都知事選に呆れる
2024/06/24記
 20日に告示された東京都知事選挙では過去最多となる56人が立候補して掲示板が足りないとか掲示板ジャックをする選挙と関係ないポスターの掲示とかでメディアを楽しませているが法的には問題ないという解説に大きな違和感を感じている。
 
 木更津市では立候補の事前審査でポスターの提出が求められており、それまで一人の立候補者が使用できるポスターは1種類と思っていたがそうではないという事のようだ。掲示責任者と印刷所を記載することと所定の大きさに収まっていることを満たせば何を掲載しても良いとばかり裸の女性や風俗店の案内などが掲示され都の迷惑条例違反などで警告を受けることになっている。
 公職選挙法が変わらず都と同様の迷惑防止条例の法律版でも制定されなければ裸の女性が掲示板を飾っても撤去させる根拠が無くなる。国会が対処しないので有れば各自治体が条例を制定して対応するしかなくなり、本当に迷惑な話であると呆れている。
 
 現行のままであれば私が勘違いしていた様に、過去候補者は選挙に対して1種類のポスターしか認めないという制度にすれば今回の事態は回避できる。過去の選挙では遅れて届出を行うことで連続した掲示枠を確保してポスターを利用して長いメッセージを表現した政党もあったが掲示板の数字を横並びにしなければ簡単に解決できる問題で、実際に今回の都知事選挙では25番以降が縦に並び対処していると思って差し支えないかも知れない。
 しかし、そもそも選挙にこれだけ多くの掲示板が必要なのだろうかという思いは拭えない。公職選挙法では各投票毎に5〜10箇所の掲示板の設置が求められている。遙か前に書いたように選挙事務の合理化のためには投票区を減らすことも手段であるが、公職選挙法を改正して投票区に最低1箇所の掲示板を設けるだけの制度に変更して欲しい。人口が多く広い投票区では今までと同様の掲示板を設けるものの人口が少ない山間部や農村では枚数を減らしても基本的には車両を使って広域的に移動している状況を考えると情報にアクセスできる状況だと思うのである。
 
 候補者の乱立を防ぐため供託金を人口に応じて高くすべきだという意見も聞こえてくる。都知事選挙の場合は300万円の供託金であり、有効投票数の1割、前回の都知事選は投票者数約621万人であったから同様だと考えると約62万票を得ないと没収される。
 前回の選挙でも法定投票数に達した候補は3人だったので今回も50人以上は没収され、1億5千万円は都の収入となるが選挙に係る予算は約50億円の規模となるようだ。投開票場の借り上げや投票に係る地方自治体の職員の人件費が主なものであるが掲示板の設置や選挙公報などにも億を越える予算が費やされると推定されるので多くの税金が投入されるのである。
 思いつきで選挙に出ることを防ぐために供託金が必要だという主張には理解できるが、今回の場合は300万円の供託金を没収されても、それを上回るだけの効果が期待できるという事であり、掲示板を売ることで得る収入と話題性で充分にお釣りは出そうだ。
  上の写真は3年前の千葉県知事選挙で立候補者は8人であった。投票結果は前にも書いたように現熊谷知事が圧勝し関候補が何とか19.2%の得票率で供託金の還付を受けた以外、6人の候補は供託金を没収され、ポスターや選挙カーに対する公費助成も受けられない事態であった。予見されていた状況でも立候補が続くのは政見放送で目立つことでSNSの閲覧を増やしインターネット広告収入が増えるというメリットも有るためである。
 都議会や県議会議員の政見放送がないように知事選や国政選挙でも政見放送を無くすことが迷惑系候補を減らす早道だと思う。インターネット選挙が解禁されたので各候補の情報を知りたければHPを検索すればよく、都道府県の選挙管理員会は候補者のHPに辿り着けるようなネット掲示板を造るべきである。情報弱者のために選挙公報の新聞折り込みは続けるべきだと思うが、新聞を購読していない世帯も増えており、全員に情報を届ける努力を続けるとしてもリスクの多い手段は諦めるべきだと思うのである。
 
 供託金を没収される事より多いメリットを潰すことで目立つことを目的とするようなものが立候補することを防ぎ、真に地域を考えるものだけで選挙が出来る体制を作るべきである。その様な目的で考えると供託金を上げることには反対であるが、海外の事例のように一定の有権者の推薦が無いと立候補できないという制度は良いかも知れない。有権者の1/1万程度で有れば、木更津市長選挙では12人、千葉県知事選挙では約480人、今問題となっている東京都知事選挙では約980人の有権者を集められないと立候補が出来ないという制度は良いブレーキに成るであろう。有権者は複数の候補を推薦できないという制度を作ると、推薦人のマーケットが出来てしまいそうであるが、当然売買行為は公職選挙法の買収となるので禁止である。
 
 今回の選挙を受けて公職選挙法を改正する動きが出て来るであろう。提灯や看板の大きさを細かく規定する一方で今回のような笊の目が大きい。増築を続けた温泉旅館のように法体系が解りにくい公職選挙法で更に規制行為を増やすのではなく、制度設計をしっかりして欲しいと願うのは多くの関係者が思うことであろう。その意味では国会議員の活躍を期待するばかりである。
 
 追記:妻が北区で撮影してきた掲示板をアップする。N党以外も問題の有りそうな候補は多く、それ以上に空白が目立つ。またここでは縦に3枚であるが江東区豊洲では縦に4枚であった。統一されていないことも改めて理解できた。