接種と感染が増加
2021/06/07記
 先月15日からファイザー製のワクチンを使って始まった木更津市の集団接種は、初回から3週間が経過した今月5日より接種済みの方を対象に2回目の接種も始められた。
 初回も今までと同様に日々120人へ対応するため、会場で接種される回数は今までの倍の240回に増加する。当然、受ける人数も倍になるので、さぞ混雑していることかと思って少しのぞき込んだが順調に流れていたようである。
 木更津市での接種状況を5月31日の状況と比較したものが下表で、65歳以上の高齢者で最初の接種が終わったものが23.71%に達している。2回目の接種が3週間後に行われることを考えると今月中に高齢者の約1/4が2回の接種を終えることになるが、対象者の全体に対しては10%に達するかどうかである。
 集団接種は昨日で11日目を迎え、初回のみの接種が1,085人、2回目接種が240人となっている。接種回数の合計は1,565回に達したが、医療機関での個別接種は9,133回と成るため、現在の接種回数全体の85.4%に達している。
 
No 区分 対象数 6/6 接種率 5/31 増加数
1 医療従事者 - 7,809 - 7,118 691
2 65歳以上高齢者 39,816 9,441 23.71% 5,259 4,182
3 高齢者施設従事者 2,041 1,257 61.59% 877 380
4 基礎疾患を有する者 6,666 0 0.00% 0 0
5 60歳以上65歳未満 5,375 0 0.00% 0 0
6 上記以外16歳以上 64,846 0 0.00% 0 0
No.2〜No.6の合計  118,744 10,698 9.01% 6,136 4,562
1' 医療従事者 - 2,999 - 2,631 368
2' 65歳以上高齢者 39,816 529 1.33% 179 350
3' 高齢者施設従事者 2,041 439 21.51% 350 89
No.2'〜No.6'の合計  118,744 968 0.82% 529 439
 
 6日間の増加数が4,562回なので、一日当たりで約760回を接種したことになり、これは先月末までの約600回よりペースが上がっている。市内で職域接種がどの程度行われるのか解らないが、あらゆる手段を動員して一日平均1千回まで増えれば年内に接種が終わる計算である。
 実際には全体の70%程度が接種完了すれば集団免疫を獲得するので大丈夫だと聞くし、イスラエルやイギリスでは人口の40%に接種を終えた頃に感染が減少に向かい始めたと聞く。オリンピックには間に合いそうもないが秋頃には落ち着きを取り戻せるのではないかと期待しているし、飲食店を始めとする経営が厳しくなっている業者ももう暫く耐えて欲しいと願っている。
 
 なお、千葉県は6月14日よりJR蘇我駅に近い蘇我コミュニティセンターにおいて毎日600人に対し集団接種を開始する。8日に予約開始された今月27日までの前期分9,240人分の予約は全て埋まってしまったと聞くが、国が自衛隊を動員して東京駅近くの大手町合同庁舎3号館で行う大規模接種は東京都と千葉・埼玉・神奈川の3県の高齢者を対象としており14日から20日までの予約状況は11日の10時現在で70,000人の枠に対し45,475人の枠が空いている状況である。東京まで行く覚悟があるなら確実に接種が可能である。
 また13日と20日の日曜日には本来休診である木更津市万石にある重城病院が一日1,000人に対し大規模接種を実施する。木更津市の集団接種の4倍以上、県のセンターの2倍近い人数へ単独の病院が接種を行うことに感動すら覚える。今後の接種速度は確実に加速しそうである。
 

 一方で危惧されるのは国が発表したワクチン接種後に死亡したものが85人という話の反応である。これは2月17日から5月21日までに接種した約600万人の結果で、ワクチンとの因果関係が明かでない死者も含まれている。一見すると85人は無視できないような値であるように思えるが、確率としては0.0014%であり、感染により死亡する比率に比べれば桁が幾つも違うほど少ない。
 それでも感染で死ぬことがないと楽観している若い世代では接種後に万が一のことがあることを恐れ、高い確率で現れる高熱や痛みといった副反応を嫌がり、接種を避ける傾向が世界的に見られると云う事である。河野担当大臣もワクチンの確保、打ち手の確保に続き、接種が頭打ちになることを「第3の山」と呼んで次に乗る越えるべき課題であると危惧していると報道された。
 
 今月3日に千葉大学がワクチン接種者1,774人中1,773人に充分な抗体が出来ている事を発表したように、今回のワクチンの有効性はインフルエンザワクチンとは比較にならないような優秀さを示しており、明らかにゲームチェンジャーとして期待できる。
 若者も一時の副反応を乗り越えて感染しない身体に変わることで、自らの身体の中で変異株を培養することが無いようにしていただきたいとPRするとともに、副反応の正確な情報を伝えることやワクチンを打つと数年後に死亡するといった科学的根拠のないデマを否定して、恐怖を拭う事が必要だろう。
 
 接種数が増加しているとは云え、現在では高齢者だけが接種している状況なので、後ほど詳細を示すが、それ以外の世代での新規感染者が再度増加傾向になってきた。
 隣接する君津市でクラスターが発生した影響もあってか、今月の3日に7人、4日に6人、5日に9人と、木更津市内では僅か3日間で22人の新規感染者が確認された。この3日間を7/3倍して1週間の人数に換算すると51.3人となり、人口が13万5千人なので10/13.5倍することで人口10万人当たり38.0人という値を得る。これはステージWに相当する勢いであり、急激な増加に危機感を覚える。ただし5日から1週間前である5月30日までの合計は28人であるので同様に計算すると20.7人となり、ステージV相当となる。
 過去に遡って木更津市における人口10万人当たり一週間新規感染者の推移を計算してみたところ、下図のようになった。
 
