本主義が発達する遙か昔の話である。自然に敬意を払い資源管理を遵守した江戸時代の日本は化石燃料に頼らずに文化を発展させている。資本主義という経済学より哲学や宗教観の問題なのかもしれない。
 
 確かに東西冷戦が終了した後の資本主義は共産革命の危機が遠のいた結果、グローバル化という名目で格差を拡大し、アメリカ国内では追い込まれた中間層がトランプのような極端な主張を指示するまでに至り、世界の安定を乱している。
 韓国では「行きすぎた資本主義」の著者である金敬哲が競争社会の現実を提示していたが、特殊合計出生率が3年連続で1を切り、2020年で0.84まで下がるほど子育てが困難な状況に成っていると考えると、日本で進むグローバル化(というアメリカ化)に疑いの眼差しを向けることは重要であろう。
 特に略奪型の資本主義は国際的なルールで規制を掛け、近江商人のように「売り手によし、買い手によし、世間によし」という哲学の元で持続可能な資本主義を展開し、温暖化を防止する方向を目指すべきである。
 
 2ヶ月前にも記載したが木更津市で取組むことは多くある。日本国としては炭素を固定する産業、つまり農林業の育成を進めるべきだろう。特に食糧自給率が低くても耕作放棄された農地は増えつづけ農家数は減少の一方であり、世界有数の森林率を誇りながらも林業家は地域から居なくなり、山は有害鳥獣が闊歩する世界になっている現状を改めなければならないだろう。
 更に世界の英知を集めて地球緑化を進めるべきだ。特にアフガニスタンで中村医師が灌漑設備の建設と農業振興を進めたように森林伐採を伴わない食料品の生産拡大は炭素固定と社会の安定の双方に寄与し、平和な世界建設に近づける事が出来るだろう。
 暖かな気候、濃い二酸化炭素、豊富な水は植物の生長を促進するので、この温暖化を利用すれば地球緑化は進むはずである。一度に強く降る雨を溜め適切に配分する治水技術だけに留まらず、超高速コンピューターを活用して必要な場所に雨を降らすように風向きや低気圧の発生を促す土地利用計画など技術の開発で気候も変えていく事だって可能だと信じている。
 
 今夜からバイデン大統領が主催し、日中露や欧州諸国など40の国と機関の首脳が出席する気候変動サミットが開始される。先週に5歳の誕生日を迎えた私の娘が育つ世界が人々に優しいもので有り続けることを願いながら"Earth Day"の記載とする。