 黄色で着色されている15人から25人の範囲がステージVであり、25人以上がステージWとなる。
 大学や高齢者施設で大規模なクラスターが発生した12月24日から2月1日までの40日間では6日間だけステージVとなったものの多くがステージWとなる危機的な状況になっていたが、最近は水色のステージU相当を前後していた。6月4日からステージVに突入しており、増加傾向を見せていることが解る。再び沈静化するのか、このまま増加傾向が続くのか、今後の推移に注視したい。
 
 房総半島では先月31日からの6日間で118人の新規感染者が確認されており、一日当たりでは19.35人、人口10万人当たり一週間感染者数に換算すると12.31人でありステージUの状況が続いているものの前回に比べて明確に増加している。
 
市名 感染者数 町村名 感染者数
1 館山市 68→68 1 九十九里町 39→39
2 木更津市 543→567 +24 2 芝山町 38→39 +1
3 茂原市 240→242 +2 3 横芝光町 40→42 +2
4 東金市 187→189 +2 4 一宮町 23→24 +1
5 勝浦市 47→48 +1 5 睦沢町 16→16
6 市原市 1095→1133 +38 6 長生村 34→34
7 鴨川市 68→69 +1 7 白子町 20→21 +1
8 君津市 190→210 +20 8 長柄町 8→10 +2
9 富津市 87→99 +12 9 長南町 42→42
10 袖ケ浦市 213→222 +9 10 大多喜町 11→11
11 南房総市 72→72 11 御宿町 15→15
12 山武市 175→176 +1 12 鋸南町 29→29
13 いすみ市 84→85 +1
14 大網白里市 135→135
市計 3204→3315 +111 町村計 315→322 +7
房総半島合計 3519→3637 +118
 
 かずさ四市の新規感染者数の合計は65人であり房総半島全体の55.1%を占めていた。市原市も加えると103人で87.3%となり内房での感染が顕著と言うことである。
 房総全体の累計感染者グラフの勾配は若干の上昇を示しているが全体が3千6百人を越える規模の中では微妙な変化である。
 
 
 木更津市のサイズにすると今回グラフが上向きに転じたことが解る。最近も3月中旬に瞬間的な上昇を見せたことが有るが、この時と同様に今週以降は減少傾向を示していただくことを願っている。
 
 
 このグラフを世代別で塗り分けると次のようになる。
 
 世代別に注目して感染者の増加傾向を整理してみると、大きく3つのカテゴリーに別れることが明らかになった。
 
 まず、クラスターの発生で一時的に感染者数が増加することがあるものの、基本的には感染を避けている世代である。具体的には10歳未満の遊び歩かない世代と70歳以上の高齢世代である。
 
 特に高齢者世代では特別養護老人ホームのクラスター発生の時に顕著な増加を見せているが、それ以外では安定した傾向を見せており、年代別の感染者数も現在の所35人以下である。先月1日から昨日までの累計感染者数60人のうち、10歳未満が3人確認され、高齢者では70代が1人確認されただけであるように、基本的には影響が少ないが若年では保育園、高齢では施設入居者が多いため、そこで発生したクラスターによって数字が増加する。
 
 次に社会的な活動が旺盛になる10代と社会に出て多くの人と交わることの多い働く世代の30代から60代のカテゴリーである。
 
 先のカテゴリーとは異なり、クラスターの発生に大きな影響を受けることが無く、安定して感染者が増加しているようにみられる。世代別の感染者数も60人前後に集まっているので、大きく見るとこのカテゴリーの中では世代間での特徴の差は余り無いように感じられる。先月から昨日までの60人のうち、10代が12人、30代から60代が27人で、このカテゴリーでの新規感染者数は39人であり、全体の65%を占めている。
 
 最後に他の世代を引き離すかのように増加を続ける20代のカテゴリーである。累計感染者数は一つの世代だけで全体の24.6%となる140人に達する、特異に多い状況である。
 
 大学でのクラスターが発生するまでは前のカテゴリーと同じ傾向を示していたのであるが、年末に感染者数が一気に増え、その後も全体を牽引するかのように増加を続けている。なお、先月から昨日までの60人のうちの17人、比率では28.3%をこの世代で占めている。今までの累計より比率が上がっている事は、若い世代へ感染するという変異株の影響が出てきているのかも知れない
 20代の若い世代は重症化しにくいようであるが、決して感染しにくい訳ではないと云う事がこのグラフから顕著に解るのである。
 自分の20代を考えると、家で大人しくして友人と合わない生活を送ることが難しいと解るが、せめて感染させないようになってから動き始めて欲しいと思うし、重症化のリスクが高い高齢者への接種が済んだ後は、早くこの世代へワクチン接種を行うことが感染者数を下げることに繋がるのではと考えさせられる。
 
 これから着実にワクチン接種は増加し、接種率が国民の半分近くまで増加した頃には社会を覆う閉塞感が幾分は少なくなるのであろう。しかし、それまでの間は社会が脆弱な状況のままであり、今月20日に緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置が解除されオリンピックが開催されると開放感も手伝って再度急激な拡大を招くことになるだろう。高齢者のワクチン接種が進むことで重症患者が減少し、医療機関が逼迫することがなければ、単なる風邪だと片づけられていく事に成るのだろうか。
 ワクチンという盾を増やしつつも新型種という矛が暴れ回る状況が暫く続く、矛盾に溢れた状況の中で今年も夏がやってきた。夕方になって、今日も新規感染者が7人となった事を知る。増加傾向が続いているようで心配になりながら今回の記録とする。
 
※6月11日に一部加筆